統一戦線事業部(北・労働党)の素顔

韓国の対北政策は、まず統一戦線部の政体を見抜くことから
日付: 2009年03月01日 04時42分

張哲賢(国家安保戦略研究所)
[金正日南政策は、多な名装し、多角的に行われる南工作を統一線事業部が企画、調整]
今年に入り、北側が「対南全面対決」と「南北合意の破棄宣言」などを宣言して、北側の対南政策が話頭になっている中で、北韓の対南工作機構の核心機関と言える、「朝鮮労働党」の「統一戦線事業部(統戦部)」の役割や機能に改めて視線が集中している。
 
「統戦部」幹部出身の脱北者の張哲賢(国家安保戦略研究所先任研究員)は、「北韓の統一戦線事業部解剖」という題の研究報告書で、統戦部を、「権力の集中化を通じて、組織管理を単純化し、実用化する北韓特有の唯一独裁方式の産物」と評価した。
 
この報告書によると、外部に「統一戦線部」として知らされたこの機関の正式名称は、「統一戦線事業部」であり、1970年代の初め、金日成が「高麗連邦制」を打ち出しながら、テロ・攪乱・心理戦などを通じて対南工作を遂行した、既存の人民武力部作戦局傘下の敵工局の強硬主導権を、一部弱化させる必要性から新設された機関だ。
 
当時、金日成は、「体制を超えた民族中心の連邦制」という名分を前面に出し、南韓内の大衆革命を赤化統一へと誘導するための「高麗連邦制」を打ち出し、従来の「力の政策」から「戦術的宥和策」に対南政策を変えた。
 
統戦部の目的は、名称通り、金日成の「高麗連邦制」を中心に、北韓をはじめ南韓や海外などに広範囲な統一戦線体を形成することであり、南韓内の「民主化運動」を煽り、赤化空間として活用する一方、越北作家らを母体とする「101連絡所」と南韓式抑揚に訓練されたアナウンサーを動員した「26連絡所」を通じて、文化的侵透も敢行した。
 
統戦部は、90年代以後、北側が対南戦略を、「わが民族同士戦略」に偽装した「太陽政策逆利用戦略」へと切り替えた今も、相変らず「対南工作」の核心機関であり、南北対話や交流、軍事安保はもちろん、金正日の秘密資金の調達組織である「党38号室」の政策の監視まで担当している。
 
特に、98年からは金正日の「太陽政策逆利用戦略」の実現のため、人員規模を既存の1,500人から3,000人に拡大し、南北関係において民間人を前面に出す我々とは違って、北側は歴史学や文学など各分野の専門人力で構成されたこの統戦部を前面に出して対南工作を続けた。
 
そして、インターネットが広範囲に普及した南韓社会の現実に合わせて、IT専門人力らも編入させて、ハッキングなどインターネットを通じての対南サイバー心理戦も敢行した。
 
[統戦部は、国内外工作担当の六つの部署と40個課、3千人余りの門人力で構成]
報告書によると、統戦部の組織構造は、2007年を基準に林東玉(林春吉)第1部部長を始め、政策担当および交流担当、会談担当、縁故者担当、総連担当、組織担当副部長で構成された。
 
この中、政策担当副部長は、傘下に親北組織担当課を管理しており、会談担当副部長は、傘下に祖国平和統一書記局を、総連担当副部長は傘下に在日朝総連はもちろん、在中総連と最近開設作業が真っ最中の米州朝鮮人総連合会(米総連)を担当する米州課を管理している。
このような組織構造は、金正日の「太陽政策逆利用戦略」の後に変わったもので、その傘下の各部署は多様な人力を動員して対南工作を部署別に専門的に担当している。
 
別名が「お母さん連絡所」と呼ばれる会談担当部直属の「祖国平和統一書記局(祖平統)」は、統一外交の合法性を主張すると同時に、対南戦略を企画して実践するため会談と関連した研究と実行、人物抱き込み、情報収集などを専担している。
 
やはり、会談担当部直属の「南朝鮮問題研究所」は、韓国の政治と経済、社会文化、軍事に対する深い研究と情勢予測を専担しており、何と30年間、朝鮮日報だけを分析した研究員など専門人力を動員し、特に南韓経済の市場調査や株価分析、インフレ現況をチェックして、金正日に週1回ずつ報告している。
 
政策担当部直属の「101連絡所」は、韓国人、あるいは海外同胞の名義で、新聞や月刊雑誌、小説、歌詞、インターネット動画などを製作して、インターネットを通じての親北情緒や世論の流布を専担しており、別名「救国の声放送」と呼ばれる「26連絡所」は、電波を通じて南韓内の親北勢力に指令を伝える作業を専担している。
 
また、別名「江南出版社、平壌出版社、木蘭出版社」と呼ばれる「813連絡所」は、南韓内の親北組織が印刷したかのように偽装した伝単紙(ビラ)や雑誌、新聞などを製作し、「310連絡所」は、「813連絡所」から出す印刷物らを、開城と海州を通じて韓国に侵透させる役割をなしている。
 
