昨年末に起きた済州航空の事故により、「代理人共和国」である韓国の現状が露呈してしまった。大統領をはじめ、国務総理や行政安全部長官、警察庁長官まで、事故処理に関わる主要機関がいずれも「代行」を頭に据えて業務を行っていることが明らかになった。
現在、大統領と首相の職は崔相穆・経済副総理兼企画財政部長官が代行している。そのため、航空機事故の対策本部長も崔副総理が務める格好となった。
さらに、事故が発生した(全羅南道)務安空港などの国内の空港を管理する韓国空港公社の社長も「代行」だった。文在寅政権時に任命された前社長が今年4月に辞任して以降、後任が決まらないまま8カ月が経過しているからだ。同様の理由で、政府の各機関と公的企業327社のうち30数社の社長が空席の状態にある。
こうした事態が引き起こされたのは、国政を司る尹錫悦大統領が、寝耳に水ともいえる非常戒厳令を宣布したことも一因だ。しかし、それ以前からすでに尹政権は「虫の息」に近い状態だった。 それは、議会の権力を握る共に民主党などの野党陣営が高位高官らの弾劾を繰り返してきたからだ。実際、尹政権発足後に国会で行われた弾劾訴追は29回に及ぶ。
さらに野党6党は、大統領代行を務めていた韓悳洙国務総理まで弾劾した。これについては憲法裁判所による違憲判決が待たれるものの、大統領代行まで弾劾するというのは前代未聞だ。
現在、すべての人事が一時停止の状態にある中、外交部の各国大使も「空席」が目立つ。イタリア大使やカナダのトロント総領事など8カ国の在外公館長も不在だ。国の舵取りに不可欠な役職者が不在だらけのため、「抜け殻の韓国」(Empty Korea)と揶揄する者もいる。野党による手当たり次第の弾劾がブーメランとなり、国の仕事を担う人がいなくなるという結果を招いたのだ。
8日、鍾路区の憲法裁判所で行われた、高位高官の弾劾をめぐる裁判(写真=共同取材班) |