尹錫悦大統領に対する弾劾訴追案の発議を求める「国会における国民同意請願」の署名が１００万人を超えた。これに対し最大野党「共に民主党」は「弾劾訴追案聴聞会」を実施する可能性に言及し、尹大統領と与党を圧迫している。国民の力は「弾劾請願を政争の具として悪用している」と批判を強めている。
（ソウル＝李民晧）

　国会議席数の３分の２を占める共に民主党は、「弾劾カード」をちらつかせて国政運営を妨げている。国務委員である長官や、自党の代表である李在明氏を不正疑惑で捜査中の検察官も、国会の決議により弾劾された。
弾劾に踏み切るのは、高官による「重大な違法行為や犯罪行為」を法的に処罰できない場合、特例として議会が実施するというケースだ。
法律で定められた弾劾の対象も、裁判所による訴追が困難な上級公務員、裁判官などによる重大な違法行為や犯罪行為があった場合、国会による罷免を可能とする制度だ。
しかし今、国会では明確な基準や証拠もないまま弾劾を政争の具として利用するケースが頻発している。

最終ターゲットは大統領

共に民主党の最終ターゲットは大統領だ。これまで国会によって弾劾された大統領は２人。２００４年に盧武鉉大統領が弾劾された理由は「選挙法違反」であり、１６年に朴槿惠大統領が弾劾された理由は「崔順実ゲート」の被疑者とされたからだ。
盧武鉉大統領は憲法裁判所によって弾劾が棄却され、当時少数政党だった「開かれたウリ党（現「共に民主党」）」は総選挙で圧勝した。朴槿惠大統領は、旅客船「セウォル号」沈没事件当時の責任論が浮上して支持率が低下したのに続き、敵対勢力の策略によって犯罪者に仕立て上げられ、収監されてしまった。
最近の情勢は８年前の朴槿惠弾劾時に酷似している。巨大野党は、金建希夫人問題に加え、兵士死亡事件への対応が不十分だったとして大統領の責を問い弾劾へと追い込んでいく計画だ。

ロウソクデモ、８月点火か

野党は金建希夫人を、国政に対し不正に介入したとして批判している。まるで崔順実氏と同様に国政ろう断の主犯に仕立て上げようとしているようだ。
尹錫悦大統領の弾劾は、様々な犯罪疑惑のある共に民主党・李在明代表を縛りつけている司法リスクを断ち切る切り札でもある。
弾劾攻勢は８月に本格化する見込みだ。当月に李氏が再び民主党代表に選出されれば、李在明一極体制が完成する。最近は鳴りを潜めていた夜間のろうそくデモも、再び活性化する可能性が高い。

昨年８月２５日、共に民主党議員が主導したソウル光化門デモ