「脱北者エリート」の活用法[朝鮮日報時論]

金正日体制が崩壊しても、党幹部の北朝鮮支配は続く。
日付: 2008年05月21日 08時55分

アンドレイ・ランコフ(Andrei Lankov、国民大学歴史学教授)
 
去る5月8日、メドベージェフ当選者がロシアの大統領に就任した。彼が公式的には民主的選挙と通じ当選したとしても、プーチンをはじめとする旧ソ連の幹部出身の積極的支持があったので大統領になれたことは公然の秘密だ。共産主義が崩壊して17年が経ったが、旧共産党幹部出身らは、相変らずロシアの政治と経済で支配的な地位を維持している。共産主義が崩壊するや共産党幹部らは、自分の知識と経験、そして国家所有に対する統制力を巧妙に利用して、政治権力を保っただけでなく、国家所有を自分の個人所有化することで莫大な財産を得た。旧ソ連と東ヨーロッパの国家の大部分でこのような状況が見られた。
 
このような事実は、自然に北朝鮮の将来を思い出させるようにする。北朝鮮でコンピューターができ英語が堪能で、行政経験を積んで現代世界を少しでも理解できる人がいるとすれば、政権に携わった幹部らだけだ。それで、北朝鮮の体制が崩壊しても、人権弾圧のなどで特に悪名が高かった少数の幹部は処罰されるかも知れないが、他の幹部の大部分は現在と似た地位を保つことになるかも知れない。
 
だが、たとえ不可避なことだとはといっても、このような事態を放置するわけにはいかない。労働党の幹部出身らは、不正腐敗に余りにも馴染んでいて、脱金正日時代にも不正腐敗行為を続けるはずだ。問題は、またある。幹部らは、北朝鮮の人民よりは現代の社会と世界に対する意識や理解が多いが、彼らの意識面には、あまりにも歪んだものが多いということだ。
北朝鮮の体制崩壊が統一をもたらすと、もちろん韓国出身も北へ大勢行くはずだ。しかし、彼らも弱点がなくはない。まず、彼らは北朝鮮の現実と文化がよく分からない。二番目に、北の住民から見ると、彼らは「金持ちの異邦人」であるのみ、北の住民の信頼を得るのが難しい。
 
それで、北朝鮮の幹部出身らの支配を必要悪として見る場合にも、もはや北朝鮮の再建を指導できる新しいエリートの準備に対して考える時期がきた。脱金正日時代に、北朝鮮社会を望ましい方向へと新しく建設するためには、金正日政権に協力したことがなく、同時に北朝鮮もよく知り、現代世界もよく分かる人たちが切実に必要だ。
 
このような人々を教育するための人材は脱北者のみだ。韓国の現制度の下で、脱北者は大学に進学すると支援金を受ける。だが、大学進学率が80%を超えた韓国社会では、学士学位を取得しても就職や社会進出において特別に役に立たないのが現実だ。社会的に進出するためには修士や博士学位、あるいは外国語能力や大企業で積んだ経験などが必要条件だ。しかし脱北者らは助けてくれる家族がないから、修士課程に入学しても勉強に専念し難い。それで脱北者らのための大学院奨学制度が絶対的に必要だ。
 
脱北者らの低い英語のレベルも障害物になる。この問題の解決のため、脱北大学生たちのための海外英語研修の機会を設けてあげる必要がある。米国やオーストラリアのような国は高いから、フィリピンのような国で低い費用で脱北者のための「英語キャンプ」を開くのも一つの方法になる。
 
また、脱北者らは、差別や韓国社会に対する理解が足りないため、大企業に入るのが難しい。だが、李明博大統領の例のように、韓国社会での出世の道は、大企業の事務室を通じて開かれる。それで若い脱北者らが大企業で経験を積み、自分の能力を発揮できるインターン・プログラムは、修士や博士過程の奨学金ほど重要だ。
 
このようなプログラムは、そんなに巨額の金が要らない。脱北者社会の規模や構成を考慮すれば、このような奨学金が必要な人々は現段階では数百人に過ぎない。だが、この大きくない投資は、後ほど大きな収益をもたらすはずだ。このように教育を受ける人々が、南・北韓の未来を開いていく勢力になり得る。韓半島の未来を考える時間がきた。
 
http://news.chosun.com入力:2008.05.21 22:17 /修正:2008.05.21 23:00

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