民団の第79回定期中央委員会が20日、都内で開かれた。現在の第56期執行部にとって、全国の代議員から批判や意見を浴びる初めての場といえる。会議の中心テーマは国籍事項、オリニ事業や地方参政権を巡る活動方針、規約改正についてなど。中には団員から承認を得られない議題もあった。
第56期執行部が初の進行
韓国中央会館で20日、在日本大韓民国民団中央本部(金利中団長)は「第79回定期中央委員会」を開催、全国から代議員144人(定員205人)が出席した。
国民儀礼・国歌斉唱・黙とうを行った後、權清志副議長が開会辞を述べた。
■三機関長あいさつ
はじめに、任泰洙議長は委員点呼と成立宣言を行い、三機関長として最初にあいさつを述べた。「現体制となり、この一年間を手探り状態で進めてきたが、今日が新たな始まりだと考えている。今回の規約改正案は現状回復しようという意味と、いいものは残しながら進めるという意味で、現在の傾向を考えるための場とし、皆さんの協力をたまわりながら承認を受けたい」と話した。
続いて、金団長は大会に参加した民団や駐日本国大韓民国大使館(朴喆熙大使)の関係者らに対し感謝を述べてから、現行の第56期執行部の体制が発足した一年間を振り返りながら、主催者あいさつを行った。「私は団長立候補の所信表明の中で、『民団は自由と民主主義、主権者は団員、支部・地方本部あってこその中央本部』だと再三述べた。民団の当然の基本を、決して忘れてはならない」と強調、過去の混乱への検証も行っていかなければならないとした。また、「いま在日社会は大きな転換点を迎えている。世代交代・新定住者・日本国籍同胞の増加などが課題になっている」とし、大会の争点とすべき事案に触れた。
三機関長として最後にあいさつを述べた金春植監察委員長は、「昨年12月以来、国際社会の混乱が激化する中、時代はますます予測不可能な状態が続いている。戦後最悪の韓日関係といわれた前政権から自由民主主義のもと、嫌韓本はなくなりヘイトスピーチも減った。在日同胞にとって韓日関係は死活問題である。再びの関係悪化があってはならない状況の中で、残念な弾劾裁判が現在も続いている。私としては、尹錫悦大統領の一日も早い復帰を切に祈っている」と話した。
三機関長のあいさつは、単に韓日国交正常化60周年・光復80周年を祝うというだけでなく、民団が歩んでいくべき方向性について具体的な言及があった。続いて、駐日大使館の金賢淑総領事が朴大使の祝辞を代読し、民団顧問の紹介が行われた。
関係者あいさつが終わってから、議決機関・執行機関・監察機関からの報告に移った。
■今日的な課題が山積
会議の全体的なテーマは、オリニ事業を含めた次世代育成の取り組みや、長年の課題である地方参政権獲得に向けた動きなど。現執行部の示した活動方針では大まかに言うと、前者を強化し後者を棚上げするものと会場に集まった多くの代議員らは受け取めた。批判を受けた鄭文吉事務総長は、「地方参政権の問題は私自身も長年にわたり課題にし続けたもので、活動方針から完全に除外するというわけではない」とした。高齢の地方団員から、「特別永住者だけに絞ってでも何とか実現できないか」「地域ごとの問題であるからと中央は地方本部に丸投げするのか」など、具体的な方針の提示を要望した団員が多かった。
半面、金団長がとくに力を入れて推進を図るオリニジャンボリーなどの次世代育成事業の強化についても、会場から質問が上がった。事業それ自体への疑問ではなく「母国研修の制度から、なぜ高校生から大学生までの若年層があえて排除されているのか」「参加した子どもたちにこのような場へ出てきてもらい、報告など受けるべきではないのか」など、具体的な意見がいくつも上がった。
規約改正の審議では、旧来の「書面決議」を廃した点、傘下団体の中央本部会長に日本国籍同胞が就任できるよう国籍要件が改定された点など、重要な案件も含まれていた。
総じて、定期中央委員会が代議員らの自由で闊達な議論を呼び起こし、忌憚のない批判を正面から受け、今後の方針を明らかにした点は評価すべきだ。三機関長を中心に昨年までの混乱の収拾を図るため団結を呼びかけ、有意義なあいさつを行った点も、現体制の本領発揮であったろう。
一方で、会議の最後に書面など何もない状態で孫京翼氏の停権処分について承認を得ようとする場面があった。会場から反対が強く、あいまいなかたちで終了したのは懸念だ。また、混迷極める韓国政局に対しての民団としての明確な活動方針が最後まで提示されなかった点も気がかりだ。
 | | 20日、第79回定期中央委員会の場で、金利中・民団中央本部団長は在日同胞社会が今、転換期を迎えていると言及。次年度の活動方針を総括した
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