韓国経済の先行きに暗雲が立ち込めている。韓国国内で集計された各種経済指標によると、対米を中心とした輸出額が減少すると予測している。自動車、鉄鋼、家電など、多くの国内産業の成長が鈍化するため、早急な支援策の実施が急務となっている。
国会予算政策処は22日、「米国関税政策のシナリオ別影響」を発刊。米国が各国に高関税を課した場合の影響をシミュレーションしている。最悪のシナリオとして、韓国に25%、中国に145%、カナダとメキシコにそれぞれ25%を賦課した場合、韓国の輸出額は前年比10・6%減、うち対米輸出は同15・2%減と予想する。
とくに対中輸出は同31・1%減と試算している。中国の対米輸出が同69%減となり、韓国からの半導体、ディスプレイ部品などの対中輸出品目が直撃を受けることが要因とみている。
成長率0%台も
その場合、今年の韓国の成長率は、さらに0・7ポイント下落する可能性があると展望している。韓国開発研究院(KDI)と世界の主要投資銀行(IB)は韓国の今年の経済成長率を0・8%水準と予測しているが、さらに0・7ポイント減ということになれば、0%近くに落ち込む可能性が出てくる。
予算対策処は、現状で実現の可能性が高いシナリオとして、韓国15%、中国30%、カナダ・メキシコにそれぞれ10%の関税が課された場合、韓国の輸出額は3・6%減にとどまると推定している。
予算対策処は「関税の影響を最小化する方策を用意する必要がある」とし「短期的には自動車・鉄鋼などの業種への影響を最小化する方法を模索し、中長期的には生産拠点の海外移転など、輸出戦略転換も視野に入れなければならない」と提言した。
対米輸出が不振
関税庁が21日に発表した「5月1~20日の輸出入現況」によると、韓国の輸出額は前年比2・4%減の320億ドル、輸入額は同2・5%減の322億ドルとしている。対米輸出減少率は14・6%と不振が目立っている。
品目別では、石油製品が前年比24・1%減で最も落ち込みが大きく、家電製品が同19・7%減、鉄鋼が同12・1%減、自動車部品が同10・7%減と2桁減が続く。
産業通商資源部が1~4月中に主要対米輸出品目を分析したところ、自動車輸出額が前年比20%減、一般機械は同22%減、半導体は19%減だった。
予算執行迅速に
鄭仁教・通商交渉本部長は「個別の支援を続けるとともに、対策予算を迅速に執行する」としている。
産業研究院は21日、「5~6月の鉄鋼輸出分から米国の関税の影響が本格化する」との予測を発表。同院によると、1~4月の米国を除く韓国の対世界鉄鋼輸出額は前年比2・6%減少した一方で、対米輸出額は同10・2%減だった。
企画財政部は16日、「最近の経済動向(グリーンブック)5月号」で、「米国の関税賦課に伴う対外条件悪化で輸出鈍化など、景気下方圧力が増加した」と明言。同部では「企業への支援と産業競争力強化などのため、補正予算を迅速に投入する」としている。
韓国開発研究院(KDI)は14日、経済展望で年間商品輸出がマイナス0・4%を記録すると展望し、「輸出減少が一時的な調整ではなく、構造的危機になっている」と警告した。
一部で上方修正
米国の関税政策や韓国の次期大統領選挙など、先の見えにくい韓国経済の行方はどうなるのか。各種経済指標は軒並み悪化傾向を示しているが、一方でモルガン・スタンレーは22日、韓国の今年の経済成長率見通しを従来の1・0%から1・1%に上方修正すると発表した。
篠崎晃論説委員は「韓国経済の下振れリスクは解消されていないがモルガン・スタンレーの上方修正予測もあり、新政権の舵取り次第で危機的状況は回避できるのではないか」とコメントしている。 |