趙甲済
1988年、盧泰愚政府が発足するや、全斗煥前大統領とその側近や親戚らの不正に対する検察捜査と国会聴聞会が広範囲に進められた。全前大統領は白潭寺へ自発的に流配されたが、張世東前安全企画部長など数多くの側近と親戚が拘束された。全元大統領が、「家の法事を行う人もない」と嘆くほどであった。
1993年、金泳三政府が発足するや、盧泰愚前大統領とその側近らに対する捜査が行われた。朴哲彦氏など多くの前政権の要人らが拘束された。主に腐敗嫌疑だった。ついには、盧泰愚、全斗煥元大統領が秘密資金の造成と「12.12軍事変乱」の主動嫌疑で拘束され、裁判を受けて実刑を言渡された。
1998年、金大中政府も、金泳三前大統領の側近らをいわゆる「北風」および「換乱」(外貨為替危機)の嫌疑で捜査した。権寧海前安全企画部長と姜慶植前副総理および金仁浩前大統領経済首席秘書官が職務遺棄などの嫌疑で拘束された。金泳三政権の実力者らが安全企画部の資金1000億ウォンを引き出し、選挙資金で使ったという嫌疑、いわゆる「安風事件」の捜査もあった。
2003年発足した盧武鉉政府も、金大中前大統領の側近らを捜査した。「対北不法送金事件」の捜査で、朴智元前大統領秘書室長、権魯甲氏など金大中の側近実力者らが次々拘束された。現代グループの鄭夢憲会長がこの渦中に投身自殺した。2年後には、国家情報院の不法盗聴事件で金大中政権の二人の国家情報院長が拘束された。
2008年に登場した李明博政府は、まだ前政権の不正(非理)嫌疑に対して、本格的な捜査をせずにいる。個別的に前政権の主要人士と関連した捜査が続いているが、政権次元の企画の下でなされているようではない。
前職大統領に対する検察の捜査は、政治報復的である面があるが、不可避な面もある。大統領中心制の下で、検察は検察総長と法務長官の人事権を握った大統領やその側近の実力者に対しては捜査することが非常に難しい。大統領周辺には捜査権が及ばない「聖域」が作られる。このようなところでは不正が発生する可能性が大きい。
こういう部分に対しては、政権が交替した後に捜査することになる。事後的な捜査という点に問題があるが、このようにでも正義をたてることがしないことよりはましだ。李明博政府は、したがって、盧武鉉・金大中の左派政権10年間なされた権力型の不正と反逆嫌疑に対して、果敢に捜査する必要がある。顔色をうかがう必要がない。民主党が政治報復だと批判しても気にすることでない。彼らも、金大中・盧武鉉の執権期にそのような捜査をした人々だ。どうせ捜査を始めようなら、大規模の捜査本部を設け、長期間、しつこく、確実にやる必要がある。
特に、北朝鮮の核開発を助けた者らがあったら、必ず突き止めて、反逆に準じて断罪しなければならない。核開発に使われることを知りながらも、ドルを北朝鮮政権に送った者がいれば、彼らを捜し出して極刑で処断しなければならない。北朝鮮政権が核実験をやっても、韓国政府が対北制裁をしないという高級情報を提供した者がいたら、このような者も処断しなければならない。
脱北者の金光進氏は、金大中当時大統領やその側近ら、国家情報院、そして現代グループが合作した、「対北不法送金」の5億ドルの中の2億ドル程度は、核兵器の開発や武器購入を担当する「蒼光(ChangKwan)銀行」に配分されたはずという証言をしたことがある。
米国は、1953年にユリウス・ローゼンバーグ夫婦をスパイ罪で死刑執行した。夫婦は共産党員だった。科学者のユリウス・ローゼンバーグは、核兵器開発に必要な技術情報を収集し、ソ連情報機関に提供した。二人に死刑を宣告したカウプマン判事は、峻厳に論告した。その要旨はこうだった。
「私は被告人らの犯罪が殺人よりもっと悪質だと見なす。あなた方は、ロシアが科学者たちが予想したより1年はやく核実験ができるように助けた。そして、韓国で共産主義者らが侵略戦争を行い、5万人以上の犠牲者が生じ、百万人以上の罪のない人々が被告人らの反逆により、被害を受けるかも知れない。被告人らの反逆は、歴史の流れをわれわれに不利な方向へと変えた。われわれが核兵器の攻撃に備えた民間防衛訓練を毎日やっているとことが、被告人らの反逆に対する証拠だ。」
金大中・盧武鉉政権は、北朝鮮が核開発をしているということをよく知っていながらも、金正日政権の手に、約100億ドルの金品が韓国から入ることを防ぐどころか、これを指示、または幇助した。米国と国連が、核開発をする金正日政権を制裁しようとした時、事実上妨害したのも盧武鉉だった。北朝鮮が核実験をするや、金大中は、「アメリカが北朝鮮をいじめて、核開発をせざるを得なくした」という要旨の反逆の言葉まで言った。盧武鉉は、核実験をやった北朝鮮政権に対して実質的な制裁措置を何も取らなかった。金剛山観光も中断させず、ドルが引き続き渡されるようにした。昨年の10月4日には、金正日を訪ねて会って、天文学的なお金がかかる対北むやみな支援を約束し、西海の生命線であるNLL(海上北方境界線)に穴をあける合意をし帰って来た。
北朝鮮の核開発を助けた者は、地位の上下を問わず、国家の生存の次元で厳格に処罰しなければならない。核開発を助けた者を知りながらも、処断できない国家が歩む道は自殺だけだ。多額の月給を貰う検察の公安部検事たち、保安警察たち、国家情報院の対共捜査官たち、国軍機務司の専門家たちが、情報がないはずがない。核開発を助けた者らを処断できる法律がないはずがない。足りないのは、断罪するという意志だ。国軍統帥権者である李明博大統領は、国家安保に致命的な結果を招いた、北朝鮮の核開発に資金や情報を提供した反逆者らを突き止めて法廷にたてる憲法上の義務がある。それが国家の基本を守護することだ。