民団中央は6日、東京・永田町の参院議員会館前で、日本に在留する外国人の「永住者」資格の取り消しが可能となる入管難民法改正案の削除を求める集会を開いた。民団各地方本部、傘下団体のほか、在留韓国人団体などの関係者ら500人が参加。日本での地位と生活を不安定化させる改正案について、反対の声を挙げた。
冒頭、民団中央の金利中団長は「今回の法案によって、長年日本に住む私たちの生活が壊されるのではないかと危惧している。国会議員のほか、世論に広く声を届けたい」とあいさつした。
ともに戦う決意
改正案に反対する野党国会議員らも駆けつけた。社民党党首の福島瑞穂参院議員は「当事者へのヒアリングもないまま、どさくさ紛れに提案された。永住者の声をなぜ聞かなかったのか。廃案にするべく力を合わせる」と声を挙げた。
立憲民主党の福山哲郎参院議員は「突然、資格取り消し可能というひどい話が出た。永住者が日本で生活するとき、不安になる法案を通してはいけない。厳しい戦いだが、ともに力を合わせていく」と誓った。
与党からは公明党の河西宏一衆院議員が駆け付けた。4月に民団中央の代表者と同党代表者が意見交換したことに触れ、「岸田文雄首相に直接、民団からの懸念を質した」と前置きし、「在留カード不携帯や、自動車運転時のスピード違反などの道路交通法違反のほか、健康を害して収入がなく納税ができないといったケースは対象外であることを確認した」と説明。仮に成立した場合についても、「法の趣旨に反する運用がないかを立法府の一員として監視していく」と明言した。
祖国よりも愛着
民団関係者もマイクを取った。民団大阪の金明弘団長は「父からこの国で生きる以上、日本のために尽くせと教育されてきた。戦後からの同胞はほとんどが永住者。剥奪可能な法案は許されない」。
民団神奈川の崔喜燮議長は「祖国よりも生まれ育った日本に愛着がある。地域社会を愛し、日本に骨を埋めるつもりだ。フィリピンやベトナムなど外国人の友人もいるが不安を感じている。私たちを隣人として、地域社会のパートナーとして、受け入れてほしい」と訴えた。
民団中央の金団長名の「永住者の生活、人権を脅かす重大事案と認識し、入管法改正案から永住資格取消条項の削除を強く求めます」との声明文が読み上げられたあと、「日本政府は永住資格取消条項を削除せよ」といったシュプレヒコールで約1時間の集会を締めた。
外国人への共感
金団長は「思った以上に盛況だった。日本全体の共生社会化が進み、在留外国人に対する共感が広がっていると感じる」と感激の面持ちで述べた。
入管難民法改正案は先月、衆院を通過し、現在参院で審議されている。政府は永住権取り消しを「悪質な場合に限る」としている。経済的事情で税金などを支払えない、といったやむを得ない場合は対象外としているが、野党は「曖昧だ」と批判している。
岸田首相はガイドライン(指針)を作成することで、「手続きの透明性、処分の公平性が一層確保され、安定的な法の運用が担保される」と強調している。
出入国在留管理庁によると、2023年12月末現在の在留外国人は341万992人。このうち永住者は89万1569人。永住者の国籍・地域別内訳は多い順に、中国33万810人、フィリピン13万9534人、ブラジル11万5287人。続いて韓国・朝鮮が7万6035人で4番目となっている。
永住権取り消し可能の法案に反対の声を上げる参加者ら |