世界大戦へ暗雲が濃く垂れこめている。グローバルサウスはもちろん、大多数の西欧市民も戦争を望まないのに世界大戦を憂慮する理由は簡単だ。戦争を望む勢力がいるからだ。彼らは世界大戦(核戦争)をも辞さない構えだ。つまり国際秩序において、西欧中心からの再編を目指す側と旧秩序を強いる側の巨大な衝突が起きている。そして今、戦争を望んでいるのは「規則基盤秩序」(旧秩序)を強調、これをグローバルサウスに強要する西欧(G7、EU、NATO、WEFなど)だ。世界はすでに多極化時代に入っているのに、西欧はこの現実を認めようとしない。当面の火種はウクライナと西南アジア(イスラエル・中東)だ。
NATOが招いた西欧秩序の没落
西欧(NATO)はウクライナ戦争で「西欧秩序」の没落を促した。西欧はハードパワーとソフトパワーの両面でロシアに敗北した。キーウのゼレンスキーは、特殊軍事作戦が始まるや1カ月で休戦交渉に応じたが、バイデン米大統領とボリス・ジョンソン英首相(当時)が戦争持続を圧迫し、ウクライナを元に戻れない破滅に追い込んだ。
西欧の戦争能力は脆弱だった。軍事力はもちろん、経済力でもロシアを抑えられなかった。西欧は総力戦を戦えない。西欧は再武装を宣言したが、多くの時間と途方もない資金を投入しても実現できるか疑問だ。今の西欧人の多数は血を流す戦争を戦えない。その前に西欧は分裂する。G7議長国を務めたイタリア首相は、パリ五輪の開幕式にも参加せず中国を訪問した。
西欧はソフトパワーの戦争でさらにひどく敗北した。今回のパリ五輪でも明らかになったように「西欧精神」(価値)というものがどれほど腐敗し破滅的なものかが、世界に露呈した。グローバルサウスは、西欧の偽善、腐敗、堕落、人種差別などを嫌悪しロシアを支持する。西欧の堕落はメディアの操作・扇動や支離滅裂な戦略、意思決定過程で絶頂に達する。西欧メディアは扇動機関だ。信頼を完全に失った西欧がアフリカから追い出されるのは当然だ。
NATOは敗北を認め、終戦を模索せず、ひたすらロシアの完全破壊を求め、ロシアのパリ五輪参加まで封鎖した。米国は覇権国としての資格を自ら捨てた。米国は外部の挑戦ではなく、内部から崩壊する様相を見せている。イスラエルや、イスラエルの宿主となった米・英などでは核戦争を主張、暴走する権力を各国の国民が選挙で退場させられない。
ロシア・中国・インドが連携へ
西欧(G7、EU、WEFなど)はまだ金融、ビッグテック、プラットフォーム、メディア、データなどで強みを持っているが、孤立している。中産階層が崩壊・消滅している西欧の没落は避けられない。西欧の富は、グローバル全体主義を引っ張る、貪欲な少数の支配エリート層に集中している。
西欧は東西冷戦で勝利後、驕り増長し、30年余りを無駄にした。西欧は高福祉を掲げ、国家が国民を管理し飼育する体制がほぼ定着した。西欧(米国)は自分たちの基準を「規則基盤秩序」といい、国際社会に強要した。EUは、主権国家制度を否定する。共産全体主義に代わる新しいグローバルリズム全体主義が登場したわけだ。
西欧の偽善と狂気はもはや糊塗できない。DEI(多様性・公平性・包括性)を掲げるが、ブリュッセルはEU加盟国の主権すら認めない。NATOの頂点はソ連邦とワルシャワ条約機構が解体された時だった。その後は、EUのグローバル全体主義・帝国主義の尖兵として走ってきただけだ。
西欧の暴走に対してロシアと中国が連帯して対抗している。資源と食糧とエネルギーと生産力を備え始めたグローバルサウスが西欧の貪欲に怒り、反西欧で結集している。特にNATOに対抗するSCO(上海協力機構)は、ユーラシア人口の70%を占めている。
中国は、米国の中東戦略を破壊している。サウジとイランの国交正常化を中国が仲裁、パレスチナの全ての政派が7月23日「分裂終結とパレスチナ民族の団結強化に関する北京宣言」に署名した。イスラエルのネタニヤフは1週間後、この宣言に署名したハマス指導者をテヘランで暗殺した。イランに対し全面戦争を挑発したのだ。
ロシアは、国際秩序の再編を宣言、米国のペトロドル体制に挑戦している。ロシアが果敢に取り組めるのは、米国が自ら50年間続いたペトロドルの基盤を破壊したためだ。西欧を気にしてきた世界最大人口のインドが、ロシアに傾いた。
米国は、自国の利益のため中東産油国同盟に犠牲を強いてきた。病んだ西欧文明や貪欲な勢力に掌握された米国は、内部崩壊が進行中だ。米国は他国に対し民主主義を語る資格がない。米国は、自国の立場や利益に反すると見なした多くの他国(政権)を転覆させてきた。選挙を控えて大統領候補への暗殺未遂が起こり、これを予防もできず、捜査もせず、メディアを動員して真実を隠す国がどうして帝国になれるだろうか。選挙(投票)の公正問題さえ検証ができない国が「民主主義」を言えるか。もちろん、多くの米国人が建国精神と伝統価値を回復しようと内戦的闘争をしている。だが、今の米国は民主主義先進国とは到底言えない。
イスラエルのイラン攻撃で対戦へ
当面、世界大戦の火種はウクライナ(ゼレンスキー)とイスラエル(ネタニヤフ)だ。アングロサクソンが建てた「人工国家」のイスラエルが、自分の宿主である米国などを当てに核戦争まで目論んでいる。イスラエルが、イランを(核)攻撃すれば、ロシアや中国などがイランを全面支援するはずだ。
米国は、イスラエルのために中東各地を焦土化、混乱させるISISまで作り、保護してきた。米国は、シリア領土のユーフラテス川の東を無断占領、占領地で採掘したシリア石油を任意に処分している。今月、シリア軍がユーフラテス川の東のデイルエゾールをISISから奪還するや、慌てた米国がシリア軍を爆撃した。
世界大戦となれば、すでに大規模な遠征戦争ができない米国は、世界中の数多くの基地を撤収するのが急務だ。米国が多極化世界を受け入れず核戦争をすれば、米国自体も確実に破壊される。韓国と日本はそれでもNATOに入る気か。
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