建国60年・未来へ

金九と李承晩
日付: 2008年09月03日 00時00分

 韓国は建国60周年を迎えた。10年ぶりに発足した保守政権は現在、順調にスタートしたとはいいがたい。現政権は、初代大統領・李承晩と彼の理念を踏襲する路線を進むと見られているが、李承晩政権の理念とは何だったのか。親北派が“神聖視”するもうひとりの建国の立役者・金九と比較し、今後の李明博政権が進むべき道を探る。また、中国や日本とはどのように付き合っていくべきなのか。朝鮮半島に野心を示す中国とは、北朝鮮をめぐって韓国と衝突する可能性を指摘。韓国の対北・対中政策に影響をおよぼす日本との関係については、円光大学の李柱天教授に3回連載で執筆してもらった。

歪曲された建国理念
評価見直すべき時の到来

 金九と李承晩。二人の傑出した独立運動家の評価について、長い間論争が繰り広げられてきた。建国60年の今年、この論争は特に激しさを増した。
 建国60周年を迎えた8月15日。政府与党は記念式を盛大に行った。民主党、民主労働党、創造韓国党などの野党3党は、金九の墓地を訪れた。反共を掲げた李承晩路線を引き継ぐ現政権に対し、南北統一を優先させた金九の路線こそ正しい道だったという意思表示だったに違いない。
 金九と李承晩の評価を議論するのは、李承晩を不正とみなし、金九を正当化しようとする親北勢力だ。
 親北派は、1948年の大韓民国政府樹立が、朝鮮半島の共産化を阻むための苦肉の策だったという点を無視する。韓国の成長が自由民主主義と市場経済、韓米同盟、教育改革、農地改革という李承晩の業績の上に成り立ったという事実も受け入れない。
 親北派は「自由民主主義国家でも共産主義国家でも統一された国を作らなければならない。韓国と北朝鮮は外国の干渉なしに対等な協力のもと、統一しなければならない」と主張する。彼らが目指す統一国家の経済体制は「資本主義の矛盾を克服し、社会主義の理想を取り入れたもの」だ。
 反共と自由民主主義、市場経済を掲げ、韓国の体制中に組み込む形での統一を志向した李承晩の路線は、親北派にとって受け入れられないものだ。心情的には、朝鮮戦争で北朝鮮とそのシンパを徹底的に弾圧した憎むべき相手だ。
 親北派は理念的に、歴史的に、本能的に李承晩を「民族分断をもたらした独裁者」としてきた。同時に、理念や体制より統一を優先視した金九を讃えてきた。金九にすれば不本意だろうが、親北派によって偶像化させられた。
 「4・19世代」と呼ばれる60~70代も親北派に同調してきた。李承晩が下野した1960年の4月革命の中心となった世代だけに、李承晩への評価はもともと低い世代だ。
 李承晩を評価する保守派は、親北派の歴史歪曲に対する反論のみで、消極的な姿勢に終始してきた。李承晩の業績は、晩年の失政で完全に否定しきれるものではなく、全般的には評価されていいというものだ。
 保守派は、独立運動における金九の業績は認めつつ、韓国政府樹立に否定的だったという点を指摘している。金九は解放後、金日成の策にはまる形で南北交渉に応じた。韓国単独での総選挙に応じず、1948年5月10日の選挙参加を拒否し、韓国政府を認めなかった。
 近年、李承晩と金九のどちらが韓国の歴史に貢献したかという点については、はっきりと評価が分かれている。親北派は金大中・盧武鉉両政権下で政治・文化・教育の各分野において重要なポジションを占め、李承晩は「民族分断をもたらした独裁者」、金九は「民族統一を夢見た独立運動家」としてきた。
 韓国の先進化の基礎とすべき国民統合は、歪曲された李承晩と金九の姿を正すことからはじめなければならないだろう。事実と史実に対する正しい観点が求められている。(ソウル・李民皓)

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