医師会からも疑問の声
洪準杓大邱市長は5日、李在明代表の搬送にドクターヘリを使用したことに対して擁護するスタンスを示した。発言の要旨は「第1野党の代表は国の要人として序列上8位に当たる。そのような人物が襲撃されたのだから、ドクターヘリで搬送されるのは当然だ」というものだ。
これに対し、金㳘珠・元国民の力副代弁人は「極めて旧態依然の考え方であり、封建的な思想に起因した発言だ」と反論した。
医療の現場からも「特権である」との意見が大勢を占めている。イム・ヒョンテク大韓小児青少年医師会会長は、民主党幹部らを「救急医療に関する法律違反」でソウル中央地検に告発した。平沢市医師会のビョン・ソンユン会長も李代表のヘリ搬送について「特権意識が習慣化された政治家による診療ファスト・トラックであり、手術の横取り」と非難した。
李在明代表は2日、釜山を訪問中に67歳の男に刃物で襲撃され、釜山大学病院に搬送された。しかし現地での治療を拒否し、ドクターヘリでソウル大学病院に移送された。この判断は本人と家族によるものとされているが、通常は救急患者が使用するドクターヘリで、2時間を要するソウルまで搬送する必要があったのかという論争を巻き起こした。
李代表は実際、「緊急出動待機状態」にあるはずの消防ヘリコプターを動員した。ソウル大学病院でも、他の救急患者を差し置いて優先的に手術を受けたことも判明した。朝鮮時代の身分としては最高位の王家や両班家と同様の待遇が、2024年の現代でも行われたという事実に対し、医師らが批判を展開しているものだ。
選挙公約との矛盾を指摘
李代表がソウル大学病院を入院先として選んだ理由は「家族がいる場所で手術と治療を受けたい」というものだった。この理由に対し、同氏の居住地である城南市医師会からも批判の声が上がっている。
「故郷の病院というなら、ヘリポートを備えた城南市医療院への搬送を求めるべきだ。大統領選挙で公約に掲げた、全国に70の公立病院を建てるという発言を思うと失笑を禁じ得ない」(城南市医師会)。
李代表は大統領選挙の立候補者だった当時、ソウルとの医療格差解消策として、各地方に公立病院を建てると公約に掲げていた。また、釜山市民も憤慨している。韓国有数の救急対応病院である釜山大学病院に外科医が待機していたにもかかわらず、スルーされてしまったからだ。
民主党の弁明も民衆の怒りを買った。「李在明代表が生死をさまようほどの危機的な状況にあったのに、そういう患者を告発するとは言語道断だ」(カン・ソンピル民主党コミュニケーション委員会副委員長)という主張は、「それほど長時間に及ぶ手術が必要なら、(襲撃時から)4時間半もかけてヘリコプターに乗る必要があったのか」との反論を招いた。洪準杓大邱市長の序列論は救急医療体制の基準に反しており、民主党の対応も医療の常識にそぐわないものだ。
警察は9日、「李在明襲撃犯」の党籍と身元情報を公開しないことを明らかにした。犯人は忠清南道の牙山で不動産仲介業を営む元公務員だ。前科はなく、何らかの団体や人物に犯行を指示された形跡も見られないという。
| | ソウル市龍山区のヘリポートからソウル大学病院に搬送される李在明・共に民主党代表 |