韓国で最も高い建物を建てた人物は、母国投資家としても知られるロッテグループの創業者で在日1世の辛格浩(1921~2020)氏だ。ソウル市松坡区のロッテワールドタワー5階、「象殿辛格浩メモリアルホール」を訪ねた。(ソウル=李民晧)
ホール入口に記された「夢、そして挑戦」という文字が目を引く。辛格浩氏は「大きな家」という意味を持つ自身の号「象殿」に相応しく、まるで物語にでも登場するかのような巨大なビルを建てた。それこそがまさに、ソウルの南山よりも高い555メートルに及ぶソウルのランドマーク「ロッテワールドタワー」だ。ロッテ側の配慮により建物の外階段で127階まで上がると、まさに首都が一望できる大パノラマが広がっていた。
「企業報国」と「観光報国」。新韓銀行が「金融報国」を旗印に掲げたのと同様、ロッテも「国の発展に貢献し、母国に恩返しする」との意を込めてロッテという企業を築き上げた。1967年に製菓業を始め、やがて化学、小売り、ホテル、建設など系列会社だけで200社を数える大企業へと発展させたのが辛格浩氏だ。
メモリアルホールが建てられたのは、創業者のそうした「チャレンジ・スピリット」をグループが継承するためだった。ロッテタワー1階には胸像が据えられているほか、5階では680平方メートルのスペースに辛格浩氏が築いたロッテの歴史について、各種メディア資料と記録で紹介している。
若者も気軽に見ることができるように、氏の一代記を写真で示し、母国投資初期の執務室の様子も再現されている。「外見よりも中身を重視する」という意味を持つ「去華就実」や、故郷・蔚山の農村風景が描かれた絵からは氏の素朴な性格を垣間見ることができる。生前に履いていた古い靴や虫眼鏡、ペンなどといった様々な小物も目を引く。
さらに、辛格浩氏が各地を訪れている写真をはじめ、力道山(プロレスラー)、張勲(野球選手)、趙治勳(囲碁棋士)、チョ・ヨンピル(歌手)などスポーツ・芸能界との深いつながりを確認できる品も陳列されている。
ロッテが最初に作ったガム「クールミント」からロッテ百貨店の鳥瞰図、ロッテワールドタワーの建設期までを年代順に眺めてみると、事業に対する氏の情熱がありありと伝わってくる。辛格浩メモリアルホールの各種コンテンツは、現地での閲覧に加えオンラインでも鑑賞することができる。
辛格浩メモリアルホールを観覧する人々
ロッテワールドタワー。555メートルの高さを誇る超高層ビルで、建設時には延べ600万人が動員された |