金成萬(元海軍作戦司令官)
イラクのクルド地域のアルビル(Irbil)に派兵されたザイトン部隊(医療・工兵、519人)が4年3ヶ月間の任務を終え、2008年12月19日誇らしく帰国した。隣接国のクウェートでこの部隊を支援してきたダイマン部隊(空軍輸送機、102人)も一緒に撤収した。李明博ク大統領はこの日の午後、城南国軍体育部隊で開かれた派兵部隊歓迎および解団式に参加し、将兵らの労苦を労った。
2004年9月から延べ18,000人の将兵が派兵され、88,000人の現地人を診療し、2,300人の技術人材を育て、学校・図書館・保健所など280ヶ余りの施設を建設した。そして40ヶの村と63ヶの機関に物資526,000点余りを供与した。派兵部隊は一人の犠牲者も出さず任務を成功的に完遂し、現地から良い評判も受けた。派兵将兵の皆に大いに拍手を送る。
これで対テロ国際戦争支援のための海外派兵部隊は全て帰国した。しかし、イラクとアフガンでの対テロ戦争はまだ続いている。多くの国は戦闘部隊を派兵してテロ勢力と戦っている。米国はアフガンとイラクで同時に戦争を遂行することで、軍事力の不足や戦費負担などの困難を経験している。
米国が二つの戦争を早期に終結できない最も大きい理由の中の一つは、韓国においての戦争抑制力の維持のためだということを韓国国民はあまり知らずにいる。米国は韓半島有事時のための韓米連合司令部の「作戦計画5027」のため、69万の兵力(増援戦力と戦闘装備)を中東地域に投入できずにいるからだ。この戦力の規模は、米軍事力の約50%に該当し、韓半島の周辺(日本の沖縄、グアム、ハワイ、アラスカなど)で24時間待機の状態である。だから、米国は今年の4月から韓国のアフガン戦争支援を色んな経路を通じて要請しているのだ。
だが、わが政府は、国民一部の海外派兵反対の情緒を憂慮して積極的な対策を立てられず、時間だけ浪費している。結論から言えば、われわれはアフガンに戦闘部隊を至急派兵しなければならない。その理由を見てみよう。
まず、アフガンで中断した支援任務を続けなければならない。
アフガンに2002年に派兵した非戦闘部隊の東医・茶山部隊(医療、工兵)は、2007年12月に撤収した。当時、タリバンのテロ犯に拉致された韓国国民(20人余り)を救出するため、テロ勢力の強圧により止むを得ず撤収したのだ。今韓国はイラク派兵部隊が帰国したことで追加派兵の余力も充分だ。
この問題と関連し、国防部の国際政策官は、2008年12月15日のブリーフィングで、「米国が公式的で具体的に特定支援を要請した事実がない。警察を派遣する問題は、政府の関連部署が検討中で、現在としては派兵計画がないというのが政府の公式立場だ」と明らかにした。政府は、現在民間の地方再建チーム(PRT)の拡大、警察訓練要員の派遣、現物形態などの非戦闘支援を積極的に考慮中であると知られている。政府も何らかの形で支援する腹案を持っているのは確かだ。
アフガンには国際安保支援軍(ISAF)として41ヶ国から57,000人が参戦している。米国20,600人、英国8,330人、ドイツ3,310人、カナダ2,750人、フランス2,730人、イタリア2,350人、オランダ1,770人、トルコ1,300人、ポーランド1,130人、オーストラリア1,080人、スペイン780人、デンマーク750人、ルーマニア730人、ブルガリア460人、ベルギー420人、ノルウェー420人、チェコ415人などだ。大部分が戦闘兵力だ。アフガンに多くの国が派兵したのは国連の決議によるもので、国際的に正当性が認められているからだ。我々は国連の会員国として中断した支援任務を続けねばならず、今回は戦闘部隊を派兵してテロ勢力にやられた屈辱も挽回すべきだ。
二つ目、国際社会から受けた恩恵に報いなければならない。
大韓民国は韓国戦争(1950~1953年)の時、21ヶ国の助けを受けて国家消滅直前の危機から国を救うことができた。国連軍の旗の下、米国など16ヶ国が戦闘部隊を、デンマークなど5ヶ国が医療支援部隊を派兵した。参戦した延べ人員は1,940,498人で、この中で米軍が1,789,000人で大部分だった。国連軍の被害現況は総776,360人で、戦死/死亡が178,569人、負傷555,022人、失踪28,611人、捕虜14,158人だ。この国々は、もし北朝鮮が再び韓国を攻撃すれば国連軍の旗の下で直ちに参戦すると約束して韓国から撤収した。米国は韓国との約束を堅く守るため米軍を韓国に今だ駐留させている。