そして、平壌駐在の「韓国民族民主戦線代表部」は、南韓内に広範囲な親北組織が存在するかのように偽装し、その前衛組織であると自任し、インターネット侵透などを通じて、南韓内スパイと親北勢力に、「行動の一体性」を指令する作業を専担している。
特に、この部署は、傘下の海外支社らを通じて、海外滞留中の韓国人を誘拐し、抱き込む役割を担っており、したがって、南韓の「汎民連」組織は、明らかに統戦部に調整される「韓民戦」所属の下部機関だ。
 
他にも、統戦部は「祖平統」の傘下に、「全教組」と「民主労総」、「汎民連」、「統一連帯」、「韓総連(2001年閉鎖)」などを担当する親北組織担当課を保有し、金日成や金正日と過去親密な関係だった「海外僑胞」らを抱き込む「縁故者1・2課」、宗教組織担当の「交流2課」などを運営している。
 
[開城工と金剛山光、離散家族面も全て「祖統一平和委員会」に偽装した統戦部の作品]
報告書によれば、金正日は去る1999年初め統戦部に南側との交戦を指示した。
統一戦線部は、当初、陸上戦の形態で交戦を準備したが、金大中政権の対北支援や南北経済協力に支障を来たすことを憂慮して、「第一次延坪海戦」を選択し、統戦部の報告を受けた金正日は、西海「北方限界線(NLL)」に対して、「対話と支援を維持しながらも、太陽政策を逆利用して体制葛藤を誘発させられる、今日の新しい分界線であり、かつ戦線だ」と絶賛した。
 
統戦部のNLL戦術は、南韓に対する北韓住民たちの幻想を抑制し、敵(南韓)の実体を認識させる効果を狙いながらも、対北支援窓口を維持する「新しい戦線の形成」を目的としている。
そして、南側の吸収統一を抑制し、政治圏から主張される相互主義を遮断する一方、「太陽政策」および「平和繁栄政策」が固着されるようにする一方、協商力の優位を確保するための強硬カードの手段として活用している。
 
統戦部は、他にも「離散家族の対面」を、南北和解のアピールを通じての親北情緒の注入と、対面中断(の脅し)による圧迫の手段として使っており、民間交流も、南韓内の固定スパイとの接線や対北支援のための空間として、そして保守勢力を孤立させる手段として悪用している。
 
また、今は中断した金剛山観光や開城工団も、各々対北支援の活性化や有事の際軍事的基地化および経済利益の創出の目的に活用している。
 
特に、開城工団に対して「金正日は、開城市や工団の人力に、最小限5万人の除隊軍人を配置せよと指示した」、「2003年7月の労働新聞に報道された金正日の開城防御隊の現地視察写真は、総参謀部の開城シナリオを確認するためのことだった」と明らかにした。
 
だが、統戦部は、このような目的を徹底して隠したまま、多様な名称をもって偽装している。
統戦部は、まず最近南北合意およびNLLの源泉無効化を宣言してわれわれにもよく知られた「祖国平和統一委員会(祖平統)」という名称を使っており、副委員長や参事職を名誉職に指定し、統戦部の幹部たちだけでなく、金正日体制の要職の人物らも入れている。
 
この「祖平統」が発表する声明や談話は、「共和国声明」と「外務相声明」の次の重さや効果を持ち、南北関係においては北側の立場を代弁する最高の発表として認められていると知られている。
 
統戦部はまた、「朝鮮アジア・太平洋平和委員会」という名称を前面に出し、北側に対する国際的支援と同調勢力の拡張の範囲の内で、南北関係と国際友好関係を強調している。
 
偽装名称は、傘下部署らも同様だ。
統戦部は、「26連絡所」を、ラジオ「救国の声放送」や、インターネット・ウェブサイトの「わが民族同士」に偽装しており、「101連絡所」を、「統一文学」、あるいは「統一新報」に、「813連絡所」を「江南出版社」や「木蘭出版社」に、「交流1課」は、「民族和解協議会」などの多様な名称に、「交流2課」は、「檀君民族統一協議会」に偽装している。
 
[新しい南北機構を創って、直線的かつ率的に南工作を展開する北側から(南北対話の)主導権を取り戻さねば]
報告書は、「まさに、この統戦部が主導する既存の南北関係からは、実利面においては『アジア・太平洋』や『民和協』などを、圧迫や中断においては、軍部を出す北側の意図に呑まれるしかない」とし、南北対話の主導権を握るため、政府次元の新しい南北機構を創設し、その傘下に安保問題を置かねばならないと主張した。
 
まず、「北側の交渉者は、野党や市民団体などの合意まで尊重せねばならない我々とは違い、統戦部は、理念の葛藤や組織葛藤が全くなしに、対南戦略と情勢要求の範囲内で主導的かつ効率的な戦略の選択が可能だ」と南・北の対話環境の差を憂慮した。
 
引き続き、「われわれの対話組織は、統一部や国防部、民間交流に至るまで、形式と内容によって違いが生じるが、北側は、統戦部が南北関係を総合的に管理するため、両面戦術や強硬戦術など、戦術的選択が自由だ」と、南北の対話組織の持つ差を指摘した。
 
また、「われわれは、合意を引き出すため費用負担や説得、譲歩など概して柔和的な態度を見せるが、北側は、徹底的に敵対するという前提の下、つまり、敵と戦うという意志と決議で会談に臨む」と言い、南・北の対話情緒の差も強調した。
 
北韓情報センター呉ジュハン記者 ohjuhan@hotmail.com
 
www.fnkinf.com 2009.02.05

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