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最終更新日: 2024-07-23 12:58:08
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2024年05月01日 12:39
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ドラマと文学で探る韓国⑪ 都会に潜む悪意の正体① 青嶋昌子
『他人は地獄だ』×『甲乙考試院~滞在記』

 韓国にある考試院と呼ばれる宿泊施設をご存知だろうか。2018年にこの宿泊施設で在韓日本人1人を含む7人が死亡するという火災事故があった。それを記憶している方も多いだろう。考試院というところは、もともと司法試験の受験勉強など、誰にも邪魔されずに集中したい人たちが利用する施設だった。そのため、設備は非常に簡素で部屋も狭いが、その分家賃は安く抑えられていた。それがやがて、地方から出てきたばかりでお金のない若者や、単身貧困層の受け皿となっていった。90年代に韓国に留学した筆者も、住まいの選択肢の一つとして検討したことがある。

今回は、そんな考試院での暮らしを垣間見られる作品を選んでみた。劣悪な環境下、追いつめられると人はどうなっていくのだろうか? 都会にはそんな人々を餌食にする悪意が潜む。その悪意の正体とは?
「とうてい脚を伸ばすことができない空間に机と椅子が置いてある」。パク・ミンギュ著『甲乙考試院~滞在記』の主人公はこう語る。筆者が内見した部屋と同じ作りのようだ。細長い部屋の奥一辺に作りつけの机がぴったりとおさまり、手前に椅子が置いてある。寝る時はその椅子を机に乗せ、入り口から机の下まで部屋いっぱいに布団を広げるのだ。こうすればなんとか脚を伸ばして寝ることができる。広さは畳一畳といったところだろう。窓はないので部屋にいるときは照明をつけなければならない。
小説の舞台は1991年。家賃は9万ウォンで、おかずはないものの、ご飯は炊飯器にあるものをいつでも食べていいという。だが、そのご飯は明らかに炊いてから日にちが経っているように見える。「こんなところで暮らせるのか?」と友だちがささやく。それでも金がなく、切羽詰まった主人公に選択の余地はない。こうして考試院に入居した主人公は初日から、考試院特有の試練を経験する。それが「室内静粛」だ。薄っぺらな壁の考試院では、隣の音が筒抜けなのだ。「静かにしろ」。隣の部屋の男はたった一言そう吐き出した。

ドラマ『他人は地獄だ』の主人公・ジョンウは小説家を目指しているがなかなか芽が出ず、ひとまず起業した先輩のもとで働こうと、ソウルに出てきた青年だ。安定した収入が得られるまでのつもりで、古びた考試院に入居する。
おせっかいで無遠慮な大家をはじめとして、住人たちは皆見るからに怪しげで、いかにも何か不吉なことが起こりそうな雰囲気だ。とはいえ、ベッドと机が備え付けられたその部屋は考試院にしては結構な広さで、4畳にも満たない下宿で暮らした筆者からすれば、部屋自体は十分快適そうだ。
だがジョンウの悲劇はここからだ。純粋で善良なはずの人間が、周囲の環境やそれと気づかない悪意によって、やがて不気味に変化していくのである。お金もなく、頼れるはずの先輩や恋人からも突き放されたら、人間はどうなるだろうか? その上、そんな孤独に付け入るようにすり寄ってくる人間がいるとしたら? まるでここはそんな実験の場のようでもある。
考試院という慣れない暮らしの中で、主人公たちは次第に追い詰められていく。次回はそんな彼らがどのように変化していくか、たった一人、都会で生き抜くことの苦難や不条理について触れようと思う。

2405-01-06 6面
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