韓国は、ベトナム戦に1965~1973年間、戦闘部隊を送って、一部の恩返しをした。だが、湾岸戦争(1991年)には戦闘部隊を送らず非戦闘支援(医療要員、空軍輸送機、戦費負担)をもって代った。2002年からのアフガンとイラクの対テロ戦争には、非戦闘部隊だけを派兵した。国際社会は、今大韓民国を国際貢献に消極的で義理のない国家だと評価しているそうだ。このような状態では、もし韓半島で戦争が再発すると、どの国家が戦闘部隊を派兵するだろうか? 今やわれわれは恩を受けた国としてこれに相応しい国際的義務を果たさねばならない。
三つ目、駐韓米軍の全面撤収を防止せねばならない。
駐韓米軍の全面撤収はわれわれには悪夢になるはずだ。駐留米軍が撤収したベトナムは共産化され、フィリピンは中進国から後進国に転落した。駐韓米軍は現在28,500人で、主力は2師団(1ヶ旅団規模)と第7空軍だ。米国は韓国が2003年にイラクに戦闘部隊を送らなかったため、兵力不足で止むを得ず2004年に(駐韓)2師団の1ヶ旅団をイラクに移動させた。
マイケル・モリン米合同参謀議長は、2008年12月20日、遅くとも来年初夏までにアフガンに2万~3万人の米軍兵力を追加派遣する方案を進めていると明らかにした。オバマ米大統領当選者は、イスラム極端主義テロ集団が基盤を拡大しているアフガンの安定化こそ、真の対テロの戦争だと規定し、2009年1月就任すれば兵力を追加派兵するという立場を表明したことがある。今回のアフガン戦線への増強に、駐韓米2師団のアパッチ・ヘリコプター1個大隊(24機)が含まれている。来年3月に韓国から撤収する予定だ。
この米国の撤収措置は、韓国がアフガンに対する追加派兵を先送りしている中で決定されたものだ。そうなると韓国にはアパッチ1個大隊のみが残ることになる。アパッチは対北抑制戦力として非常に重要な役割を担っている。米国が代替戦力としてA-10攻撃機(12機)を韓国に派遣するというが、公式編成でない循環戦力なので、今後いつでも簡単に韓国を離れられる。
アフガンでの戦力の不足と駐韓米軍の戦略的柔軟性などを理由に、もし米2師団が全部撤収すれば、第7空軍は韓国に駐留する名分を失うことになる。韓半島有事の時、駐日基地やグアムなどから支援すれば済むのだ。強いて北朝鮮の大量殺傷武器(WMD)の威嚇から生存性の脆弱な韓国内の空軍基地に駐留する必要がないのだ。われわれは、戦闘部隊をアフガンへ派兵し、駐韓米軍の全面撤収を必ず防がねばならない。
四つ目、弱化した韓米同盟を「血盟関係」へと復元しなければならない。
朴正煕大統領はベトナム戦が起きるや急いで戦闘部隊を大規模で派兵した。韓国の派兵で米国は駐韓米軍のベトナム戦への投入を取り消した。そして米国は、韓国軍のベトナム戦参戦の代価で1970年代中盤に駐韓米2師団の撤収を保留し、1978年韓米連合司令部創設を積極支援した。韓米連合司令部は国際的に唯一の、最も完ぺきな連合軍事指揮体制だと評価されている。
ベトナム戦で一緒に血を流して固めた血盟関係は今でも続いている。このように韓国は堅固な韓米同盟の下、経済と民主主義の発展を同時に成し遂げた国になった。もしこれから韓半島で全面戦争が勃発すれば、参戦米軍の戦死者は8~10万人と予想している。こうであるにもかかわらず、韓国軍の被害だけを憂慮して、戦闘部隊の派兵を躊躇すると、有事の際米軍の助けを期待できない。
さらに、前の左派政府10年(1998~2008年)間、韓米同盟が大いに損傷した。米国は、「参与政府(盧武鉉政権)」の粘り強い要求を受け入れ、2007年の初めに、韓半島においての戦争抑制力である韓米連合司令部を、2012年4月に解体することに合意した。そして米国は韓-米-日軍事関係の代りに米-日-オーストラリアを結ぶ軍事同盟体制へと2007年に切り替えた。これから韓国の生存のため、韓米連合司令部の解体を延期し、韓-米-日軍事関係を復帰するためには、韓・米血盟関係を復元するための格別の努力が必要だ。
韓国は世界13大経済国であり、世界9位の軍事力保有国家なので、戦闘部隊の派兵をこれ以上先送りすることはできない。政府が国家の地位と安保上の事情を国民に率直に説明すれば、国民の同意を得ることは難しくないはずだ。もし、韓米連合司令部が計画のとおり2012年に解体されると、その以後は韓国軍の海外派兵は事実上難しくなる。北韓と周辺国からの威嚇に同時に備えねばならないため軍事的余力がなくなるからだ。
したがって、今度のアフガンへの戦闘部隊派兵は最後の機会になる可能性が多い。戦闘経験が一度もない韓国軍将兵の戦闘器量の習得と、韓国軍の戦争企画能力の向上にも大いに役立つはずだ。政府(国防部)の迅速な決断を期待する。もう一度、遠い異国で色々な難関を克服しながら、平和再建の任務を成功的に成しとげたアフガン、イラク、クウェート派兵部隊の将兵らに敬意を表する。
金成萬(予備役海軍中将、元海軍作戦司令官)