モビリティ・プロジェクトでタッグを組む
韓国と日本のスタートアップ連携は、AI(人工知能)からロボット、モビリティ、サイバーセキュリティーといった先端技術分野にも及んでいる。モビリティ分野では、日本のスタートアップ企業の株式会社レゾンテック(神奈川県川崎市)と韓国のKONEX上場企業のタロス(Talos)社が今年4月に戦略的業務提携を締結し、モビリティ向けのワイヤレス給電装置を共同開発するプロジェクトがスタートした。
韓国タロス社は2005年の設立以来、防衛産業における電池・充電器を事業展開し、リチウム二次電池パックの設計・製造技術に定評がある。
今回の業務提携により、タロス社のバッテリーパック事業とレゾンテックのワイヤレス給電事業を融合させ、共同で世界規模でのモビリティ向けワイヤレス給電システムを開発、事業化する計画だ。
世界のEBike市場開拓に照準
電源や電線を接続せずに送電するワイヤレス給電は、スマートフォンやエレクトロニクス機器、電気自動車(EV)、ロボットなどの産業機器、医療機器などで活用されているが、将来はEV車両への走行中給電の実用化が期待されている。
レゾンテックのワイヤレス給電装置は、電磁誘導の共振技術を使ったオンリーワンの技術により、従来製品(Qi規格)に比べて約3~5倍の給電距離と給電範囲を実現している。これを踏まえて、レゾンテックは小型EV車両メーカーのEVLAND社(東京都渋谷区)とEV向けワイヤレス給電の実証実験を開始するなど、モビリティへの適用を進めている。
関沢康史レゾンテック社長によれば「まずはマイクロモビリティ、電動アシスト自転車、AGV(無人搬送車)、ドローンをターゲットに小型ワイヤレス給電装置を実用化し、次に四輪EV車両向けを開発、製品化する方針だが、当面は開発が完了したEBike(電動バイク)用を主力にグローバル市場に投入していく」としている。
韓国との二人三脚でグローバル展開
レゾンテックは17年創業の研究開発型スタートアップだが、韓国の取引先企業と個人投資家が約45%の株式を保有している。
本社及びR&Dセンターは日本(川崎市KSP)、グローバル・マーケティングセンターは韓国(パンギョー・テクノバレー)、SCMセンターはベトナム(ハノイ市)に置き、3拠点体制でスタイラスペンとワイヤレス給電システム事業をグローバル展開するレゾンテック。韓国の資本と経営資源を取り込み、二人三脚で挑むモビリティ・ワイヤレス給電事業は、韓日連携プロジェクトの試金石として、行方が注目される。
| | レゾンテックと韓国タロス社との戦略的業務提携
篠崎晃
日刊工業新聞社で新聞記者、雑誌編集者、編集長を歴任。現在は一般社団法人日本企業危機管理協会環境部会長・企業文化広報誌「つながり」編集委員。「松下電器の『破壊と創造』超・製造業への挑戦」(実業之日本社)ほか著書多数。
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