日本ウイグル協会で初代会長を務め、中国でのウイグル弾圧の実態を発信してきたイリハム・マハムティ氏。その経歴を考えると、この本は日本におけるウイグル運動について書かれたものだと想像できる。だが、そうではない。
評論家・三浦小太郎氏の言葉を借りれば「イリハム氏がその前半生において、生まれ育ったウイグルの伝統文化についての記録であり、かつ、中国においては入手できなかった様々な文献や情報によって学んだウイグルの現代史についての知識をまとめあげたもの」(本書「出版に寄せて」)となっている。
中国の同化政策によって弾圧を受け、固有の文化が失われつつあるウイグル。この本は著者が生まれ育った故郷であるウイグルの風景、慣習、精神、歴史を後世に残すためのものとなっている。
著者は、中国にいるときは自由に文献を読んだり資料にあたったりすることができず、日本に来て初めてウイグルの歴史や、シルクロードの文化、中国共産党の客観的な歴史を学べたとしている。自分の体験と研究を通じウイグルの伝統風景を鮮明に描いた名著。
かざひの文庫刊
定価=1650円(税込)
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