ロシアのラブロフ外相は昨年11月、北韓との武器取引で、「ロシアは国連の北韓制裁に違反した」と非難を受けた際、つじつまが合わない発言を行っていた。ロシアは安保理常任理事国として過去に10回以上、北韓制裁決議案に賛成したが、今後はこうしたロシアの外交姿勢が覆される可能性も高まっている。
さらに、今年に入ってジノビエフ駐韓ロシア大使は、あるインタビューの中で、韓国を「非友好国」、北韓を「友好国」と呼んだ。ジノビエフ大使は日本なども意識しながら、韓国にロシアとの関係改善を促す形で、「韓国がロシアの非友好国から友好国に戻る最初の事例になることを希望する」とも述べている。
また、ロシアは韓国の宣教師を国交回復以来、初めて「スパイ容疑」で身柄を拘束するという動きにも出た。
こうした一方、ロシアと北韓は昨年後半から今年2月までの僅か約6カ月の間に、6700個のコンテナで8000発以上の砲弾と物資を交換した事実も公表した。
また、今年2月に韓国の尹錫悦大統領が北韓を批判した直後、ロシア外務省のザハロワ報道官は、「ぞっとする」と尹発言を批判。尹大統領は、「北韓政権は全世界で唯一、核兵器の先制使用を法制化した非理性的な集団である」と批判したのであるが、これに対してロシアは、「明らかに偏向している」と反論した。
これは、ロシアも核兵器による先制攻撃を行う可能性があることを示唆したことにも繋がるとも言えよう。
こうしたことから考えると、ロシアと北韓の軍事協力が更に緊密化すれば、韓半島をより危険な状況に追い込み、その場合には日本も無傷ではいられない状況になるとも言える。
ロシアが国連の北韓制裁パネルを事実上無力化していることにより、ロシアと北韓との関係が更にレベルアップすれば、韓国や日本にとってさらなる脅威が増すことは必然ではないか。
こうした視点からすれば、「日韓の相互協力強化」はロシアと北韓の連携強化を阻止する方向でまずは動くべきであるとの戦略も立てていくべきではないかと筆者は考えている。
韓国国内では、「ロシアと北韓の緊密な関係があからさまになり、状況は根本から変わっている。今後は韓国の対ロシア政策、そしてウクライナに対する武器供給自制の方針を全面的に再検討すべきである」との声も聞かれる一方で、ロシアの韓国大使館に赴任経験のある、いわゆる「モスクワ・スクール」の韓国人外交官OBからは上述した声に対して批判があがっている。
日本も韓国も、今は主権国家としてまず、ロシアや北韓、あるいは米国などの諸外国の政策姿勢や思惑などを考える前に、「自国民の生命と財産を守る為に毅然として、やるべきことをやらねばならぬ時期にある」と言え、それをやらないと、「大国の奴隷として生きるしかない」という国に成り下がってしまうかもしれない。
そうならないための戦略としての日韓関係緊密化という外交姿勢は意義があろう。
日本国内には今、「韓国との連携」を望む声が一時期よりは強まっているように思われるが、日韓が連携するメリットの一つとして考えられることは、日韓政府間相互に信頼関係が構築されていることを前提としたものだ。
「日韓が一枚岩で、ロシアに対しても、北韓に対しても、さらに中国本土や米国に対しても、主権国家として倫理観に基づき、言うべきことを言いつつ自国の主権を守る、国民の生命と財産を守る」ということが重要だと筆者は考えている。
果たして、そこまで日韓関係は真に緊密化できるであろうか。
韓国寄りの姿勢を示している岸田政権に期待したい。
(愛知淑徳大学ビジネス学部ビジネス研究科教授 真田幸光) |