与党「国民の力」は、今月10日に行われた第22代総選挙の小選挙区で、得票数では共に民主党より5・4%少なかった。小差にもかかわらず、議席数は共に民主党(171議席)より71議席も少ない90議席という結果に至った。競合選挙区の投票結果を見ると、韓国政治の地殻が保守右派から進歩左派の方へと変動していることが分かる。3連続で敗北した保守政党は今後も不利な環境で選挙を行うことになると見られる。
(ソウル=李民晧)
5%の得票差で71議席減
「得票数の差は5%、議席数の差は71議席」
わずか5%の差が、両党の選挙区議席数161対90という結果をもたらしたのだ。これは、現行の小選挙区制が「勝者総取り型」だからだ。1票でも多く得票した方が議席を獲得するが、残りの票はすべて無効になるというシステムである。
中央選挙管理委員会の統計によると、全国254選挙区の総投票数は2923万4129票。このうち、共に民主党と国民の力の得票数はそれぞれ1475万8083票(50・5%)、1317万9769票(45・1%)だった。
得票率と議席数の乖離については、今回の総選挙で最大の勝負どころとされたソウルと忠清地域に当てはめてみるとより実感する。ソウルにおける両党の得票差は5・9%だ。しかし、全48議席のうち37議席を共に民主党が占めた。忠清圏(大田・世宗・忠南・忠北)ではさらに深刻だ。共に民主党は国民の力よりわずか4・3%多いだけで、全28議席のうち21議席を獲得した。わずかな得票差でゼロか100かの結果を生むのが、現在の国会議員選挙のシステムだ。
数百票の明暗…超接戦の激戦地
そのため、数百票の差で当落が決まる選挙区が続出した。全国で最も得票差の小さい選挙区は慶尚南道昌原市鎮海区だ。国民の力の候補が共に民主党の候補に497票差で勝利した。蔚山市東区(568票差、共に民主党)、釜山市沙下区甲(693票差、共に民主党)、昌原市城山区(982票差、共に民主党)、京畿道河南甲(1199票、共に民主党)なども激戦が展開された。今回の総選挙では、超接戦地域に限らず、世論調査で誤差の範囲内と判断される4~5%の差で共に民主党の候補が勝利した地域が多かった。
京畿道水原地域は、無効票が候補者間の票差を上回る希有なケースだった。無効票は4696票で、共に民主党のキム・ジュンヒョク候補と国民の力のイ・スジョン候補の得票差である2377票より多かった。両候補間の差は1・73%で接戦の様相を呈していた。無効票が多数となった原因は「梨花女子大生による米軍への性上納」「朴正煕元大統領の日本軍慰安婦性交渉説」といったキム候補の発言が公開されたことで、共に民主党の支持者が支持を撤回したものと見られている。これは、無効票を行使した人の多くが決して保守右派にはくら替えしない、という意思を示したことになる。もし無効票を投じた者のうち半数が国民の力の候補に投票する「報復投票」を行っていたら、結果は変わっていたはずだ。
左派に傾いた政治の構図
国民の力は、2020年の第21代総選挙でも似たような苦境に立たされた。当時、共に民主党と未来統合党(現・国民の力)の得票差は8・4%だったが、議席数は163対84でほぼ2倍の開きがあった。
国民の力は前回より3%も差を縮めたことで、次こそ勝てるという希望を抱くかもしれない。しかし、政治を巡る現在の世論をうかがうかぎり、今後も構図が変化することはあまり見込めないようだ。2010年以降に行われた各種選挙の投票傾向を見ると、僅差ではあるものの、進歩左派が引き続き優勢であると見られる。特に、選挙区議員を選ぶ総選挙の構図は、左派支持者の動きがはるかに強く働く。
かつては、韓国の有権者の政治性向は保守右派が進歩左派よりも多いというのが定説だったが、現在は逆転した。今回の総選挙で明らかになった5%の票差は一見して小さく感じるかもしれないが、実際は決して小さいものではないのかもしれない。
盧武鉉を支持した第2次ベビーブーマー世代
分かりやすい例として、韓国の出生年度別で最も人口数が多い世代は第2次ベビーブーマー世代(1968~74年生、49~55歳)だ。この世代の票田は進歩左派の支持に固着している。全有権者のうち、15%を占める第2次ベビーブーマーは80年代の親北主体思想派(主思派)の活動とも一線を引いている。90年代に大学キャンパスを駆け巡り、2002年、盧武鉉の大統領出馬時には熱心にノサモ(盧武鉉を愛する会)活動をした世代だ。
出生年度別の生存者数は平均88万人で、第1次ベビーブーマー世代(1955~63年生、60~68歳)の80万人よりも多い。さらに、年齢が50代に入ったという点で、彼らに政治的傾向を変えることを期待するのは難しいだろう。第2次ベビーブーマーよりも若い40代の左派支持傾向は、彼らよりもさらに強い。
韓国の選挙を取り巻く状況を競技場に例えるなら、「左傾したグラウンド」という表現が相応しい。変動した政治の地殻を受容し、そうした認識をベースに選挙戦略を立てることが先決ではないだろうか。
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10日、中央選挙管理委員会の22代総選挙選挙状況室
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