日銀が3月19日の金融政策決定会合で、マイナス金利の解除を決めた。日銀の利上げは2007年2月以来、約17年ぶり。黒田東彦前総裁が導入した「異次元の金融緩和」を転換し、金融政策の正常化に向けた一歩を踏み出した。今後、在日韓国人信用組合でも、預金や事業者向け融資の金利など、多方面への影響が予想される。
横浜幸銀信用組合は、メールオーダーの「つばさ定期預金」を現在、1年もの年利0・6%のキャンペーン金利として設定。「順調に増加している」という。
4月からは新商品の「のぞみ定期預金」を投入。1年もの年利0・7%の業界最高水準の魅力で、広報宣伝にも力を入れるため「大きな反響があると予想している」と期待を込めている。
事業者向け融資への影響については、「当組合融資先への利上げは行っていないので影響はない」としているが、今後については「変動金利の利上げが予想されることから、注視していく」と一部融資先への利上げの可能性をほのめかしている。
年初から急上昇してバブル期を超える4万円を突破した日経平均株価については「融資先は中小事業者がほとんどを占めていることから、恩恵を受けるにはある程度の期間が必要だと考える」と慎重な見方を示しているが、「今後も株価が上昇し好循環となれば、中小事業者の業績にも好影響があるだろう」と見込んでいる。
不動産は好調
融資先事業者の業績については「不動産業は好調だが、人件費や原材料費の高騰によって、一部のサービス業では懸念がある」とみている。
同組合の業績への影響を「預金商品全体の利率が引き上げられることから、預金利息負担が増えるのではないか」と懸念するが、「コロナ禍からの回復・活性化に伴う融資先の拡大による利益増加によって、業績は維持できるだろう」と楽観視している。
信用組合愛知商銀は2月1日から3月29日まで、1年もの年利0・5%の「なのはな定期預金」を販売。「想定通りの預け入れがあった」というが、「既存の定期預金の解約が続き、資金量は微増に留まっている」としている。要因については「新NISA(少額投資非課税制度)への投資や、より高金利の他社商品への預け入れなどがあるようだ」としている。今年中に同組合設立70周年記念定期預金の発売を予定。発売時期や内容は未定だが、「70周年に合わせた商品になるだろう」と年利0・7%を示唆している。
事業者向け融資については「金利が上昇局面にあるため、変動金利型融資の金利も併せて上がっている。この状況が続けば、債務者の負担も重くなる」と案じている。
経営破綻を憂慮
日経平均株価が上昇しているが「事業者の足元は良好であるとはいえない」と危惧している。とくに新型コロナ対策として企業の資金繰りを支援した無担保・無利子のゼロゼロ融資について「元金返済のピークが今月到来するとされている。事業者の倒産件数も増加傾向にあり、当組合でも不良債権が微増している」と現状を語る。先行きを「今後の金利上昇に伴い、経営破綻する事業者が増えるかもしれない」と憂慮している。
融資先事業者の業績については「インフレによる物価高の影響を受けやすい飲食・小売業、円安による資材高騰が直撃した建設業界は不調だ。当組合の取引先は中小零細企業がほとんどで、現在の金利上昇局面では好調とは言い難い」と株価はバブル期を超えたが、事業者まで恩恵は行き届いていないようだ。
また、同組合の業績への影響を「貸出金利の上昇により、収益の拡大が見込まれる」と予測している。
在日韓国人信用組合が加盟する韓信協は「預金金利が上がっても、事業者向け貸付金利を急に上げることはできないだろう。ゼロゼロ融資返済も今月からの集中が予想されるので、楽観はできない」として慎重な見方を示している。 |