アンドレイ・ランコフ(国民大学校教授)
対外経済政策研究院が数日前発表した北朝鮮の対外貿易推定を見ると、北朝鮮の貿易の対中国依存度が2006年の56.6%から70%に急騰した事実が目に付く。
この統計が示すように、中国の対北朝鮮進出が加速化されている。北朝鮮に「親中衛星政権」の誕生の可能性もますます高まっている。そうなると、韓半島の分断の永久化をもたらすこともあり得るから、韓国側は少なからず関心を持っているが、韓国人の大部分は、解決不可能に見える「新しい地政学的な挑戦」の前で無力感を感じているようだ。韓国はもはや弱小国ではないが、まだ隣接する強大国に挑戦できるほどの潜在力がないので、じっとしているほかないと考える人々が多い。
だが、筆者の考えでは、韓国人は無力感を感じる必要がない。韓国は賢明な政策で、この挑戦にうまく対処し、分断の永久化を克服することができる。
中国が指向する目標を冷静に分析すると、中国は韓半島の分断の延長、そして「緩衝地帯」である北朝鮮の国家としての生存をある程度望んでいることが事実だ。だが、中国の基本目標は自国の「東北」や周辺地域においての安定の維持である。北京が北朝鮮に対する統制を検討する理由は、北朝鮮の「急変事態」によってもたらされるかも知れない、中国の安定に対する脅威を防止するためだ。
しかし、また中国は、対北朝鮮「進出」がどれほど危険なのかを誰よりよく分かっている。筆者は、中国の専門家らと何回も直接討論を通じて、中国側が北朝鮮に対する統制と責任をあまり望まないという印象を受けた。彼らは、北朝鮮経済の復旧事業がどれほど高くて難しいことなのかよく分かっているだけでなく、自分たちが北朝鮮を本格的に統制する場合もたらされる外交的な副作用に対し十分憂慮している。
筆者が会った中国の専門家たちは、この(北朝鮮の衛星国家化の)場合、中国が韓国社会の敵対感の対象になるだけでなく、アジアで中国の登場に対する憂慮と不安定感が高まることになることもよく知っている。また、いずれ北朝鮮国内でも中国に反対する民族主義が起こると予想している。逆説的に、韓国社会が中国の干渉を侵略として看做す反面、中国側は避けたい防衛的な作戦として考えているのだ。
そこから中国の「対北朝鮮進出」の可能性を減らす方法がある。中国は、韓国政府と社会が、北側に急変事態が発生する場合、北朝鮮に対して全面的責任を負う意志を示してくれれば、中国解放軍の「派兵」や「傀儡政権の樹立」を強行する必要がないと判断しそうだ。中国の立場から見ると、ソウルが難しく高く掛かる北朝鮮問題を解決するというのは良いニュースだ。中国は、後で超強大国になれば帝国主義的な政策を実現しようとするかも知れないが、現段階では高速の経済成長を通じて国力を強化することを優先しているから、外交的冒険主義を避けようとする方である。
言い換えれば、韓国は分断の永久化を避けるためには、北朝鮮の危機の時に決然とした行動で、中国の干渉の脅威(可能性)を事前に緩和させる必要がある。北朝鮮の体制が揺れる場合、韓国が、韓半島の北側が大韓民国の国土であると主張するだけでなく、北側地域で治安維持や経済の復旧をはじめとする多様な問題を解決するため、この地域に対して直間接的な行政を実施すれば、中国側は干渉する機会もなく必要もないと考えるだろう。
同時に、韓国は北朝鮮の民衆に接近する措置を講じなければならない。北朝鮮政権の神経質反応があっても、北朝鮮民衆に、放送やデジタル媒体等を通じ、韓国に対してできる限り多くのことを知らせるために努力することである。「急変事態」が発生すれば北朝鮮の幹部やエリート階層は、彼らの特権を保護してくれる中国の干渉を歓迎する反面、一般の国民は南との統一を渇望する勢力になるだろう。
しかし、韓国社会はこのような目的のために、少なからずの犠牲を払わなければならないということは明らかだ。遺憾ながら韓国社会には、北朝鮮の同胞らのため犠牲をする意志もあまりなく、北朝鮮に対する冷静な判断もまだ足りないと見える。多くの人々は北朝鮮問題が安く簡単に決定されることを希望するが、このような「幻想」のため、運命の瞬間が来た時決然とした措置がまともに取れなくなるかも知れない。
朝鮮日報時論[2008-03-10]