尹錫悦政権発足後、脱中国路線を明確に打ち出した韓国だが、昨年度の貿易収支は悪化、通年で100億ドル以上の赤字となることが決定的となった。対中貿易で180億ドル以上のマイナスを計上したことが大きく影響した。一方で昨年12月、対米輸出が初めて110億ドルを超え、対中輸出を20年6カ月ぶりに上回るなど、貿易の多角化に向けて成果が見え始めてきた。
産業通商資源部が1日発表した「12月および2023年間輸出入動向」によると、昨年12月の対米輸出額は前年同月比20・8%増の112億9000万ドルと5カ月連続で増加し、110億ドルを初めて突破した。対米輸出が対中輸出を上回ったのは03年6月以降、20年6カ月ぶり。
一方、対中輸出額は108億7000万ドルで、前年比2・9%減少した。昨年7月以降は中国向けの半導体の輸出が小幅増加したことから5カ月連続で輸出額が100億ドルを超えたが、通年では180億ドル以上の赤字となることが決定的となった。中国との貿易収支で赤字となるのは1992年の韓中国交正常化以来31年ぶりのことになる。
米国向け輸出は自動車や一般機械などがけん引、中国向け輸出は半導体の輸出減が影響した。
昨年の韓国の貿易赤字額は100億ドルを超えることが確実視されている。韓国経済は輸出によって成り立っている。そのためグローバル経済の影響を直接受けるのが韓国経済の特徴ともいえる。昨年は世界経済が鈍化、なかでも近年、韓国経済をけん引してきたメモリー半導体のマーケット縮小により輸出業績が悪化した。
特に中国向けの輸出実績はマイナスが180億ドルにまで拡大した。年間貿易赤字額は100億ドルなので、例年通り対中輸出がプラスであったならば、貿易収支は黒字を計上したはずだ。
これまで韓国経済はいかに対中貿易で黒字を増やしていくかが重要であった。だが、今後は赤字を抑制していくことが課題となりそうだ。以前のように韓国製品が中国で売れれば問題ないが、今は市場で需要がなくなってきているのが現実だ。輸出が縮小する半面、半導体やEVバッテリーの素材は中国からの輸入なしでは成り立たない。
現代自動車は最盛期には中国市場で100万台以上を販売しシェア7%を占めたが、現在は1%ほどにまで落ち込んでいる。サムスンのスマートフォンも一時、20%を記録し1位となったが現在は0%台にまで縮小した。服飾や化粧品も同様で近年、中国市場から撤退した企業も多い。
逆に尿素、グラファイト(黒鉛)などの素材に対して中国が輸出規制を敷くと、供給網が即時、混乱するという現象がたびたび起こっている。
中国経済の減速にも注意しなければならない。一昨年から不動産バブル崩壊の兆しを見せており、内需も大きく停滞している。
韓国産業研究院(KIET)と大韓商工会議所北京事務所、中国韓国商会が17日に発表した「中国進出韓国企業の景気実態調査2023年第4四半期(10~12月)の現況と、2024年第1四半期(1~3月)の展望」によると、第4四半期の景況感BSI(Business Survey Index)は84(100を基準として100以上はプラス評価、100以下はマイナス評価)だった。経営上の問題点については、「現地需要の不振」と回答した企業が35・0%と最も多く、「輸出の不振」(16・6%)、「競争の激化」(16・1%)、「人材難/人件費上昇」(8・8%)が続いた。
尹錫悦政権発足後、脱中国路線を明確に打ち出し、尹大統領自身も米国、中東、東欧、ASEANと積極的に経済外交を展開してきた。
特に中東では昨年6月、現代建設がサウジアラビアからアミラル石油化学プラントを受注、同10月には現代建設が現代エンジニアリングと共にサウジでアラムコのジャフラ・ガス処理施設プロジェクトの第2段階の契約を結ぶなど成果が見え始めている。今回の対米輸出の拡大とともに今後、中東でのビジネスをどう展開していくかも注目される。
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