釜山が「2030年世界博覧会(エキスポ)」の誘致で苦杯をなめた結果、政府内が混乱に陥っている。大統領室の人事が早々に断行され、政府内外から責任を追及する声が高まっている。
尹錫悦大統領はエキスポの誘致失敗について先月29日、国民に向けた謝罪会見を行った。「謝罪」という名目ではなかったものの、尹大統領は会見上「すべては私の不徳の致すところだ。誘致を指揮監督した責任者として、国民の皆様を失望させたことは大変申し訳なく思っている」と頭を下げた。
釜山は先月28日、フランス・パリで開かれた国際博覧会機構(BIE)総会で29票を獲得したものの、119票を獲得したサウジアラビア・リヤドに完敗した。
韓国内ではライバルとされてきたイタリア・ローマを抑え、サウジアラビアと2回目の投票に持ち込み、勝敗が決まるものと見られていた。しかし蓋を開けてみると、初回の投票でサウジアラビアに大量の票が集まり、韓国はあっけなく退場となった。
今回のエキスポ誘致戦では、509日間という長い戦いに官民一体で挑んだ。昨年7月に政府の誘致委員会が発足し、官民の両代表団は182のBIE加盟国首脳や高位関係者に会った。国全体が一丸となって戦った形だ。サムスンや現代自動車、LG、SKなど国内大手企業の代表らが世界各国を回り、一票でも多く獲得するために奔走した。
こうした涙ぐましい努力にもかかわらず、結果的には「119対29」という得票差を生んだ。
政府関係者らは開票当日も「逆転劇を期待してほしい」という前向きな見解を発信してきたが、結果はリヤドが過半数を獲得し圧勝した。釜山市民はもちろん、多くの国民が落胆した。しかし、ここで指摘すべきは「なぜ政府は楽観視していたのか」という点だ。尹大統領も「私たちの見込みが大きく外れた」と認めた。「情報収集力と分析力の不足」との批判は免れない。
韓国は米CIA、イスラエルのモサドと並び、優れた情報機関を有する国として世界で3本の指に入ると言われていた。しかし現在の韓国の有り様を見るかぎり、隔世の感すら覚える。
外交部や行政部といった各部署ごとの責任論も浮上しかねない状況だ。
国内では早くも、広報予算の乱用や政府の戦略不足、情報収集力不足といった問題点を指摘する声が上がっている。「政府の判断ミスではないか」との憶測も飛び交っている。
今回の件については追って調査が行われるはずだ。一方で、実務を担う政府関係者の間では当初から「勝利の見込みは薄い」との意見もあったという。しかし、上層部に対する「ご機嫌取り」で虚偽の報告を行っていた、との説もある。
与党は「グローバルネットワークを構築し国の地位を向上させた」とし、大韓商工会議所は「韓国産業の世界的地平を拡大する契機となった」と評している。「今日の失敗を明日の糧にしよう」と関係者を慰労する声も漏れ聞こえてくる。
しかし失敗に終わる可能性が高く、数十兆ウォンという国家予算が投入される国際行事を勢いだけで進めてきたのではないだろうか。25年には大阪での万博開催が決定している中、同じ北東アジアの釜山が誘致できる可能性は残されていたのだろうか。あらためて検証する必要があるだろう。
| | 尹大統領が11月29日、大統領室で開いたエキスポ誘致失敗についての記者会見(写真提供=大統領室)
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