与党・国民の力と野党・共に民主党が、外国人の地方参政権問題について協議を開始した。これまで及び腰だった野党が協議に応じる姿勢を示したことで、本格的な議論が展開される見通しだ。
(ソウル=李民晧)
韓国で外国人の地方参政権問題が議論の対象となって久しい。選挙を通し、有資格者の多数を占める中国人に国内政治への介入の余地を与える、との見方があるからだ。「民意をわい曲できるという、ごく当たり前の懸念がある」(2022年10月、当時の韓東勲法務部長官)との指摘だ。地方選挙に加え、大統領選挙や国会議員選挙が行われるたびに、ネット上には中国人と見られる「コメント部隊」が出現する。
特に投票を伴う地方選挙の場合、直接的な政治関与という点からも、地方参政権を外国人に付与することの是非が問われる。単なる地域住民として地域の代表を選ぶ行為ではない、との見方だ。
韓東勲・国民の力代表はこの問題に対し、1日に開かれた与野党代表会談で、李在明・共に民主党代表に政治改革案のひとつとして議論を持ちかけた。すると李代表は「協議は可能」との意向を明らかにした。
韓国は付与、日本と中国なし
外国人の地方参政権に制限を持たせる案については、概ね世論の支持を得ているものとみられる。特に、国同士の「相互主義の原則」に反するという点では異論を待たない。韓国では日本人と中国人の永住権者に投票権を付与しているのに対し、日本と中国では永住権を持つ韓国人に投票権を付与していないからだ。
加えて、韓国の法律が脆弱であるという点も問題だ。現行の公職選挙法では、韓国の永住権を取得してから3年が経過した18歳以上の外国人であれば、誰でも地方選挙の投票権を得ることができる。この法律は05年の盧武鉉政権当時、日本政府に在日同胞の参政権付与を促すため、韓国が先制的に施行する形で制定された。しかし結果的に現在までの約20年間、韓国だけが外国人参政権の壁を破った形になっている。
要件厳格化と相互主義の適用
地方選挙の投票権を持つ外国人永住者は12万6000人で、このうち約8割が中国人(約10万人)だ。22年末現在、在韓中国国籍者の数は85万人(うち韓国にルーツを持つ朝鮮族は60万人)で、非正規ルートによる国内滞在中の者を含めると100万人に達すると見られる。
この層が団結して特定の政党を支持した場合、民意がわい曲される懸念がある。中国政府が海外滞在中の中国人や当該国の国籍を取得した者を通じて、現地における政治的影響力の拡大を図り、スパイ活動を展開していることは暗黙の了解。欧米諸国ではこれを「国家レベルのスパイ総力戦」と称し警戒している。
「全中国人のスパイ化」はソウルでも複数回摘発されてきた。中国政府が運営する「秘密警察」「孔子学院」などが好例だ。これらの組織は「韓中の文化親善交流」を謳いつつ、韓国の研究者や実業家、政治家、アーティストなどを抱き込み、中国共産党のプロパガンダや親中世論を形成する手段として利用している。直接的な政治行為である選挙となれば、中国政府がその機会を逃すはずがない。
最近、国民の力の金起炫議員は「公職選挙法」の改正案を掲げた。外国人に地方参政権を付与する要件として、現行法の「永住権取得後3年」から「5年」に引き上げる、というものだ。また、国同士における相互主義の原則を適用し、相手国で韓国人の永住権取得者に投票権を付与していない場合、国内に滞在する外国人にも投票権を与えない、という内容も盛り込まれた。
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