今回はまず客観的、科学的、中立的であるとされる国際機関である国際通貨基金(IMF)と経済協力開発機構(OECD)による世界経済の見通しをご紹介したい。
【IMFが示す2025年の世界経済見通し】
先行きが見えぬ中、25年の世界はどのようになるのであろうか? ここで、IMFの見方を筆者の視点を若干加えてご紹介する。即ち、IMFは今般、「リセッション(景気後退)に陥ることなくインフレを抑制したと世界各国・地域の中央銀行を評価する一方で、25年の世界経済の成長率予測を下方修正し、戦争や貿易保護主義などによるリスクが高まっている」と指摘している。
IMFはここ数年、世界経済は中期的に、現在と同程度の弱い成長が続く可能性が高いと警告しているが、各国が貧困削減や気候変動への対応に必要な資金を確保するには、弱い成長では不十分であるともしている。
IMFは各国政府に対し、借り入れを安定させるための厳しい決断を下すよう強く促しているが、「借金をして経済を回していくような経済システム」がはびこっていると筆者は見ており、IMFと同様の懸念を持っている。
また、IMFは、金融政策が意図した以上に成長に打撃を与え、新興国や途上国における政府債務負担を悪化させるリスクに世界は直面していると指摘し、気候変動や戦争、地政学的な緊張を要因に、食料やエネルギー価格の高騰が再燃する恐れもあるとの景気下振れリスクを指摘している。
【OECDが示す2025年の世界経済見通し】
OECDも世界経済予測を発表した。OECDは、「保護主義の再燃で貿易の回復が妨げられなければ、世界経済は今後2年間安定的に成長するであろう」との明るい見通しを示している。そして、24年の世界経済の成長率は3・2%、25年と26年は3・3%と予想した。インフレ率の低下、雇用の拡大、金利の引き下げにより、一部の国の財政引き締めが相殺されると見ているということである。
OECDは、「23年に落ち込んだ世界貿易が、輸入制限措置が世界的に増えているにもかかわらず回復していることを好感、25年は数量ベースで3・6%増加する見込みである」と予測している。
若干の温度差はあるものの、IMFもOECDも「25年の世界経済に対しては、不確定要因はあるものの一応、景気回復に向けた期待感を示している」と見ておきたい。
【韓国の経済見通し】
外需依存度が総じて高い韓国経済にとっては、上述したような世界経済の改善見通しは好材料となるはずである。
24年の世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大以降、大幅に上昇した金利とウクライナとガザという世界に影響を与えた二つの戦争の中にあっても、一定程度改善したと見ても良い。また、スーパー選挙の年と呼ばれるほど、世界各地で選挙による不確実性が台頭したが、全体的に見ると、世界経済は一定程度の成長を遂げた。
上述した通り、IMFは24年の世界の経済成長率を3・2%と見込むなど、改善は顕著となった。韓国経済もこうした中、一定の改善をしていた。韓国は世界的な成長構図の中でも、特に経済を牽引した国の一つとして認識されている。
OECD加盟国を対象とした分析でも世界10位となっている。特に物価、失業率、財政収支管理の各方面で相対的に良い実績を上げていると評価されていた。しかし、こうした経済実績が、今般の政治的混乱から崩れていくのか否か今、注目されているのである。米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ鈍化の見通しに加えて、韓国の政情不安の長期化が影響すると見られており、意識しておかなくてはならない。
以上、少しでもご参考になれば幸いである。
(嘉悦大学副学長、愛知淑徳大学名誉教授 真田幸光) |