NPO法人「縁地連」(町田一仁理事長)が主催して例年行う朝鮮通信使ゆかりのまちイベントが1・2日、東京で初めて開催。総会や記念講演、再現パレードを執り行った。約420年の歴史を有する、ユネスコの「世界の記憶」に登録された(2017年)平和友好使節団の意義について、関係者の声を中心に探った。
台東区や関係団体の協力で実現
台東区役所で1日、特定非営利活動法人「朝鮮通信使縁地連絡協議会」(町田一仁理事長、以下「縁地連」)は「第31回朝鮮通信使ゆかりのまち全国交流大会(東京大会)」を開催、定期総会と記念講演会を行った。
総会では、はじめに前任の松原一征名誉会長の後継となった町田理事長が主催者あいさつを行い「東京で全国交流大会が開催できることを夢のように思う」とし、参加者に感謝を伝えた。とくに韓国からイベントのために来日した李美連・釜山文化財団代表理事を労った。
続いて来賓あいさつを行った野村武治・台東区副区長は、使節団が宿泊に利用した東本願寺の正門前に説明書きを設置したことなどを報告。保坂三蔵・東京日韓親善協会連合会(以下「東京日韓協」)会長は、1607年に第1回が2000キロメートルの旅程を超えてやってきた朝鮮通信使の意義について「より深く重く考えなければいけない」と強調した。
総会では、李代表理事から来年度実施予定のゆかりのまちイベントの計画案が示され、静岡県以西の関係者が具体的な対応について協議した。来年は韓日の国交正常化60周年や大阪での万博開催など節目となるイベントの開催が多く、通信使関連行事をその中にどのように盛り込んでいくかという点が主な議題となり、活発な議論がなされた。
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午後の記念講演会では、はじめに田代和生・慶應義塾大学名誉教授が「江戸の人参ブームと対馬の経営戦略」と題して発表。続いて遠藤靖夫・21世紀の朝鮮通信使友情ウォークの会会長が、自らの団体が主催して隔年開催している「友情ウォーク」の経験から、韓国から日本までの空路やバス、歩きの旅程の中で体験した比較エピソードを紹介。ユーモラスで心温まる話がほとんどだったが、結びに「箱根を超えたあたりからゴールの江戸城までの間には、史跡として通信使にゆかりのあるものはほとんどない」とし、課題を指摘した。そのほか田良島哲・東京文化財研究所客員研究員が「ユネスコの『世界の記憶』について」と題して発表した。中国料理店・東天紅で行われた交流レセプションまで終日、東京での交流大会は盛況だった。
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2日、東京大会のメインイベントとして、上野広小路から上野恩賜公園竹の台広場までを朝鮮通信使の再現行列が練り歩いた。
| | パレードはアメ横商店街連合会や各学校の児童、民団東京各支部や青年会東京本部、(社)在日本韓国人連合会・愛の分かち合い、関東の通信使団体など、それぞれの関係者から構成。120人の規模となった
縁地連主催、台東区・東京日韓協・在日本大韓民国民団東京地方本部(李壽源団長)主管、アメ横商店街連合会(星野勲会長)・上野中央通り商店街(桜井正人会長)・民団台東支部・埼玉コリア21(江藤善章代表)・けやき学園・黒門町会・東京韓国学校(鄭會澤校長)・台東区立黒門小学校(飯塚雅之校長)・台東区立忍丘小学校(松田正昭校長)協賛で執り行われたパレードは、天候にも恵まれ、120人の行列を多くの見物客が見守った。
ゴールとなった竹の台広場で開催していたウエノデ・フードフェスタのステージ上で、江戸城にたどり着いた朝鮮通信使と幕府がかつて行っていた”国書交換の儀”も再現されたほか、忍丘小学校の生徒らによる琴の演奏と、東京韓国学校の初等部生徒らによるサムルノリ演奏が披露された。
台東区を中心に東京で実現した通信使再評価の機運が、更なる広がりを見せていくことを期待する。
国書交換の再現では、正使に扮した李壽源・民団東京団長と野村武治・台東区副区長が「誠信交隣」「文化継承」と記された書筒を交換した
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