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2023年08月15日 10:22
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「則天去私」を信条に次世代支援 韓国教育財団 徐東湖理事長に聞く
創立60周年 公益財団「韓国教育財団」

 今年で創立60周年を迎えた公益財団法人「韓国教育財団」。1963年、「在日韓国人教育後援会」との名称で発足した同財団は、次世代の在日同胞に向けた教育支援機関として大きな役割を担ってきた。これまでに約1万人もの学生が奨学金を受給したという実績が、「在日韓国人学生に対する助成活動を行い、有為な国際人を育成する」という財団設立の趣旨を忠実に実行してきたことを物語っている。教育財団の徐東湖理事長は「私心を捨て、公益を追求する『則天去私』を信条に、今後も次世代に対する支援を続けていきたい」と語った。                             (李民晧)

 

 「韓国教育財団」の理事長に就任した経緯は。

「教育財団の一員になったのは1991年4月です。許弼理事長の推薦で理事になりました。99年には当時の首席教育官から『ぜひ引き受けてもらいたい』と強く推されて教育財団の舵を取ることになりました」

当時の日本はバブル崩壊の真っただ中だったかと思います。

「多くの金融機関が倒産し、財団のメインバンクも倒産してしまいました。それにより財団の基盤が大きく揺らぎ、存続そのものが危ぶまれるほど大変な時期でした」

どれほど危機的な状況だったのですか。

「社会全体がパニックに陥っていましたね。バブル崩壊で資産価値が急落しました。短期間で土地と建物の価値が5分の1、場合によっては20分の1程度まで暴落していましたから。
財団としても非常に困難な状況でした。理事長就任後に確認してみたところ、財団が所有する基本資産の半分を失ったことがわかったのです。当時の主な運営資金は、出資した金融機関からの配当所得だったのですが、それが一昼夜にしてゼロになってしまったのです。金利も0・5%、0・1%とみるみる下がっていきました。奨学金を支給することすらままならなかったわけです」

 打開策は見つかったのでしょうか。

「日々財団の存続だけを考えていましたね。そのためには財政基盤を確立することが大前提でしたので、強い使命感を持って財政問題に取り組んでいました。(市場の動きを見ると)マンション価格は暴落しましたが、賃貸の相場はさほど変動がなかったので、暴落したマンションを複数戸購入し、賃貸収入を奨学金に充てる、という考えに至りました。今振り返ってみたらまるで『コロンブスの卵』ですね。マンション購入プロジェクトを立ち上げ、果敢にも実行に移すことにしたのです」

 障壁はありましたか。

「財務基盤が財団の生命線だったので、どうにか成し遂げたいと思っていました。しかし、マンションの購入や契約、文部省(現文部科学省)の認可取得など、複数の手続きが待ち受けていました。特にカギとなったのは文部省の認可を取得することでした。駐日大使館の李光衡首席教育官から『もし文部省の認可が下りなければどうするのか』と聞かれたので、私は『財団が購入できない場合は私が個人で買収するので、安心して交渉に臨んでほしい』とお伝えしました。無事解決しましたが、この件については李教育官の功績が大きかったと思っています」

結果はどうでしたか。

「(日本各地の)マンション30戸を購入しました。1戸あたり約20万円の家賃収入が発生するため、それだけで年収7000万円は確保できるという計算になります。空室を考慮しても、最低でも年間6000万円は確保できるので、財団を健全に運営する基盤が整ったことになります。おかげで先人達の崇高な意志を受け継ぐことができ、奨学金を支給できる体制が整いました。マンションプロジェクトは多くの方々の力添えがあってこその成功でした。プロジェクトに携わってくださった皆様には心から感謝しております」

 教育財団の歴史を振り返ると、初代の許弼理事長時代と徐東湖理事長時代に二分されるように見受けられます。何か変化はありましたか。

「財団の母体である『在日韓国人教育後援会』は1963年に設立されました。許弼(東京商銀)、辛格浩(ロッテ)、徐甲虎(坂本紡績)の各氏ら在日有志が協力して立ち上げたのが始まりです。それが整備され財団となったのは閔寬植氏が文教長官を担っていた時でした。
基本的な運営方針は、私が財団を引き継いでからも変わっていません。初代理事長をはじめ、設立者たちの崇高な志を2世の私たちがつないでいこう、という思いだけです。遺志を受け継ぎ、固めた基盤を後世へとつないでいきたい。そうした思いが財団を立て直す原動力になったのだと思います」

