解放後、北韓に進駐したソ連軍政司令部の政治司令官、レベージェフ少将の証言によると、「当時、ソ連軍大尉出身の金星柱（３３）を指導者に立てるために民族英雄に操作する過程で、北韓住民が抗日独立軍英雄の金日成将軍の帰還を待っていることを知り、金星柱を金日成将軍に成り済ました」と１９９１年に証言した。
ソ連が北韓建国の産婆の役割を果たしたわけだ。とはいえ、北韓の外交路線は中国とロシアに両足を掛ける二股外交路線をたどりながら生き延びている国柄である。
先月１３日、沿海州ボストーチニ宇宙基地で金正恩とロシアのプーチン大統領が首脳会談を行った。両国首脳は宇宙基地でロケット発射施設などを視察した。プーチン大統領は北韓の人工衛星開発を支援すると述べ、軍事、技術協力など「すべての問題」について協議したという。
カービー米ＮＳＣ戦略調整官は７月２７日、「ロシア国防長官の訪北後、北ロ間の武器取引についての議論が活発に進められている」とし、北ロ間の武器取引は国連安全保障理事会（安保理）決議違反だと強調した。
ちなみに、２００６年に北韓が１回目の核実験を強行すると、国連は１２項目の対北韓制裁決議案を通過させたことがある。専門家らは、北韓が１２２ミリと１５２ミリなどロシアの主力大砲に使われる旧型砲弾を提供する可能性が高いと分析した。
ボリス・ボンダレフ元ロシア外交官は「北ロの協商が武器と弾薬で終わらないかもしれない。北韓が軍兵力を派遣する可能性も排除できない」と発言した。しかし、韓国で北韓専門家として有名なロシア出身のアンドレイ・ランコフ国民大学教授の鋭い指摘が説得力を得ている。
今回の北ロ首脳会談は見せびらかしショーであり、誤魔化しの可能性が極めて高いという指摘だ。それを裏付けるのが北ロ首脳会談直後、ロシアの副首相と外交部次官の衝撃的な発言である。チェルニセンコ・ロシア副首相は「プーチンと金正恩の会談内容を、韓国が欲しいという条件付きで韓国に提供する用意がある」と発言した。
さらに、ロイター通信によると、アンドレイ・ルデンコ・ロシア外交部次官はロシアのメディア、インテルファクス通信とのインタビューで「モスクワ駐在韓国大使館が要請すれば北ロ首脳会談に関する情報を提供できる」と発言した。さらに、ロシアと韓国は北東アジアで相互利益を共有すべきだと付け加えた。従って、プーチンの本当の狙いは韓国のウクライナへの直接的な軍事支援を遮断するため、北韓に密着したと考えられる。
ロシアの副首相が中国や欧米を除いて韓国だけに北ロ会談の秘密内容を提供する意思を表明したのは、韓国を取り込みたいというロシアの本音が覗き見られる。ちなみに、今回の北ロ首脳会談では両国間で具体的な合意が出来ず儀礼的な外交修辞だけやり取りされた。
その後、中国の習近平が韓国訪問計画に言及した。これこそ、北ロ密着を牽制すると同時に韓国を取り込みたいという中国外交路線の転換であることが分かる。現在、韓国政府はウクライナに対し人道支援のみで、武器支援はしないというのが基本的な立場である。
さて昨年、韓国はポーランドにＫ２戦車約１千台、Ｋ９自走砲６７０門、ＦＡ―５０軽攻撃機４８台など１７３億ドルの武器を輸出した。また、多連装ロケット（ＭＬＲＳ）２８８門と誘導弾の輸出も契約した。ちなみに、国際防衛産業市場で最近、韓国製兵器がベストセラーとなっている。
今回の両国会談で、ロシアは韓国がウクライナに武器支援を行う場合は、ロシアも北韓がウクライナへ武器支援することが容認できるというシグナルを見せ掛けしたと考える。即ち、ロシアの本当の狙いはソウルとワシントンへ圧力を加えることだと考えられる。
結局、プーチンが目指したいのはウクライナに対する韓国の武器支援の動きを事前に遮断したいのが本当の狙いだろう。