先進国のなかでも韓国の相続税率は極めて高い水準にある。尹錫悦大統領はこれまでも、高い税率が企業評価(株式)を落とす要因にもなるとし、税制改革に言及してきたが、大統領室の成太胤政策室長が現在の税率50%(最高)を30%前後まで引き下げる考えを示した。
韓国の最高相続税率は50%で、OECD(経済開発協力機構)加盟国のうち日本の55%に次いで2番目に高い。さらに筆頭株主などから株式を相続すると20%割り増しされ、最高60%まで上がる。先進国で相続税が高いといわれるフランスの45%、米国の40%を大きく超える税率だ。OECD平均が26%前後であることを考えると、日本とともに突出しているといえる。
韓国経済人連合会と大韓商工会議所などによると、2021年基準で韓国の国内総生産(GDP)比の相続・贈与税収の割合は0・7%で、OECD加盟国ではフランスとベルギーに並び1位。政府歳入における割合も大きい。
韓国では以前から相続税の高さに対して民間から不満の声があがっていた。
相続税と聞くと、個人の問題と捉えがちだが、企業の成長を大きく阻害する要因にもなっている。
「コリアディスカウント」という言葉がある。韓国の証券市場が相場よりも安く見積もられているという意味だが、これは相続税率の高さが影響している。
財閥や大企業でなくても多くの上場企業で株価が上がると家業継承が難しくなる。少数株主は株価が上がれば利益になるが、大株主は株価が大きく上がると相続時に多額の税金を課せられる。
結果、企業を売却しなければならなくなるケースも出てくる。売却までいたらなくても、保有株式を処分し資金を捻出、企業の経営構造が脆弱化するといったケースも見られる。社員の雇用状況も不安定になり、企業の技術や経験の継承さえも難しくなる。
サムスン電子の李健熙会長の相続税は12兆ウォンを超えた。長男で副会長(当時)の李在鎔氏が5年間で分割納付することになった。このとき、保有株は売却せずに、銀行からの借り入れで資金を賄ったと言われている。
韓国の場合、こういった経営リスクと常に向き合わなければならない。
これに対し、韓国大統領室は相続税を30%程度まで減額する考えがあることを明確にした。
大統領室の成太胤政策室長は16日、KBSの時事番組に出演し、「相続税率をOECD平均水準に下げ、その次に遺産取得税と資本利得税形態に変える変化が必要だ。OECD平均が26%前後と試算されるため、ひとまず30%前後まで引き下げが必要だ」と話した。続けて「韓国も資本利得税に転換する全般的改編が必要だ」とした。
相続税減免に関してはすでに1月17日、伊大統領が、ソウルの韓国証券取引所で開かれた民生討論会で、現行の相続税を「過度な割り増し課税」として改編の可能性を示唆していた。一方で、尹大統領は相続税改編が法改正事案であるだけに「相続税が過度な割り増し課税ということに対し国民的共感が必要だ」と条件に言及している。
韓国では収入格差、貧富の二極化に対しての不満が大きい。税制改革について賛成の民意が得られるかは微妙といえる。今後の動向を注視したい。
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