迷宮に陥る北核問題‐6者協議の決裂以後の展望

日付: 2008年12月30日 14時02分

洪官憙(国家安保戦略研究所所長)
「北核」に関する「6者協議」は、北朝鮮が核兵器プログラムを放棄するようにすることだったが、所期の目的を達成できず、今決定的な存廃の危機に置かれている。
去る「米・朝接触」で、合理的な北核検証の手続きと言える「試料採取」の明文化を北側がきっぱりと拒否したことで、もはや北朝鮮の「核放棄拒否」の意志は国際社会に明瞭に知られるようになった。
 
ブッシュ行政府は、破格的に北朝鮮を「テロ支援国名簿」から解除し、重油100万トンと食糧50万トンを支援するなど譲歩を尽くしながら北朝鮮を説得しようとしたが、度はずれの「譲歩(concession)」や「宥和(appeasement)」という国内外の苛酷な批判のみを受けることになっただけだ。
ブッシュ行政府を含むアメリカの朝野は、もう北朝鮮の「偽善(hypocrisy)」や「欺瞞性」を確認しては疲れている様子だ。今では、核交渉を再稼働する動力が全て消耗した状態だ。
 
北朝鮮は6者協議の全期間中、それこそ推し引きの老練で邪悪な交渉術を発揮し、韓・米・日を疲れさせて敗退させた恰好になり、核開発を続けられる時間を稼ぎ、その口実を獲得した結果になった。
ついに米国防部の報告書が北朝鮮を「核保有国(nuclear power)」と表記し、韓国などが米国が事実上北朝鮮を「核保有国」として認めたのではないかという強い憂慮を持たせることに至った。
 
ブッシュ行政府の任期が終わることで、北核問題は、来年1月20日出帆するオバマ政府に引継がれることになった。しかし、オバマ政府は今金融危機に追われたまま、イラクからの撤退、アフガンでの対テロ戦争への集中、イランの核開発問題、中東紛争などの緊急懸案のため、「北核問題」に専念するのが非常に難しい状況だ。
 
オバマ当選者は、今まで「米国民にとって最も深刻な威嚇は、核兵器を持ったテロリストであり、また核兵器が危険な体制(dangerous regime)らに拡散することだ」と警告し、北核問題と関連して、「いかなる前提条件もない強力で直接的な外交(tough & direct diplomacy)の展開」を闡明した。だが、今や北核問題はこれと言った明確な方案の提示なしで漂流している状況だ。
 
ただ、米国の政治家や専門家、そして多くの国民が、(i)北朝鮮が真に核をあきらめる意思がない、(ii)その間北朝鮮は6者協議の枠組みの中で米国と韓国などの同盟国らを欺瞞してきた、(iii)中国も6者協議の議長国として期待を裏切って北朝鮮に影響力や圧迫を加えなかったし、したがって6者協議が漂流することに対して責任が免じられないことが分かるようになったことは所得と言える。
 
アメリカが自由民主主義国家として世論の影響を多く受けるという点で、北朝鮮の真意に関する「コンセンサス(consensus)」が形成されたという点は、異例的で幸いな現象ではある。
 
このようなことから、12月27日付の米時事週刊誌「US News & World Report」は、「今後2~5年内に核兵器を製造できるイランと共に、優先的な核拡散の挑戦がアジアの果てからやって来ている」とし、「ブッシュ行政府の下で、北朝鮮は核兵器1~2ヶが造れるプルトニウムを持った国家から、8ヶの核兵器が造れるプルトニウムを持った国に変わった」と慨嘆した。
 
同誌は、引き続き、「北朝鮮が、2006年に核爆弾1ヶの爆発実験をやったことで事実上の核保有国(de facto nuclear power)になった」と評価した。さらに「北朝鮮が核爆弾や核関連インフラを放棄する意向があるかどうか全く不明だ」と憂慮した。
 
一方、コラムニストのRichard Halloranは、「North Korean Impasse」(Washington Times,12.21)という題の寄稿文を通じ、「韓国はいかなる政権が執権しても、核協商に微温的だった」と指摘し、その理由は、(i)国民の多数が北朝鮮が核兵器を韓国の同族には使わないはずだと信じており、(ii)統一すれば、韓国が北朝鮮の核を引き取られると信じるためだと分析した。
 
Halloranの評価が、度外れの感があるのは否めないが、少なくともわが国民の間に「北核問題」の緊急性や切迫さに対して異見と葛藤が多く、国民的合意がなされずにいる点は明らかだ。今も「北核」を「自衛用」と主張し、北側の論理を事実上支持・擁護する指導層が相当数あるからだ。
 
この12月16日、韓国国防研究院(KIDA)が主催した「国防フォーラム」で、ハンナラ党の金鶴松国防委員長は、「北韓の核開発の実体的威嚇」を診断しながら、北の核兵器の数はアメリカ政府が推算する7~8ヶを超え、「20ヶ以上の核爆弾製造の可能性」も排除できず、それだけ核兵器の「非対称性」に対する対応策が至急だと強調した。
去る10月17日開かれた韓米安保例年協議会(SCM)で、韓国に対する米国の「核の傘」の提供が確約されたが、これも北核の事前の沮止よりは、「北核」に対する対応の次元で用意されたものだ。
 
2008年が終わる今、北朝鮮の「核保有」を既定事実化する雰囲気が強く感じられる中、「北核問題」は迷宮に陥っている。解決策が見えない金融危機と共に、2009年に北の核問題はもっと複雑で大きな危険を伴う潜在的イシューになりつつある。
 

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