韓国ウォン・日本円の為替相場が100円=900ウォンを割り込むウォン高円安が続いている。16日には100円=856ウォン台を記録し、2008年1月のウォン高水準に到達した。今年の初めには100円=940~1000ウォン程度だったが、先月900ウォン台前半に急落し、11月初めには800ウォン台まで下落した。近年にはみられないスーパー円安は韓国経済にどのような影響を与えるのか
円が相対的に安くなっている要因は金利差にある。
日本はマイナス金利を続けている一方、米国は金利を引き上げ続けている。他国も米国に追随して高金利政策を敷いている。米国で金融引き締めが長期化する一方、日本では大規模な金融緩和方針に変更はないという見方が続き今後、ある程度の期間は円安が持続するのではとの見方が大勢を占める。
円相場が上がるには米国が利下げするか日本が利上げをするしかないが、両国の金融政策をみると難しいだろう。ドルの独歩高であれば、対ウォンで円安は生じにくいが、韓国ほか他国も米国と歩調を合わせ金利を上げているために、円の独歩安になっているのが現状だ。
以前は円安傾向になると、韓国経済に赤信号がともった。「円安=輸出悪材料」という公式が存在したからだ。円安は日本の輸出競争力の上昇を促し、日本と競合する韓国の輸出企業に悪影響を及ぼすという構図だ。韓日は貿易立国としてライバルであり、日本製品が安くなることで、韓国製品が売れなくなる。
今回の円安でも韓国経済研究院は、対円でドル高が1%進めば韓国の輸出量は0・2%、輸出金額は0・61%減少するという分析を発表している。
他方、円安は韓国経済に大きな影響を及ぼさないという見方もある。
韓国貿易協会が昨年5月に発表した報告書によると、韓日の「輸出競争度」(両国の輸出構造の類似度、競合関係を示す指標)は2015年の0・487から、21年には0・458に低下した。以前ほど両国製品の世界市場での競合はなくなったというデータだ。
代表的な例が半導体企業だ。1980年代に日本は半導体産業をリードしてきた。だが2000年以降、韓国企業が台頭し、サムスン電子やSKハイニックスが世界的に圧倒的なシェアを占めるようになった。DRAMを輸出する際、日本製品と競合しないため、円安の影響を受ける理由がない。
半導体以外でも主要輸出相手国の中国・米国市場で韓日の輸出競合度は緩和される傾向にある。日本と韓国は産業構造の類似性から競合関係が注目されがちだが現在、韓国の輸出競争国は日本から中国へと変化してきている。スマホ、家電、半導体などで韓中の輸出競争が激化している。
一方で自動車・造船のように、韓日の企業が競い合う市場があるのも事実だ。特に自動車は欧米で激しい販売競争を繰り広げており、韓国の現代自動車、日本のトヨタなどはライバル関係にある。だが、これについても円安による影響は限定的とみる関係者が多い。
現代自動車グループは15日、米国市場の10月の販売台数が12万5693台だったことを明らかにした。現在のスーパー円安ウォン高下で過去最多の販売実績を記録した。ベトナムでも1~7月に5万2839台を販売し、トヨタの3万450台を抜いて1位となっている。韓国製品が以前のように日本製品の代替品ではなく、独自の価値を持つようになったことが大きいとみられる。
一方、輸出分野ではなく韓国の個人投資家に対する円安リスクの懸念が高まっている。年初の円安時に円建て資産に投資し、円が反発すれば為替差益が得られるという思惑だったが、長期の円安は想定外で含み損が拡大している。
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