義務教育から高校までの授業には学習指導要領があるが、大学にはない。大学教員に向けて授業の内容や質を向上させるための取り組みを日本ではFD(ファカルティ・ディベロップメント)という。韓国ではCTL(センター・フォー・ティーチング・アンド・ラーニング)を中心に大学評価と直結した教員管理の仕組みがある。両者の違いと特徴、課題を考察した。
200人参加し東大で開催
東京大学本郷キャンパスダイワハウス石橋信夫ホールで先月25日、同大学総合教育センター主催の「日韓FD比較シンポジウム」を開催、対面とオンラインで約200人が参加した。
開会式で、森山工・東京大学副学長と、浅見泰司・同大学総合教育センター長が主催者あいさつを行った。また、会進行の趣旨について朴源花・同大学総合教育センター助教が説明を行った。
■韓国CTLと日本FD
はじめに、南敏祐・大田大学大学革新事業団副団長が「韓国大学CTLの適応型教授支援体制と成果管理」、佐藤浩章・大阪大学学際大学院機構教授が「日本のFDの歴史と現状」と題し発表。両者の発表は、韓日大学の教員研修制度の沿革や展望について述べる総論に該当。
続いて、李恩和・新羅大学教育大学院長が「韓国大学教育開発センター協議会の成長と学会誌『大学教授学習研究』の課題」、栗田佳代子・東京大学大学総合教育センター副センター長が「東京大学におけるFD/プレFDの取り組みの現状と今後の方向性」と題し発表。韓日がCTLやFDを実施・運営するための、組織の役割や機能について語った。
休憩をはさみ、尹喜貞・淑明女子大学教授学習センター長が「韓国大学の学習支援プログラムの現況と事例」、榊原暢久・芝浦工業大学教育イノベーション推進センター教授が「芝浦工業大学におけるFDの取組~教職員個々の能力開発からカリキュラムの整合性整備へ」と題し発表。韓国のさまざまな大学での実践例と、日本の大学における具体的な状況について語った。
■相互の取り組みに学ぶ
韓日いずれも初期の取り組みが1990年代に始まった。
韓国では教授支援(ティーチングサポート)、日本ではFDという名称で主に呼ばれるが、要するに「大学教員のための教育(指導)プログラム」を指す。生徒へのアンケートに基づく教員の授業評価などが、韓国では保護者や学生、別の教員などに向けて公開されるケースがあるという。そのような例に対し、日本側の登壇者は「この20年間での韓国の変化に驚く」と率直な感想を述べた。
日本のFDは国公立大学や私立大学によって、推進のための設備や支援面などで実施状況に温度差はあるが、新たな大学教員向けには(研究の蓄積など)経験を問わず履修してもらう研修プログラムとして機能しているという。
学生の学びを円滑にするため、大学が組織として、教員との間に授業への評価という立ち位置から関わっていく姿勢は重要だ。韓日が課題を共有し、互いの経験から学べば、両国の教育界に有意義なものとなるだろう。
少子化や国際化、情報の多様化によって大学教育が変わっていこうとしているる今日、このような会合は注目に値する。
| | 全体ディスカッションでは韓日の大学教員への支援の取り組みを比較、活発に意見交換がなされた |