コロナ収束後、初めてとなる今年の夏休みは「４年ぶりの開催」と銘打つ多くの催しが執り行われた。今回は、三つの韓日交流イベントを紹介し、対面と非対面が併存した今夏の国際的な学生交流・教育活動を振り返る。ＺＯＯＭなどのオンライン活用がコロナ後も有意義である点を考えたい。

　東京韓国学校（鄭會澤校長）では先月１８～２２日、「国人グローバルメンタリングプログラム」を開催した。具体的なイベント内容は「ハングル教育」「科学実験」「英語キャンプ」「進路体験」など、多彩な構成となっている。
プログラムを進行する「国人」は韓国の教育部（日本の文部科学省）認定の学生教育寄付団体で、日本の同胞学生たちに教育（寄付）活動を推進している。大阪建国学校・金剛学院・京都国際学校など、これまで１４年間続いているという。東京韓国学校では今年初めて実施された。
今回のイベントには、１３３人の小学校４～６年生・高校１～２年生が参加し、夏休み中にもかかわらず、学校内は平時より活気にあふれた。
鄭會澤校長は、「今回の夏休みプログラムは参加競争率が高かった。今回の行事を通じて、東京韓国学校に再び交流と体験の風が吹くことを学生・教員・父母がみな期待している」と話した。
また先月２８日、「多文化教育の深化・充実」を目標の一つに掲げる神奈川県立新栄高等学校（小島嘉男校長）で、夏期講習の「初級韓国語」を選択する生徒が韓国・世宗特別自治市の宗村（ジョンチョン）高等学校の生徒と、日本語・韓国語・英語を交えつつＺＯＯＭを利用して交流した。当日は少人数のグループに分かれ、両国の文化・習慣・学校生活・趣味・関心事などについて意見交換した。
参加した高校１年生の山下陽羅莉さんは「正直、うまく話せるか不安でしたが、韓国の高校生が日本語で話してくれたので安心しました。対話することで韓国の文化などについての理解が深まりました」と振り返った。
ＺＯＯＭによる交流を含めた「初級韓国語」講座を企画した宇津野志保教諭は「生徒たちが広い視野で世界を見て、将来はグローバルに活躍できるように、このような異文化交流をたくさん行っていきたい」と語った。
また先月２９日と今月１９日、東京外国語大学で「親子でいっしょに韓国語初級」と題した夏季オープンアカデミーがオンラインで開催された（講師は五十嵐孔一教授）。
前日は小学校５～６年生・後日は３～４年生が対象で、親子での受講が義務づけられている。計２０組が参加した。両日でプログラムには若干の違いがあった。
共通したのは、韓国語の基本的な挨拶「アンニョンハシムニッカ？」「アンニョンハセヨ？」「アンニョン？」の３語が相手との距離感で使い方が変わるというところから授業を始めたところ。五十嵐教授はＺＯＯＭを巧みに利用し、画面と距離を近づけたり遠ざけたりして、使い分けを教えながら生徒たちとの距離を縮めるのにも成功しているようだった。
３～４年生対象の授業では、大学から近いＪＲ中央線の駅名のハングル表記を画面に映しながら、歌に乗せて小学生の関心を引きつつハングルの表記を教えていた。
参加した子どもたちの名前をハングル表記し、似た発音や文字の形を学習してもらい、日本語にはない韓国語の発音なども説明した。また動物の鳴き声をクイズ形式で出題し、該当した動物の名前を韓国語で答えるというゲーム性に富んだ授業で、受講した親子が楽しみながら学んだ。
最後に会話文の練習という段階までくると、小学生の発音は１時間という短い授業時間にもかかわらず、メキメキと上達していた。
五十嵐教授によると、小学生の読み書きの意欲、間違っていても発音してみようという意識は大学生よりも柔軟で、大きな声で発音してくれるのも語学習得に一役買っているとのこと。「となりにお母さん・お父さんがいるというのもあり、このように語学教育を行えるのはＺＯＯＭのいいところ」と話した。
ＺＯＯＭに限らず、オンラインを利用した翻訳機能や、今後の発展が期待されているＡＩの活用など、音声機能にとどまらない映像まで駆使しての語学教育に、五十嵐教授は思いを馳せているという。
有効に活用すれば便利な学習・交流のツールであるオンライン教育の在り方に、コロナ後も継続して注目する必要があるだろう。

全体集合写真

神奈川・新栄高校で、韓国高校生とのＺＯＯＭ交流