北朝鮮当局は韓国に対する強硬発言を繰り返している。1月30日には祖国平和統一委員会が「政治および軍事的な対立を終わらせるための北南間のすべての合意は無効になる」との声明まで出した。東西の雪解け91年の時期に韓国との間に結んだ「和解、不可侵、協力および交流に関する基本合意」(92年発効)も無効になるとの一方的な声明だ。基本合意書付属文書に明記された海上軍事境界線に関する条項も廃棄すると明らかにした。
1月1日の新年共同社説での韓国政府非難、17日の人民軍総参謀部の「全面対決態勢」声明、25日の民主朝鮮紙の韓国統一部長官人事非難に続く強硬発言だ。2000年の「6・15南北共同宣言以来発展してきた南北関係が凍結・後退し、収拾できない状況に至った」(1・25)、「朝鮮半島における状況は改善と希望のどちらももたらす方法がない段階に達した」(1・30)と、南北関係こう着を韓国に責任転嫁し、北の閉鎖体制を正当化している。
韓国のライン設定に対抗
南北基本合意の破棄というが、南北関係を形式的に担当する祖平統が、金日成時代に締結された南北間合意を一方的に破棄できるわけがあるまい。しかし、人民軍総参謀部声明が「強力な軍事的対応措置が後に続く」と触れた後の合意廃棄声明であり慎重な対応が求められる。
07年末の大統領選で韓国国民は10年に及ぶ親北政権に否定的評価を下した。李明博政権は北朝鮮当局の南北連邦制へのアプローチに「通行手形」を与えたとも取れる2000年の6・15宣言を南北関係進展の実践的基準とせず、1991年の南北基本合意書のラインに立つことを表明し、北に開放と非核化を求めた。北当局の南北合意破棄声明はこれへの対抗だった。
6・15南北共同宣言は第2項で「南と北は国の統一のため、南側の連合制案と北側の低い段階の連邦制案が互いに共通性があると認め、今後この方向で統一を志向していくことにした」とした。この第2項によって6・15宣言は統治機構論に傾いた内容と受け取られ、発表当初からその含意について大統領に説明責任があるとの声が根強かった条項だ。本来、南北の重要合意には南北で共有すべき「人権宣言」が求められるが、6・15宣言には個人の自由・社会の開放・民主主義といった共通の価値や理念を探求する部分がない。李明博政権誕生の背景には、6・15宣言の欠点を是正し、南北間に普遍的理念についての合意を求める国民の意思があるといえる。合意を求める国民の意思は南北対立ではなく国民の基本的な願望だ。北当局が相次いで強硬な発言を行うのは、6・15宣言を結んだ大統領の統治行為に対しても「拒否権」を持つ国民の民主主義的権利が理解できていないからといわざるを得ない。南北共通の人権宣言、社会の開放、非核化は朝鮮半島新時代に欠かせないものだ。
最高人民会議前の引き締め
こうしたなか、北朝鮮最高人民会議常任委員会は1月6日、第12期会議代議員選挙を3月8日に実施する決定を発表した。03年8月の開催された第11期代議員687人の任期切れは昨年9月だった。選挙で最高人民会議が新たに選出されれば、再び金総書記が推挙され、3期目の金正日体制が始まると予測される。同時に世代交代が進み、後継体制への過渡期と基盤作りが始まることになるとみられる。
韓国国家安保戦略研究所は年末の報告書で、最高人民会議選挙で若返りが図られ、労力英雄、経済エリート代議員が増加するだろうとし、後継体制のための新しいイデオロギーの登場、先軍思想の後退、実用主義のクローズアップまで予測した。南北間に経済建設競争が始まることが予想される。
最高人民会議を前の一連の強硬発言の意図がわからないが、北からの対南工作は止んでいないし、北当局は一貫して南北間の約束を守っていない。
正常な南北関係を妨げる撹乱を終わらせ、原点に返って南北交流事業を成功させていくべきだろう。