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2023年09月05日 10:04
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ソウルを東京に擬える 第22回 水道水
都市への飲み水の供給と水辺の魅力

 生命にとって欠かせないものといえば水である。両都市へと運ばれる水の動きをたどってみたい。ソウルには市の南北を分けるように漢江が流れ、西にある黄海へと注ぐ。東京23区の北端には荒川、南端には多摩川が流れ、ともに東京湾へ注ぐ。
ソウル市の水道水の名称は「阿利水(アリス)」である。古代には漢江がそう呼ばれていたことからだ。漢江の本流である南漢江は、江原道の太白を水源とし、全長494キロメートルに及ぶ。楊平郡の両水里にて北漢江と落ち合うが、ここは山あいの風景と水辺が美しく、ロケ地にもよく選ばれる。合流後はソウルの蚕室付近までの数カ所で取水され、6カ所の浄水センターへ送られる。ソウル市内に入ると漢江にかかる橋梁には地下鉄や車が行き来し、世界一長い噴水橋といわれる盤浦大橋、その下には潜水橋が通る。河川敷には漢江公園が整備されており、ピクニックを楽しんだり、水辺のカフェでコーヒーを味わったりと市民の憩いの場となっている。
東京都内に供給される水道水は、約8割が利根川・荒川水系、残りの約2割が多摩川水系だ。過去には「東京水」としてボトル販売もされた。利根川は群馬の山中に水源があり、全長322キロメートルを経て太平洋へと至るが、東京へは利根大堰から武蔵水路を通じて荒川へ注ぐ。その後は秋ヶ瀬にて取水され、水路を通じて各浄水場へ送られる。荒川の河川敷にはグラウンドなどのスポーツ施設やバーベキュー場などが多く、漢江とはまた異なる雰囲気だ。
多摩川の水源は山梨の笠取山にあり、奥多摩の小河内ダムに水が集められる。小作や羽村で取水され、埼玉との都県境にある村山・山口貯水池を経て、各浄水場へ送られる。23区内まで多摩川を下るとセレブな街といわれる二子玉川がある。中下流域には古墳が多く、古の香りが漂うが、そこから住宅や町工場が混在する街並みを抜け、東京湾へと注ぐ。その全長は138キロメートルである。
少し時代を遡ってみたい。かつて朝鮮の民衆は井戸や川の水を飲用していた。しかし良質な水が求められ、19世紀には”ムルジャンス”という水売りが存在し、各家庭へ配達された。近代式水道の始まりは1908年の纛島浄水場の完成にあり、ここから都城へ水が供給された。上水道の普及はすぐには進まず、井戸も飲用に使われ、水売りも朝鮮戦争前まで存在していたようだ。ちなみに纛島はトゥクソムのことだ。現在も浄水センターがあり、隣接する水道博物館には当時のレンガ造りの建物や遺構が残されている。ここはソウルの森のすぐ側の聖水洞で、有名人が住む高層アパートもある近年人気の街だ。
一方、東京湾の埋め立てにより井戸水に塩分が混じる江戸では、水路を掘削して飲み水を引き入れた。江戸中期以降は神田上水・玉川上水から石樋や木樋に水を通し、各々が上水井戸で汲み上げた。そのほかに水売りから買うこともあった。明治期にはコレラの流行などから水道の整備が始まり、1898年に淀橋浄水場が設置され、東京市内へ水が送られた。大正期には境、戦後には東村山に浄水場が設置され、淀橋浄水場は1965年に役目を終えた。その跡地は今の新宿副都心で、高層ビルが立ち並ぶ。同年には武蔵水路が開かれ、利根川の水も利用されるようになった。
両都市の水辺の見どころにも触れたい。漢江の中洲の仙遊島は廃された浄水場を公園化した緑豊かな環境だ。また漢江には遊覧船も行き来する。荒川から分岐する隅田川といえば屋形船だろう。周辺から見える東京スカイツリーや橋梁のライトアップも美しい。また映画の世界では水面から怪獣が現れる。漢江からはグエムル、東京湾からはゴジラである。水辺のファンタスティックな世界まで想像してみても楽しめる。

 

漢江

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隅田川

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吉村剛史(よしむら・たけし)
1986年生まれ。ライター、メディア制作業。20代のときにソウル滞在経験があり、韓国100都市を踏破。2021年に『ソウル25区=東京23区』(パブリブ)を出版。

2023-09-06 6面
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