趙甲済
朝鮮労働党の高位幹部出身の脱北者は、今年北側が西海上の、特に白翎島に軍事的挑発をする可能性が高いと主張した。何よりも北韓支配層の一部で起きている｢改革開放に対する共感の形成｣が既得権層を不安にし、対南挑発を通じて内部結束を固めざるを得なくさせているということだ。
今北の支配層の中で起きている変化は｢体制危機｣を招くほどの本質的性格を帯びているという。
1．40～50代の中堅幹部層が、｢21世紀型の社会主義は市場を手段とする｣と言いながら、中国式の改革開放を避けられない選択だと思い始めた。ただ、彼らは反金正日勢力ではない。
2．彼らは、中国式に改革・開放をすれば経済が良くなり、金正日政権がもっと強くなると言う。金正日の立場では改革開放をすれば金日成-金正日偶像化の虚構性が暴露され、とうてい耐えられないのでこれを許すわけにはいかない。
3．地方党の中央党に対する不満が増幅している。地方党は人民を食べさせる任務を引き受けて比較的実用的だが、中央党はいわゆる｢先軍政治｣を理由に資源配分を体制維持と革命事業に集中させる。
4．民・軍の関係が最悪だ。軍隊が民間人を襲撃、略奪することが多い。
5．支配層の中の中堅幹部たちの間では、金日成死亡(1994年)後、金正日が取った政策がほとんど失敗したことに対する不満と不信が高まっている。
6．李明博政府出帆後、韓国から入ってきた毎年10億ドルの金品が切れた。これによって最も苦しんでしる政務院の金英逸総理は金正日の開城工団閉鎖指示に反対しているという。
7．このような状況が悪化すれば支配層が改革派と守旧派に分かれ権力闘争をする可能性もある。
8．北韓政権が挑発しやすいところは西海NLLと白翎島だ。海岸砲で白翎島を砲撃するかも知れない。韓国軍の報復を受けても、北韓内では｢我々が勝った｣と宣伝でき、内部取り締まりを強化することができる。
新年初の北側の宣伝媒体の論説を分析してみると、｢千里馬精神｣に帰ろうという話がたくさん出る。これは経済問題までも革命精神で解決しようという守旧的方式だ。政権の指揮部が公式に改革路線を拒否したわけだ。
気になることはこれから予想される事態の展開だ。東欧共産圏の場合、改革派と守旧派が戦って改革派が勝利して共産主義体制が崩壊した。北韓政権内の改革派がこれくらいの挑戦力があるのかは未知数だ。共産主義体制の崩壊は、必ず内部の葛藤期を経る。北韓の場合、この葛藤期に対南挑発が予想される。北韓は対南挑発をすれば韓国内で親北左翼らが北側に立ち立ち上がって社会葛藤が深まると思う。
1999年6月と2002年6月の西海(交戦)事態とこれから起きるかも知れない挑発には大きな差がある。今度北側が挑発する時は｢核武装｣した状態での挑発になる。彼らが韓国の目標物に対し先制攻撃をした後、韓国軍の大量報復を阻止するため｢核恐喝｣に出た時、どう対応するのか? 我々は米国が提供することにした｢核の傘｣の助けを受けるべきなのか? 今からシナリオを用意しておかねばならない。
北韓政権は、自ら進んで改革開放できる機会を太陽政策期に逃してしまった。金大中・盧武鉉政権が対北むやみな支援をやったため、金正日政権は(韓国を)食い物にし続けると決心してしまったのだ。自力更生の意欲を殺してしまったのが左派政権の対北政策だった。
李明博政府が対北むやみな支援を中断したら、却って北韓内部で肯定的変化が起きている。｢われわれが、改革開放をしないと、韓国政権が変わる度に揺らぐようになる｣という自覚がそれだ。
金正日政権は本当の体制危機に直面している。ほぼ全ての独裁政権は、外部からの圧力でなく内紛で崩れる。北韓政権の指令塔は｢改革・開放をすれば政権が崩れる｣と考え、その下の中堅層は｢改革・開放をしないと崩れる｣と考える。
脆弱な体制が最も危険な時は、改革・開放を試みる時だ。ソ連と東欧共産国家らは改革を始めるや直ぐ手のほどこしようもない解体期に陥った。金正日政権がこの公式通りになるのか、対南挑発の後遺症で崩れるのか、でなければ桎梏の状態がもっと長続きするのか、今や大乱の時期が始まったようだ。統一が駆け足でやってくる。
