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最終更新日: 2024-09-04 14:21:51
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2024年07月02日 12:37
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ドラマと文学で探る韓国⑪ 都会に潜む悪意の正体③ 青嶋昌子
『他人は地獄だ』×『甲乙考試院~滞在記』

 『甲乙考試院~滞在記』の作者、パク・ミンギュは1968年生まれ。子供のころからずっと学校が嫌いだったという。大学を卒業すると、今度は会社に行くのが嫌で、さまざまな職業を転々としたそうだ。こうして8年が過ぎ、会社を辞めて小説を書き始めると、2003年『地球英雄伝説』で文学トンネ新人作家賞、同年『三美スーパースターズの最後のファンクラブ』で第8回ハンギョレ文学賞を立て続けに受賞、一躍注目の的となる。本作はそんなパク・ミンギュが05年に刊行した初短編集『カステラ』に所収されている作品だ。
彼の作品を読んで感じるのは、既成概念や社会的秩序から逸脱してしまった人々への慈愛に満ちたまなざしだ。2年6カ月ものあいだ、狭い考試院の部屋で暮らした本作の主人公に向けるまなざしも然りである。”甲乙”というユニークな名前の考試院。契約書などで使われる甲乙という言葉は、韓国でも日本と同様の意味で使われるが、やがてそれが上下関係をあらわすようになり、パワハラの意味を持つようになった。日本でも話題になった14年の大韓航空ナッツリターン事件で盛んに使われ、一般的になったようだ。
小説の時代背景は1991年だから、当時はまだそこまでの意味は持っていなかったかもしれないが、居候をしていた友だちの家と主人公の関係はまさに甲乙関係だ。そんな名前を持つ考試院から抜け出した主人公は、自分のためだけの目玉焼きを食べながら、こう思うのだ。あの考試院が今もそこにあればいいなと。生きていれば、いろいろある。いろいろあってそこに流れ着く人のために、今もそこに、あの場所があったらいいと主人公は願う。

パク・ミンギュは仕事を辞めて作家になったが、『他人は地獄だ』のジョンウは作家を目指していたもののうまくいかず、先輩に誘われて仕事に就く。似ているように思えるが、その差は歴然としている。ジョンウの勤務先は甲乙関係、つまりパワハラそのものだ。さらにジョンウが暮らしているのはエデン考試院。エデンの園といえば楽園のことだが、この考試院は楽園どころか地獄と化していく。
大志を抱いてソウルにやってきたばかりの、善良で真面目な青年、ジョンウ。だがおとなしくて気が弱そうな外見とは違い、実は頑固で譲らない性格でもある。会社も恋人との関係も空回りし、次第に追い詰められ孤立していくジョンウ。その上、考試院の住人たちは怪しい面々ばかりだ。
いつの間にか誰かがいなくなったり、自分の部屋に誰かが入った形跡があったりと、ジョンウは会社ばかりか家でも気の休まる暇がない。そんな彼に近づく歯科医のムンジョ。はじめは意気投合していた2人だが、やがてジョンウはムンジョにある種の気味悪さを感じ取る。疎外感を深めていくジョンウに、救いの手を差し伸べる人物はあらわれるだろうか?

ジョンウが『甲乙考試院~滞在記』の主人公のように”運よく”そこから脱出し、少なくとも人並みの暮らしができるようになることを願わずにはいられない。『甲乙考試院~滞在記』の主人公が「生きていればいろいろある、そんな人たちのために、今もあの考試院があればいい」と思った気持ちはある意味、人を孤立・孤独から救う働きをしているように思えてならない。

2407-03-06 6面
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