鄭昌仁(インターネット独立新聞主筆)
北朝鮮側が、開城工団の経済協力協議事務所の韓国当局の関係者らを全員撤収させよと要求し、韓国政府はこれに応じて全員を撤収させたそうだ。そして政府は、北朝鮮側のこのような行動に揺れず、落ち着いて対応している。たとえ、南北関係に一時的な梗塞がきても、原則を守り、「韓国が主導する」新しい南北関係を確立する契機とするということだ。私たちは、この際政府が原則を最後まで守り、統一まで成し遂げるように押し進めることを望む。
政府が守るべき原則の中の最高の原則は、大韓民国が韓半島における唯一の合法政府であるということだ。この原則に立って統一政策と対北政策を推進すると、北朝鮮はこれ以上持ち堪えられず崩れるだろう。もちろん、アメリカと中国、そして日本やロシアと緊密に協力すべきであろう。
したがって、相互主義とか、「非核・開放・3000」という原則は副次的原則に過ぎない。我々が主導権を握るべきだったのに、親北左派政権は一方的に北朝鮮の言いなりになってきた。その結果、北朝鮮は傲慢になり、統一への道はさらに遠ざかった。
振り返って見ると、統一の機会は1990年代の初めにあった。ソ連が崩壊した時、韓米同盟は堅固だったし、中国とロシアは北朝鮮を諦めていた。その時が統一のチャンスだった。だが、親北左派勢力は、いわゆる「統一費用」の論理を掲げて統一をあきらめるようにやった。もちろん、金泳三政府の弱気のため、彼らの偽りの宣伝が通った。彼ら親北左派の反逆勢力は、韓国政府が「吸収統一」はしない、と宣言するようにまでにした。反逆が極に達していた。
その後、親北左派政権ができてからは、逆に金正日を救うため「対北むやみな支援」政策を取った。言葉の上ではごもっとものような「太陽政策」は、北朝鮮の独裁者に一方的に物資および外交的支援をし、崩れかかった金正日政権を堅固に蘇えらせた。それだけでなく、平和体制だの平和共存だのと言い、金正日政権の存在を永遠に認め、国土を永久に分断させる永久分断の政策を推進した。まさに「反逆政権」だったといわざるを得ない。
いまや李明博政府の対北政策は信頼できるという観測をするようになった。最初は対北政策が不明で憂慮する気持ちで見守っていた。だが、現在政府が取っている姿勢は正しく正当だ。金正日の言いなりになる理由が当初からなかった。初めから原則を堅く守ると、北朝鮮は降参するしかない。
李明博政府が守るべき二番目の原則は、北朝鮮の同胞と北朝鮮の政権を分離することだ。北朝鮮の同胞は、解放の対象であり支援の対象だが、金正日共産軍事独裁政権は、打倒の対象であり「吸収」の対象だ。北朝鮮同胞を解放し、私たちと同等の自由を享受できるようにすることは、同じ同胞としての私たちの義務だ。
三番目の原則は、対北支援において徹底した相互主義を守るのだ。北朝鮮に緊急な物資を支援する時は、体制を改革するか開放することと連係させ、または北朝鮮が休戦ラインに集中した兵力を後方へ再配置することと連係させなければならない。それだけでなく、休戦ラインに集中した放射砲や長距離砲、そして化学生物武器、窮極的には「核」の放棄と連係させるべきだ。
このため、韓国政府が急ぐ理由がない。北朝鮮との対話が中断すると、あたかも何か大変なことでも起きたように、北朝鮮側にあたふた、ぺこぺこする理由がない。金正日が屈するまで余裕をもって待ちさえすれば金正日は崩れることになっている。ただ、金正日が崩れてから統一が成し遂げられる時まで、安保管理に努めなければならない。
このためには、統一政策と対北政策を区分して推進しなければならない。李明博政府が「6.15宣言」や「10.4宣言」より、1992年の「南北基本合意書」をさらに尊重することは、こういう意味から望ましい。ただ、南北基本合意書も、統一が成就される前までの、過渡期的状況を管理するためのものだ、ということを忘れてはならない。韓国政府は、窮極的に統一政策、つまり自由民主的基本秩序の下で南北を統一する政策を樹立し推進しなければならない。このような意味で、統一部は生れ変らなければならない。統一部は、それこそ統一政策を樹立し推進する部署でなければならない。対北安保管理や対北対話は、該当部署らが分けて推進すれば良い。
李明博政府は統一の好機を迎えた。歴史的にも、道徳的にも、現実的にも、金正日共産軍事独裁政権は存続する価値がない。専ら軍隊をもって、そして核兵器をもって政権を維持しようとすることは、金正日が、北朝鮮政権はもはや存在する価値がないということを、自ら万国に宣伝するものだ。善意の政権であっても、失敗すると崩れるのが道理なのに、ましてや「悪の政権」が存在する理由はない。李明博政府は、この際優れた外交力で武装し、普遍的な基本原則に立った統一政策および対北政策を立て、時代錯誤的な金正日政権を倒し統一を成就することを私たちは望む。