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2023年09月12日 12:31
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デイリーNK高英起の高談闊歩
虚しい核ゲームはいつまで続くのか

 北韓は2023年9月9日、建国75周年を記念した閲兵式を開催し、金正恩総書記は娘のジュエ氏と閲兵式を観覧した。式には劉国中副総理を団長とする中国の共産党・政府代表団、アレクサンドロフ・ロシア軍隊アカデミー協奏団が招待された。今回の閲兵式は正規の朝鮮人民軍(北韓軍)ではなく、準軍事組織の労農赤衛軍が主体となって行われた。金正恩氏の演説もなく、大陸間弾道ミサイル(ICBM)をはじめとする戦略兵器は登場しなかった。
大規模な軍事パレードではなかったものの、気になる動きはある。閲兵式直前の9月6日、金正恩総書記の出席の下、同国海軍で初となる「戦術核攻撃潜水艦」の進水式が行われた。潜水艦第841号は海軍に引き渡され、「金君玉英雄」号と命名された。金君玉とは、韓国戦争時に米海軍重巡洋艦「USSボルチモア」を撃沈したとして、共和国英雄称号を授与された軍人だ。しかし、実際にはUSSボルチモアは戦争に参加しておらず、北韓のプロパガンダの一環とされる。
公開された写真から、同艦には潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射できる発射管が計10基あると推定される。発射管は大型のもの4基、小型のもの6基で構成されていると見られる。また核弾頭搭載の水中ドローン「ヘイル(津波)」や、魚雷発射管から打ち出せる巡航ミサイルを装備している可能性もある。潜水艦開発は、金正恩氏が仕掛ける核ゲームの一環だが、金君玉英雄号が今すぐ韓日米安保の大きな軍事的脅威と決めつけるのは早計だ。金正恩氏が進水式で行った演説から、北韓は隠密性の高い原子力潜水艦の開発には至っていないことがうかがえる。ただし、金正恩氏は動力システムの開発などに言及していることから、今後も開発に注力することは間違いない。
一方、金正恩氏が執着する核ゲームに対して、北韓海軍関係者からは様々な「ホンネ」が漏れ伝わってくる。デイリーNKの内部情報筋によると、「ある指揮官は『新型兵器と船があっても燃料がないのに、どうやって戦争準備を整えるのか。船や装備の性能を上げても燃料がなければ無用の長物、くず鉄に過ぎない』と言っていた」という。海軍は燃料不足が深刻で、戦闘どころか訓練すら難しいというのが内部の全般的な評価であり、ほとんどの指揮官は戦力増強より、燃料確保が喫緊の課題だと捉えているようだ。
また、「わが海軍にとって最大の問題は、南方を南朝鮮(韓国)側にふさがれて東西艦隊の戦力が分散しており、連合作戦の遂行が難しい点にある」という極めて冷静で客観的な評価も見受けられる。金正恩氏は8月28日、海軍節に際し2012年の執権以来、初めて海軍司令部を訪問した際の祝賀演説で「戦場で実際に必要なのは武装装備の数的・技術的優勢ではなく、それを扱う軍人の圧倒的な思想的・精神的威力であるということが英雄的朝鮮人民軍の革命哲学であり、固有の戦争教理である」と述べているが、北韓軍の現場の指揮官の方がよほど自国を取り巻く安保情勢を冷静に把握しているようだ。

2023-09-13 4面
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