韓国の輸出が好調だ。今年上半期の輸出額は3348億ドルで、2022年上半期の輸出額に次いで2番目の好業績となった。半導体やIT製品を中心に輸出額が11カ月連続で前年同月比で増加しており、今年は史上初めて年間輸出額が日本を超える可能性がでてきた。
尹錫悦大統領は8月29日、今年3度目となる国政ブリーフィングの席上で「上半期(1~6月)の輸出実績は期待を上回るものだった。前年同期比9・1%増の3350億ドル。日本との輸出額の差が32億ドルに縮小した。08年に韓日の輸出額の差は3600億ドルあった。21年にも1000億ドルの差があった。わずか3年間で日本の目前まで迫った」と語った。
尹大統領発言後も韓国の輸出は好調を維持している。韓国産業通商資源部が9月1日に発表した「8月の輸出入動向」によると、8月の輸出額は579億ドルで前年同期比11・4%増、8月としては過去最大だった。これで輸出額が前年同月比を上回るのは11カ月連続となった。
これを受けて韓国大統領府の成太胤政策室長は11日、会見の席上で、「輸出が記録的な伸びを見せており今年の輸出額は日本と同じ水準になる」と予想した。
23年の日本の輸出額は、前年度比3・7%増の102兆8983億円で過去最高を記録。初めて100兆円を超えた。輸出成績は今年も好調を維持しており、上半期の輸出額は前年同期比8・8%増の51兆5169億円で、7半期連続で増えた。今年も100兆円を超えると予想されている。
韓国の上半期の輸出額は3350億ドル(約46兆6000億円)。8月の輸出額は579億ドルで、このまま下半期も輸出が伸びていけば日本円換算で年間輸出総額100兆円超えが現実味を帯びてくる。
韓国は輸出統計をドル建てで発表、日本は円建てで発表していることから為替の影響で数字も変化する。そのため統計上の数字で判断するのは難しいが、韓国の輸出が好調で日本に迫ってきているのは事実だ(日本の輸出は23年の年間輸出額が初めて100兆円を突破した。史上最高額を記録したが、ドル建て換算のピークは12年で8000億ドル超。以降、8000億ドルを超えたことはなく、23年は7191億ドル)。
韓日の輸出が共に好調な要因は、米国向けのハイブリッド車(HV)や、半導体製造装置の需要が拡大したこと、コロナ禍から世界経済が回復基調にあることが背景にある。
韓国の場合、これに加えメモリー半導体需要が急増したことも大きい。メモリー半導体の世界シェアは韓国がトップを占める。AI(人工知能)用の需要が今年に入り急拡大したこと、世界的なデータセンター建設ラッシュでメモリー半導体輸出が大幅に伸びたことが輸出業績に反映された。好況は当面続くと見られている。
さらに防衛産業や原子力発電関連の受注も増加しており、輸出業績の見通しは明るい。
一方、輸出が好調なら韓国経済全体にも好影響を与えるはずだが、内需は一向に回復せず景気は低迷したままだ。輸出好調の波に乗り、国内景気を立て直していきたいが課題は多い。 経済指標を見ても状況はけっして良いとは言えない。生産、小売り、建設は縮小。最近になって消費者物価上昇率が2%台に抑制されてきたが、これまで物価高が止まらなかったことも内需が活発化しなかった原因の一つだ。賃上げ抑制が続き、可処分所得は増えず、収入格差も縮小していない。政策金利が3・5%で据え置かれ、高金利が中小零細企業や個人経営の商店に大きな負担となり、企業の投資も減少している。 |