 財団で展開している「碧(ビョクポン)奨学基金」はどのような思いで設立されたのでしょうか。

「学生時代の夢は大企業の経営者になることでした。ロッテやソフトバンクのような会社を作りたかったのですが、惜しくも夢は届きませんでした。しかし、私と『同じ』夢を抱いている後輩たちに希望を与えたかったのです。ビジネススクール(MBA課程)で学ぶ若者たちを支えたいという思いから基金を設立しました」

 碧奨学基金が目指すところは。

「あくまでも後輩の夢を応援することが目的なので、彼らに何かを期待しているわけではありません。ただ、ビジネススクールを卒業した後輩たちが起業を成し遂げてくれたらうれしいですね。それは在日韓国人の存在価値や地位の向上を意味しますし、やがてそれが韓国の発展と民族の繁栄につながるのではないかと思っています」

教育哲学について。

「一言でいえば『則天去私』ですね。私心を遠ざけ、天意に従って生きようと決めています。なかなか思い通りにはいきませんが、則天去私の気持ちを忘れず、それを信条として財団の仕事に尽くしていきたいと思います」

 教育財団の方向性について。

「公的機関のトップは、私心を捨てることが最も重要だと考えています。財団の方向性については、次世代の奨学支援活動と韓国語能力試験の主管事業を着実に行っていきたいと思います。それが私たちの責務だと肝に銘じています。これから70周年、100周年に向けて歩んでいくことも一つの使命として頑張ってまいります」

【取材後記】
徐東湖理事長は、在任中に出会った駐日大使館首席教育官(徐在会、李光衡、裵優昌、金浦燁、崔成有、姜鐘富、梁鎬錫)各氏の名前を次々と挙げていった。教育財団の常任理事として教育官らと関わってきた思い出を振り返り、一人一人に感謝の意を表した。「次世代に対し惜しみない支援を続ける理由」を尋ねると「若者の能力は無限だ。100を望めばそのうちの一つは達成できる。志ある後輩たちに希望を与えられるだけでも満足だ」と述べ、顔をほころばせた。

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「マンションプロジェクト」で文部省の認可取得のカギとは

李光衡 元駐日大使主席教育官

 もう23年前のことだ。その当時、賃料収入を韓国教育財団の運営費用と奨学金に充てるためには、管轄である日本の文部省から認可を受ける必要があった。文部省に問い合わせたところ「前例がない」といわれ差し戻されてしまった。
そんな折、文部省を訪問する機会があり、帰りに庁舎の廊下で旧友の逸見博昌局長と出会った。流れで逸見局長とお茶を飲みつつ、教育財団の状況を丁寧に説明して協力を願い出た。
「韓国教育財団は一般的な形の法人とは異なり、韓国教育部の首席教育官が常務理事を務めています。事務所も駐日大使館の中にあり、職員もそこに常駐しています。ですから、教育財団は韓国政府の責任下で運営されている公的機関なのです」
それを聞いた逸見局長はうなずきながらこう答えた。
「わかりました。まず財団側でマンションを購入してから文部省に認可を申請してください。力の及ぶ限り協力します」
逸見局長は日本に赴任する前からの知り合いだった。韓日間の教育交流イベントがきっかけで、たびたび家族会を開き親睦を深めてきた。
その後、マンションの購入手続きを終えて文部省に申請したところ、ついに認可が下りた。その結果が今日の財団が管理するマンションだ。現在は日本全国で合計30戸のマンションを所有している。具体的には東京に11戸、大阪に6戸、京都に3戸、神楽川、千葉、埼玉、和歌山、神戸、新潟、長野、広島、福岡、奈良にそれぞれ1棟を所有している。
マンションプロジェクトを展開した時、多くの人々が汗水を垂らして奔走し協力してくれた。しかし、決定打となったのは徐東湖教育財団理事長の英断で、氏のゴーサインなくしてプロジェクトの成功はなかったといえるだろう。

 

 

2023-08-15 6面
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