人工知能（ＡＩ）の普及などで大きく変化した社会は、今後どの方向に加速していくのか。世界各国で様々な指標が掲げられている。ソウル大学トレンド分析センター教授などが参加し、毎年の消費トレンドをまとめる「トレンドコリア」は、今年のトレンドキーワードを発表した。その中から日々の暮らしに直接影響を与えそうないくつかを紹介し、韓日の今年の動向を探る。

　◆オムニボア
特定のトレンドや集団にとらわれず、自分の好みに応じて自由に消費する現代消費者を意味する。年齢や性別、所得、人種による境界が薄れ、個人の多様な興味や価値観に基づく新たな消費市場が形成されている。
現代社会は移動の手段が増えただけではなく、インターネットが普及したことで、世界の情報を簡単に得ることができるようになった。住んでいる場所や国に関わらずコミュニケーションも簡単に図れることから、視野が広がり価値観が変化した。これらの変化は、消費者の行動様式にも大きな影響を与えた。高価と安価なブランドを自由に行き来する柔軟な消費パターンが広がり、ブランドへの忠誠度よりも実際の経験と満足度に基づいた合理的な消費が強化された。さらに、新しい経験を追求する傾向が強くなり、カスタマイズされたサービスに対する需要も増加している。
◆アボハ
２０２５年の韓国の消費トレンドを表すキーワードとして「アボハ」という言葉が広がっている。アボハとは「非常に（アジュ）普通の（ポットン）一日（ハル）」の略。”非常に幸せ”でも、”非常に不幸”でもない、ただ穏やかな一日を貴重とする考えだ。
２４年は世界が転換期を迎え、韓国内政も荒れた。尹錫悦大統領の戒厳令宣布騒動後、さらに混乱が拡大しており、平穏な一年を祈る心がこの言葉に込められている。
幸福を誇示したり、特別な瞬間を生み出さなければならないという社会的圧力から抜け出し、平凡な日常の価値を再発見することが重要。景気後退と不確実性が高まる時代的背景の中で、人々は途方もない成功や変化ではなく、現在の安定と静けさをより重視するようになった。特にＭＺ世代を中心に広がっている新しい生活スタイルだ。　
◆グラデーションＫ（Ｇｒａｄａｔｉｏｎ　Ｋ）
韓国的なものを二分法的に判断するのではなく、グラデーションの概念を用いて韓国のアイデンティティーを拡張し、世界に影響を与え合うＫカルチャーの新たな視点を提案するもの。韓国文化のグローバル化と多文化社会への転換を反映するトレンド。
ＫＰＯＰや韓国ドラマのような韓流コンテンツが単に海外に輸出されることを超えて、現地文化と自然に融合している現象をいう。ＫＰＯＰアーティストと海外ミュージシャンのコラボレーションが増え、逆に海外文化が韓国に入り、独特の韓国式文化に変化する現象も増加している。
◆気候感受性
「気候感受性（Ｃｌｉｍａｔｅ　Ｓｅｎｓｉｂｉｌｉｔｙ）」とは、環境問題に対する認識と実践が自分たちの日常生活とビジネス全体に深く浸透する現象を意味する。
環境への適応は日本でも２５年のキーワードとなっている。昨年の夏は記録に残っている中で最も暑く、世界各地で異常気象が観測された。金融市場は現在、異常気象に起因するマクロ経済的損失を広く認識していて、今年は投資家による気候適応へのアプローチに変化が起こる可能性があると見られている。
企業の環境責任も一層求められている。ＥＳＧ経営は企業評価の重要な指標となっており、再生可能エネルギー、電気自動車、水素経済など環境に優しい技術への投資も急増している。
◆ワンポイントアップ
大きな目標よりも、今すぐ実現可能な一つの目標を設定し、自分らしい方法で成長を目指す新たな自己啓発トレンドを示す。
あまりにもかけ離れた目標を掲げるよりも、足下を見ながら一歩一歩着実に進むことで、小さな成功体験を積み重ねて、一つ一つ達成感を感じながら自分を向上させていこうという考え。
◆２０２５年問題
日本で話題となっているキーワードも取り上げてみる。少子高齢化など、日本の人口構造は急激に変化しつつある。特に、２５年は、「団塊の世代」と呼ばれる昭和２２年～昭和２４年生まれの人たち約８００万人が７５歳以上となることで、国民の５人に１人が後期高齢者になるという「２０２５年問題」が懸念されている。
高齢者人口の増加に伴い、シニア市場が転換期を迎えると見られている。
韓国も深刻な少子高齢化が問題となっており、同様の課題を抱えているといえるだろう。共通の課題解決に向けて両国の連携と協力が待たれる。