長く低迷していた韓国経済だが、今年に入り急回復を見せている。今年第1四半期(1~3月)の経済関連データ、決算などが発表されているが、すべて市場予測を上回る。半導体市場の予測より早い回復によりサムスン、SKハイニックスなどの大手企業は好業績を記録し、連動するように国際収支などの経済指標も改善されている。
低迷が続いた韓国の製造業に光が差してきた。2024年第1四半期(1~3月)の決算で韓国経済の基幹産業である半導体大手のサムスン電子とSKハイニックスが好業績を記録した。また大手2社の業績と連動するように第1四半期の経済成長率は市場予測を上回った。半導体市場が予測より早く回復したことで、年間経常収支の黒字目標が上方修正される可能性も出てきた。
サムスン電子が4月30日に発表した第1四半期の売上高は前年同期比13%増の71兆9200億ウォン、営業利益は同約10・3倍の6兆6100億ウォンと大幅な業績改善となった。特に、半導体事業を中心とするDS(Device Solutions)部門は22年第4四半期以来の黒字を計上し、好業績に貢献した。
SKハイニックスは1年半ぶりの赤字脱却を発表した。4月25日に発表した決算によると第1四半期の売上高は12兆4296億ウォンで、営業利益は2兆8860億ウォン、売上高営業利益率は23%を記録した。売上げは四半期単位としては過去最高で、営業利益も第1四半期としては18年同期に続き2番目に高い水準となった。
韓国銀行(中央銀行)が4月25日発表した1~3月期の国内総生産(GDP)は前期比1・3%増と、市場予測の0・6%増を大幅に上回った。前年同期比では3・4%増となった。
9日、韓国銀行が発表した「国際収支(暫定)」によると、3月の経常収支は69億3000万ドルの黒字で黒字の規模も、2月の68億6000万ドルを上回った。輸出額は582億7000万ドルで、昨年同期より3%増加した。品目別では、半導体(34・5%)や情報通信機器(7・9%)の輸出が増えた。
これにより第1四半期(1~3月)の経常収支の黒字規模も168億4000万ドルに達した。今年上半期(1~6月)の黒字の見通しである198億ドルの85%以上となった。
近年、韓国の輸出は半導体産業がけん引してきたが、第1四半期の業績回復を見ると当面は半導体輸出の担う役割が大きいことは明らかだ。
米国半導体工業会(SIA)と米コンサルティング大手のボストン・コンサルティング・グループ(BCG)は8日、半導体サプライチェーン(供給網)に関する報告書を公表した。
それによると32年に世界の半導体生産能力に占める韓国の割合は19%に拡大し、台湾(17%)を抜き、中国(21%)に次いで2位に浮上すると予想した。韓国の生産能力のシェアは22年の17%から32年には2ポイント拡大し、過去最大を記録する見込みだ。
韓国のシェア拡大は、半導体工場の建設に伴う生産能力の大幅増強によるもの。22年と比較した32年の生産能力の増加率は129%まで拡大する見通し。拡大率は米国の203%に次ぐもので、欧州124%、台湾97%、日本86%、中国86%を上回る。
官民一体となって半導体産業への投資を強化していることから、長期的にみると半導体産業の競争力はより高く保つことができる。
半導体市場の回復とともに、注目すべきは輸出先の構造変化だ。
尹政権発足後、急速な中国依存の低下が進んでいる。過去20年間、韓国は対中貿易で黒字を記録し大きな利益を得てきた。昨年12月、韓国の対米輸出が113億ドル、対中輸出が109億ドルで、米国が最大の輸出相手国になった。今年1月に再び中国が米国を抜いたが、2月以降、再び米国が逆転した。生産拠点も中国から米国、ベトナム、インドなどへサプライチェーンの見直しを行っている。
半導体需要が回復し、輸出実績が堅調に推移していくなかで、脱中国のための輸出構造改革、グローバル拠点の再配置などをより進めていくことが課題となっていくだろう。
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