在日本大韓体育会は2日、都内で創立70周年記念式典を開いた。韓日の関係者ら250人が列席し、スポーツを通じた韓日交流や在日同胞アスリートの発掘・育成など、長年の足跡を振り返った。今年7月に開幕するパリ五輪に、在日韓国人3世の女子柔道選手2人が韓国代表として出場。男女通じて初となる金メダル獲得への期待が高まっている。
長年の貢献を回顧
主催者を代表して崔相英会長は記念辞で、同会の前身となる在日朝鮮体育協会が1948年ロンドン五輪に出場する韓国選手団に募金と運動器具を寄贈したことに始まる祖国への尽力のほか、88年に開催されたソウル五輪に際しては100億円の募金を集めるなど、韓日間でのスポーツを通じた交流への貢献などを回顧し、「不屈の精神と支援で同胞が運営してきた。今後もスポーツを通じて韓日交流を進めていく。70年の伝統を基に、新しい歴史をつくっていくことを約束する」とあいさつした。
来賓の尹徳敏特命全権大使は「スポーツ交流を通じて韓日の相互理解を広げ、民間外交としての重要な役割を果たしてきた。今後も友好協力強化に一層貢献してほしい」と称えた。
民団中央の金利中団長は「民団としても在日同胞のため支援していく。今後もますます発展してほしい」と述べた。
関係者への表彰も
関係者への表彰も行われた。在日本大韓体育会に文化体育観光部長官表彰状が授与された。他に、在日本大韓水泳連盟、在日本大韓柔道会、在日本大韓テコンドー協会には、大韓体育会会長感謝牌が贈られた。ヤングスチール、新韓金融グループ、あすか信用組合には、国民体育振興公団感謝牌が、慶尚南道知事には在日本大韓体育会感謝牌が、それぞれ贈られた。
パリ五輪に出場する在日同胞選手2人のうちの1人である女子柔道57キロ級の許海実選手が登壇。崔会長から激励金として1000万ウォン(約110万円)を選手代表として受け取った。同五輪に出場するもう1人の代表は女子柔道63キロ級の金知秀選手。
京都国際高校野球部にも200万円が贈与され、李隆男理事長が「応援してもらえていることを選手に伝えたい」と喜びを語った。
祖母の遺志実現
パリ五輪代表となった許選手は東京都江戸川区出身で、早稲田大学スポーツ科学部3年生の21歳。亡き祖母の「韓国代表として五輪に出場してほしい」という生前の願いをかなえた。
高校1年時の2018年に、在日本大韓体育会の薦めで韓国国体ソウル大会に初出場し、圧倒的な強さで優勝した。22年には慶尚北道体育会に所属。以降、快進撃が続く。
22年にグランドスラム・トビリシ、グランドスラム・アブダビ、23年にはグランプリ・ポルトガル、ワールドユニバーシティ、オセアニアオープン・パースと、国際大会で次々と優勝を飾り、一躍世界に名を轟かせた。今年に入ってもグランプリ・ポルトガルで昨年に続き連覇を果たす。
韓国女子柔道は1996年のアトランタ五輪以来、30年近く金メダル獲得がなく、長期低迷期とされている。そこに彗星のごとく現れた許選手に韓国柔道界でも注目が高まり、「男女を合わせて最も金メダルに近い選手」と大きな期待を寄せている。
独立運動家の家系
実は、許選手は独立運動家・許碩氏の子孫でもある。1918年に慶尚北道で反日檄文を配布した罪で逮捕、投獄されたこともある。91年には建国勲章「愛国章」が追贈された。
許選手は式典で、「同胞として金メダルを獲って帰ってくる」と力強く誓っている。金メダル獲得となれば、男女通じて在日韓国人史上初の五輪金メダリストとなる。
柔道女子57キロ級決勝は日本時間で7月29日深夜の予定。
■在日本大韓体育会 1947年4月在日朝鮮体育協会設立▽48年6月ロンドン五輪・韓国選手団に募金と運動器具を寄贈▽52年6月ヘルシンキ五輪出場選手団に、在日後援会が賛助金1000万円と競技器具などを寄贈。同12月在日朝鮮体育協会を発展的に解消し、在日本大韓体育会設立に向けた発起人会を結成▽53年5月5日在日本大韓体育会設立。同10月韓国国体に在日同胞選手団を初派遣▽56年7月大韓体育会が在日本大韓体育会を日本支部に正式認定。同8月在日僑胞学生野球団を結成し、韓国訪問野球団を初派遣▽59年8月15日第1回在日韓国人体育大会開催▽64年4月東京五輪在日韓国人後援会発足。同10月東京五輪開幕。金義泰が韓国柔道初となる銅メダル獲得▽72年8月ミュンヘン五輪で柔道の呉勝立が銀メダル▽76年7月モントリオール五輪で柔道の朴英哲が銅メダル▽82年6月ソウル五輪・在日韓国人後援会結成▽88年9月17日ソウル五輪開幕。在日4選手が韓国代表で出場▽2018年1月平昌五輪組織委員会へ2億円を寄贈▽21年7月東京五輪の韓国選手団副団長に在日同胞の崔潤氏。柔道男子73キロ級で安昌林が銅メダル
|