今回は中東の紛争について考えてみたい。
米国のオースティン国防長官は、韓国などが懸念する、「米国はウクライナだけではなく、イスラエルを軸とした中東、そして北朝鮮を中心とした北東アジアへと戦火が拡大すると対応し切れないのではないか」といった声を意識し、ウクライナもイスラエルも同時に支援することは可能とのコメントを出すと共に、韓国・釜山には空母ロナルド・レーガンを派遣した。 こういったなか、ロシアのプーチン大統領は「パレスチナ国家建設」を訴え始めており、英国が「力による現状変更」を行いイスラエルを人為的に建国したことを暗に非難しながら、英米の対抗軸を作る動きを示し始めている。
そして、中国本土の一帯一路構想会議に合わせて訪中し、中国本土の習近平国家主席ともこの件に関して対話していることを示唆している。
これに対する、中国本土の習近平国家主席の本格的な動きは見られないが、王毅政治局員・外相は、「パレスチナ問題は中東紛争の核心であり、問題の核心はパレスチナ人に対する正義が否定されたことである」と述べ、イスラエル建国にまで遡る問題解決の必要性について示唆し始めている。
さらに、パレスチナ武装勢力ハマスによるイスラエル奇襲攻撃で武力衝突が発生し、イスラエルに進出している韓国企業にも緊張が走り、今のところ、直接的な被害は発生していないものの、企業は現地職員を在宅勤務に切り替え状況を注視しているとの報道も韓国では見られる。
サムスン電子はテルアビブ近郊に研究開発(R&D)センター、サムスンリサーチイスラエルなどを運営しており、戦闘発生の10日前には同社のイ・ジェヨン会長がイスラエルを訪問したばかりだったので衝撃は大きかった模様であることも付言しておきたい。
覇権国家、米国は今、本当に頼りになるのであろうか。
日本はウクライナに続いてまた、米国をはじめとする同盟国の意向も受けて、イスラエル支援に資金供与を行うのであろうか。支援するとすれば、その財源はどうするのであろうか。
あるいは、自衛隊の本格的派遣はあるのか。そうなった時には、韓国や中国本土などのアジア近隣諸国の理解は得られるのであろうか。ウクライナに続いて、注視しなくてはならない地域がまた一つ増えた。
願わくは、ウクライナ紛争のように長期化せず、早期に、少なくとも先ずは休戦に向かうことである。
筆者は「韓国は国防のため、防衛装備品の輸入代替化のため、そして外貨獲得産業として国防産業の育成強化に向けて産官学金融一体となって、防衛産業育成に注力している国である」と見ておくべきであると考えている。
ウクライナ侵攻などにより需要が高まる武器の国際市場で、韓国の防衛産業が注目を集め始めているが、さらに上述したように中東情勢も悪化をする中、ソウル近郊では韓国最大級の防衛産業の展示会が開催された。
この機会を捉え、尹錫悦政権は明確に、「世界第4位の武器輸出大国」を目指すという目標を掲げた。そして、もちろん防衛装備品の海外輸出に向けて、積極的に販売拡大を目指し始めている。
東欧のポーランドなどもその対象になっており、今回の中東情勢の変化に伴い、韓国の触手は中東にも伸びていく様相である。
筆者にとっては、倫理観的には肯定出来ない動きではあるが、これが実態であろう。
さらに日本が意識しなくてはならないのは、防衛装備品の質の向上を図っている韓国の軍事的な矛先がどこに向かうのかということだ。ロシア・ウクライナ、ハマス・イスラエルだけではなく、東アジアも緊張状態にある。世界は、そして日本も韓国も今、真の平和を希求するべきである。
(愛知淑徳大学ビジネス学部ビジネス研究科教授 真田幸光) |