昨年は各国でコロナによる移動規制が解除された。韓日では首脳間のシャトル外交が再開したこともあり、官民一体で関係改善が進んだ。韓日両国は深刻化する少子高齢化による人口減少、首都圏の一極集中など、共通の社会的課題を抱えている。さまざまな苦境に対し手を携え協力するための土台として、友好・姉妹都市の提携に基づいた地域間交流のもつ意義は大きい。なかには50年の実績を持つ交流も続いている。今回は、今年アニバーサリーを迎える友好・姉妹都市の提携の背景や交流の現場を取材、課題や論点について考える。
共通の社会的課題に向けて連携
韓日都市の姉妹(友好)提携情報を開示している一般社団法人「自治体国際化協会」(CLAIR)のデータによると、これまで30年以上にわたる交流を続け、2024年にアニバーサリーを迎える韓日の都市提携は9件を数える。そのうち、韓国の道と日本の県で交わされた提携が一つで、残りは市・郡・町・面の提携だ。
江原特別自治道と鳥取県が友好30周年
昨年7月、鳥取県の平井知事(左)が訪韓し江原特別自治道の金知事と新たな友好提携を締結(鳥取県提供)
江原道(当時)と鳥取県は1994年11月に「友好提携に関する協定書」に署名した。これまで30年間にわたり青少年・文化・芸術・スポーツ・経済・観光・環境などの幅広い分野で交流を重ねてきた。2005年3月から07年11月までの行政交流の中断などはあったが、18年2~3月に開催した「平昌冬季オリンピック・パラリンピック」には当時の崔文洵・江原道知事の招待で平井伸治・鳥取県知事が訪韓し、開会式などに出席した。
コロナ後の昨年6月、江原道が特別自治道になったことを受けて翌月に訪韓した平井知事は、金鎭台・江原特別自治道知事と新たな友好提携を締結し、韓日の自治体間交流のモデルを示した。
具体的な内容については、昨年11月に山梨県で開催した「第7回日韓知事会議」での金知事の発言から明らかにできる。同会議は(1)少子高齢化(2)地方創生(3)韓日の自治体間の協力がテーマであった。昨今の韓日に共通する課題であることはいうまでもない。
金知事は会議の中で、仕事をしながら休暇も取れる「ワーケーション」(ワークとバケーションを合わせた造語で、リモートワークを非首都圏で行い、労働と行楽を両立する試み)の導入で友好提携を積極活用し、地方の均衡的発展を鳥取県と協力して実現していくとした。30年にわたる交流の実績がある点も強調した。
二つの戦争が進行中の世界情勢の中で、何十年もの交流実績が持つ平和の価値は貴重だ。また、韓日では深刻な少子高齢化や、首都圏に一極集中する若年層の勤務形態、人口減少の問題など、共通の社会的課題が多い。そうした現状の打開を姉妹(友好)提携の活性化によって図ろうと提言した江原特別自治道と鳥取県の試みの持つ意義は大きい。一方で、姉妹(友好)提携の活用という点については、韓日各都市での交流の実態に基づき、同じように取り組める地域と、支援や広報活動をより必要としている地域があるという現状の把握に努めるべきだろう。
安東市と寒河江市豊かな風土50周年
昨年行われた「安東国際タルチュムフェスティバル」の会場風景(慶尚北道東京事務所提供)
韓国と日本の約170を数える姉妹(友好)提携の中で、5番目の古参に当たる慶尚北道安東市と山形県寒河江市の姉妹都市提携は1974年2月に締結した。当時の韓国領事が両市の気候が似ていることを理由に「安東市でもさくらんぼの栽培ができないだろうか」と要望したことを契機に提携に至った。
姉妹(友好)提携が結ばれた都市同士では、風土や文化の特性が共通していることが多い。
例年、行われている「安東国際タルチュムフェスティバル(仮面舞踊祭)」は今年も9月27日から10月6日に開かれる予定で、例年100万人を超える観光客が世界中から集まるという。
歴史・文化的にも、安東市は1000ウォン紙幣に描かれた儒学者・李退渓が晩年を過ごし、講学活動を行った陶山書院やソンビ村などがあり、伝統を重んじる風土が古来から醸成された地域といえる。
日本随一の生産量を誇る山形県のさくらんぼや、慶尚北道の伝統文化を重視する地域特性への関心から姉妹都市提携が、今から約50年前に結ばれた。
一方で、両都市の農業協同組合が直接の事業相談を行ったり、首長同士の相互訪問が図られた点を除くと、交流の幅はやや限られている。無理のない範囲での協力関係が今日まで持続し、50周年を迎えたという見方もできる。
韓日自治体が姉妹(友好)提携を結ぶに至る経緯には、概ね次の2通りが考えられる。
(1)行政が先鞭をつけて民間交流に拡大する場合(2)民間の積み重ねを受けて行政交流に発展する場合。
今年40周年を迎える慶尚北道永川市と青森県黒石市、全羅南道木浦市と大分県別府市の姉妹都市提携は、いずれも後者に該当する。
永川市と黒石市青少年交流40周年
ホームステイなどの青少年交流や、市職員同士の相互派遣、祝賀行事への参加などこれまで多くの実績がある永川市と黒石市の交流では、両市の剣道協会を通じて大会への相互参加の実績がある点などの特色が注目される。
ただ、両市の交流がコロナの少し前の2017年を境に中断した状態にあることを日本側の市職員が明かしている。文在寅政権の発足を契機とした政治的な影響を受けて、それまで持続していた地道な韓日各地の地域交流さえ介入を受けたという現実に思いを馳せる必要があるだろう。
木浦市と別府市スポーツ事業40周年
木浦市と別府市の姉妹都市提携の事情は、永川市と黒石市の状況とよく似ている。提携の当時、米国が主導するボランティア組織「ライオンズクラブ」の活動を通じて親善交流へと発展したという共通点があり、民間主導の地道な草の根交流をコロナ前までは維持してきた事情も重なっている。
かつて「別府湯けむり健康マラソン」には姉妹都市提携を結ぶ木浦市から韓国選手団の参加が例年行われていたが、第30回の17年10月を最後に参加が見送られている(同マラソン大会自体、19年は開催が見送られるなどの休止があった。22年から再開したが、韓国選手団の参加はかなわなかった)。
昨年「4年ぶり」を謳う多くのイベントが韓日の各地で再開できた一方で、いまだ交流復活が見えない地域も多くあるということだ。
交流の時期が長いほど、また行事への参加などが積極的に行われているほど、資金繰りや人材確保の面で支援が必要になってくるのは当然だ。姉妹(友好)都市提携はあくまで土台であり、その時々の政治状況や疫病の流行など、条件の如何によって交流を持続できなくなる事態が発生しているというのが現実だ。
慶尚北道永川市には風光明媚な自然や荘厳な仏閣が並ぶ。写真は銀海寺(吉村剛史さん提供)
2016年に行われた「別府湯けむり健康マラソン」に参加した韓国選手団の集合写真(別府市役所提供) |