韓国と日本は少子化による人口減少が進み、高等教育機関で定員割れを起こすなど学生の確保が難しくなっている。両国は大学の国際化や競争力強化を目的に外国人留学生の受け入れを拡大しているが、自国学生の機会喪失や不利益につながらないようリスク管理を行っていく必要がある。
外国人留学生のみで構成した専門担当学科を設けるソウルの大学が増加している。留学生専担学科は、定員制限なしに大学が自主的に外国人留学生のみを選抜し、学士課程を運営するシステム。
ソウル所在の4年制総合大学37校のうち、留学生専担学科を運営している大学は17校。中央大学や総神大学も来年から留学生専担学科や学部を新設する予定で、ソウルにある大学の過半数が留学生専担学科を運営する見通しとなった。教育部が留学生専門担当学科の開設を許可したのは2022年5月。3年間で専門学科を運営する大学は全体の半分以上(51・4%)の19校に増えた。
韓国の大学が外国人留学生に大きく門戸を開いた背景には少子化の問題がある。
韓国の合計特殊出生率は24年時点で0・75(韓国統計庁「24年人口動向調査」)で、23年の出生数は過去最少の22万9970人(同調査)。教育部「24年高等教育統計」によると、25年には高校の卒業生数が約35万人に減少し、大学の定員約50万人を下回ることになる。特に地方大学は定員割れが深刻で廃校や統合が進んでいる。
23年の外国人留学生数は約20万人。教育部は「グローバル教育ビジョン2027」を掲げ、27年までに留学生30万人を目指している。外国人留学生に対しては「グローバル韓国奨学金(GKS)」(年間約2200人に学費免除・生活費支援、「教育部2024年GKS概要」)など支援も手厚い。
一方で、さまざまな問題も生じている。韓国人学生からは留学生への優遇が機会を奪うとの不満が高まっている。
ソウル大学の24年一般入試倍率は約5倍だが、留学生枠は約2倍と低く、外国人留学生だけではなく自国学生への支援をもっと拡大すべきとの声もある。韓国語のレベルが低い学生も多いことから授業の質の低下が指摘されている。留学生の約50%が中国出身(約10万人)で、中国人留学生の集中は大学間の競争力格差を拡大し、地方大学の経営依存度を高めている。
ソウルの名門大学や工科系大学に集中する留学生専門学科の新設は、韓国人学生の就職競争への影響が懸念され、特に先端分野での就職機会の奪い合いが問題視されている。
共通の課題抱える韓日
日本の状況も、韓国と同様だ。
日本の合計特殊出生率は23年時点で1・20(総務省統計局「人口推計23年」)。18歳人口は25年に約100万人まで減少(同24年」)、私立大学の約40%が23年度に定員割れを報告(日本私立大学協会「23年度入学者動向調査」)している。
文部科学省の「外国人留学生在籍状況調査23年」によると、23年度の外国人留学生数は27万9597人。24年5月には約34万人に達し、過去最多を更新(日本学生支援機構「24年外国人留学生在籍状況調査速報」)。
文部科学省は「留学生30万人計画のその先へ」を発表、33年までに40万人を目指すとしている。
大学は英語プログラムや奨学金(例:日本学生支援機構の月額最大14万円、学費全額免除)を拡充。24年度には専門学校で「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」が新設され、60校123学科が認定された。
両国とも留学生優遇政策が自国学生の公平性や教育環境に影響を及ぼし、地方大学の経営依存度の上昇が教育の質低下を招く可能性が指摘されている。
優秀な人材の確保や文化交流に貢献している一方で今後、留学生受け入れと自国学生への支援のバランスが求められる。 |