大邱と光州を結ぶ「タルビッ(月光)高速鉄道」特別法が25日、国会本会議で可決された。これに対して政治的思惑を優先し、現実を無視した悪法だとの批判の声があがっている。当該区間における高速道路の利用率は全国平均の40%程度にすぎない。事業費は最低でも6兆ウォン、最大11兆ウォンに達するものと見込まれており、公費の無駄遣いであることは明らかだ。
(ソウル=李民晧)
本法案は、議員297人のうち261人が発議し可決された。これは韓国の憲政史上最多。この日の審議では216人の議員が出席し、211人が賛成した。反対は1人で4人が棄権した。
党派を超え、圧倒的な支持を得て可決されたのが「タルビッ(月光)高速鉄道特別法」だ。タルビッとは、大邱の旧地名「タルグボル」と光州の旧地名「ビッコウル」の頭文字を組み合わせたもの。特別法の名にふさわしく、鉄道の建設には様々な特典が付与される。最大のメリットは、経済性を評価するための妥当性調査が免除される点だ。鉄道建設をはじめとする大規模な社会基盤事業である「SOC」では、最低でも2回の妥当性調査を実施しなければならない。着工前の調査に続き、予備妥当性調査を経て建設の可否が判断される。その期間だけでも3年から4年を要する上、経済性が見込めないとの判断が下れば事業は頓挫することになる。タルビッ高速鉄道建設事業の弱点は「経済性」なのだ。
当該区間の高速道路はガラガラ
タルビッ鉄道の建設事業は、効率性と緊急性においても他地域の鉄道より優先順位が劣る。2021年に韓国交通研究院が発表した「第4次国家鉄道ネットワーク」推進案にも盛り込まれていない事業だ。鉄道SOC事業を展開するにあたり、この推進案に含まれていないというのは「需要がない事業」であることを意味する。
しかし、当該自治体の大邱市と光州市が「2038年アジア大会」の共同誘致を名目として政治的に計画を推し進めた結果、最終的に国家事業としてカウントされることになった。洪準杓大邱市長と姜琪正光州市長は最近、「単線・一般鉄道」ではなく、11兆3000億ウォンの予算をかけた「複線・高速鉄道」に計画を変更すべく国会でロビー活動を行った。
しかし、両氏の主張はまるで理にかなわないものだ。高速鉄道の大邱~光州間の運行時間は84分だが、同区間における一般鉄道の運行時間は86分だ。わずか2分の差であるという事実が判明したことで「高速鉄道」と「複線化」は除外された。
タルビッ鉄道事業の妥当性がないことは、客観的なデータからも確認することができる。大邱~光州高速道路の1日の通行量(2万2322台)は全国の高速道路平均(5万2116台)の42・8%であり、そもそも利用者が少ない。これほど交通需要がない閑散とした区間に、今度は鉄道を敷設するというのだ。
法と原理原則を破った悪しき前例
国家財政法では、総事業費500億ウォン(国費300億ウォン)以上の新規事業には予備妥当性調査の実施を義務づけている。現在、第4次国家鉄道ネットワークで検討されている44の新規事業も、事前の妥当性調査と予備妥当性調査を実施しながら進められている。当然、経済性が低いという理由でとん挫する事業も出てくるだろう。
こうした法と原理原則があるにもかかわらず、「タルビッ高速鉄道」は妥当性調査が免除され、今後も滞りなく推進される可能性が高い。唯一、幸いなのは当初計画していた11兆3000億ウォンの高速鉄道から「一般鉄道」へと変わり、6兆~8兆7100億ウォン(複線推進時)へと予算が削減されたことだ。
タルビッ鉄道は、大邱(西大邱)、慶尚北道(高靈)、慶尚南道(合川・巨昌・咸陽)、全羅北道(長壽・南原・順昌)、全羅南道(潭陽)、光州(松亭)など六つの広域自治体と10の基礎自治体を経由する。このうち、ターミナル駅は大邱と光州の2駅だけだ。政界周辺では国土バランスの向上、霊南と湖南の和合などと称賛する声が上がっている。しかし、経済性の低い計画に莫大な国家予算を投入することは果たして正しいのか、との議論は聞こえてこない。タルビッ鉄道は全198・8キロメートルで、30年の完成を目標としている。
| | 25日、ソウルの国会で開かれた本会議。タルビッ(月光)高速鉄道特別法案が圧倒的な支持で可決された
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