韓国は2025年に超高齢社会(人口の5分の1が65歳以上)に突入する。しかし、高齢者向け施設の普及は停滞しているのが現状だ。特に、たびたび日本と比較されるのがシニア向け住宅の普及率だ。韓国におけるシニア向け住宅の数は、22年現在で39カ所、8840世帯に過ぎない。日本は1万6724カ所、入居者数は63万人を超えているため、比較対象にすらならない状況だ。
韓国のシニア向け住宅は、分譲型と賃貸型の2種類があるが、分譲型は15年から販売が禁止されている。分譲型は、購入後に利益を得て転売するという事例が頻発し、政府により禁止措置が下された。
そのため、韓国におけるシニア向け住宅は総じて賃貸型を指す。食事代を含む月々の生活費が150万ウォン以下という低価格帯の住宅から、200~250万ウォンの中価格帯、500万ウォン以上の高価格帯まで様々だ。低価格帯の住宅は宗教団体が、高価格帯は大企業が運営するケースが多い。施設やサービスは高価格帯であるほど充実している半面、コストの高さが参入の障壁となっている。
それでも、首都圏の高価格帯シニア向け住宅は人気を博している。ソウル市広津区の某高齢者向け住宅は保証金10億ウォン、月額利用料500万ウォンに達するが、入居には2年6カ月も待たなければならない。大学病院と連携した医療支援や、さまざまなレクリエーションなど、質の高いサービスが口コミで広まり、希望者が殺到している状況だ。
最近では新韓金融とKB金融もソウル市恩平区に土地を購入し、高価格帯シニア向け住宅の建設に乗り出した。金融各社がこぞってシニア向け住宅を建設する背景には、高齢化社会に備えた事業の先取りという側面に加え、顧客確保の優位性を獲得するねらいがあるからだ。社会貢献と収益性を兼ね備えた事業であるという点も、企業にとっては魅力だ。
一方で、政府は禁止していた分譲型シニア向け住宅の取り扱いを再開させる。増え続ける需要に対し供給が不足している現実を打破するためだ。シニア向け住宅は、自己所有の不動産数としてカウントしないなど税制上の優遇措置も整える方針だ。
(ソウル=李民晧)
ソウル瑞草区にあるKB金融グループ系列のシニア住宅 |