韓日の企業関係者らが経済連携などについて意見交換する「第56回日韓経済人会議」が14、15の両日、都内で開かれ、約220人が参加した。「未来へと続く日韓のパートナーシップ」をテーマに、新産業分野などにおける協力拡大のほか、食や文化も含めた幅広い交流の実現などを盛り込んだ共同声明を採択。来年の第57回同会議は韓国で開催される。
6年ぶり日本開催
同会議は1969年の第1回から一度も中断することなく続いている。コロナ禍でオンライン開催が続いたが、日本で一堂に会するのは6年ぶり。
開会式で、日韓経済協会会長の佐々木幹夫・日本側団長は、「1年前の前回大会から世界は大きく動いた。エネルギー価格上昇で物価高になり、日韓の連携協力が重要度を増している。両国のパートナーシップが続くことは、双方の利益につながる」とあいさつした。韓日経済協会会長の金〓・韓国側団長は「経済人交流を次世代につなぎ、外交関係が二度と揺らぐことがないことを願う。両国の経済協力でシナジー(相乗効果)を生み出して共存共栄し、持続可能な未来をつくる」と宣言した。
尹徳敏駐日特命大使は「昨年から続くシャトル外交によって、両国経済協力は強化されるだろう。相互の投資を積極的に支援したい」と述べた。日韓議員連盟会長の菅義偉前首相は「両国の経済関係の進展は、親善交流増進につながっている。今回も充実した成果を生む会議になることを願う」と期待を込めた。
多様な連携提言
韓日の経済関係者が次々に登壇し発表。ホテルオークラ東京・成瀬正治会長「日韓インバウンドの状況(コロナ禍前後比較)」▽韓国ディスプレイ産業協会・李相晋常務理事「ディスプレイ産業の成長と日韓経済協力の方策」▽中小企業基盤整備機構・金子知裕理事「中小ベンチャー企業支援における日韓協力の可能性」▽産業研究院新産業室・金洋膨専門研究員「半導体のグローバルサプライチェーンの安定化と日韓協力」▽静岡県立大学・小針進教授「日韓協力関係を維持するために」▽亜洲大学校日本政策研究センター長・朴盛彬教授「日韓の水素経済の現状と戦略~日韓協力の提言~」▽博報堂・立谷光太郎顧問「~幅広く多様な交流の実現に向けて~広告会社の事例ご紹介」▽韓国ロボット産業協会・李卿準事務局長「日韓ロボット産業の現状と人材育成における協力の方策」―など多様なテーマで韓日間の経済連携策を提言した。
このうち水素事業をテーマにした朴盛彬教授は「関連特許は日本が世界一の水準。一方、韓国企業は水素事業に関心が高い。カーボンニュートラルに向けた核心的なエネルギー源として両国は水素に注目している。海外調達やグローバル供給網構築のため、協力を強化する必要がある」と提唱した。
閉会式では共同声明を採択。サプライチェーン(供給網)構築のほか、資源開発、半導体、ディスプレイ、デジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーントランスフォーメーション(GX)、水素といった新産業分野における連携・協力の拡大や、スタートアップ・ベンチャー支援などに協力して取り組むことなどを確認した。
共同記者会見で日本側の佐々木団長は「昨年のシャトル外交再開によって、両国関係は大きく前進した。経済、人材、文化交流に今後も積極的に取り組んでいきたい」と語った。韓国側の金団長は「両国の経済人協力をステップアップさせる時期。良好な関係を持続してほしい」と述べた。
在日への影響軽微
同会議に参加した在日韓国人系経済団体の関係者は「半導体やディスプレイ、ロボット、エネルギーなど、韓日で共同して取り組むべき経済問題が幅広くテーマとして設定された有意義な会議だった」と評価している。一方で「両国の大企業中心の経済連携が主な議題であり、中小零細企業経営者が多い在日韓国人にとって直接的なメリットは少ないだろう」としつつも、「連携によって大企業の事業活動が活性化すれば、中小零細企業にも波及効果があるかもしれない」と期待を込めている。
閉会後の共同記者会見に臨む韓国側の金〓団長(左)と日本側の佐々木幹夫団長 |