日本で新型コロナ感染症の位置づけが5類に移行し、実質的な収束に向かいつつある。外出機会が増えたこともあり、化粧品販売市場が回復している。とくに韓国製化粧品は、昨年の化粧品輸入実績でフランス製を抜き初の首位となり、急激に日本市場で存在感を増している。韓流スターやK―POPアイドルの広告モデル起用、SNSによる巧みなマーケティング戦略によって、若年層から支持を得て、美容大国発のブランドを日本で確立しつつある。
斬新な商品開発力
日本で韓国製化粧品が好調な背景として、韓国製化粧品の輸入販売を手掛けるシンビジャパンの金恵英取締役は「斬新なアイデアで、画期的な商品を開発している」ことを理由に挙げている。例えばパフで簡単に塗れて、手を汚さないですむ「クッションファンデーション」は、韓国で開発され、世界各国で愛用されるアイテムとなっている。保湿や日焼け止めなど、多機能に使用できる「BBクリーム」は、韓国で使いやすく改良された。
手ごろな値段でありながら効果・効能が高いと評価を高め、さらに独自の商品力も強化されて高価格帯の商品も登場し、ブランド価値を確立した。
韓日両国でクロス・マーケティングが調査したところ、日本人女性が1日に美容にかける平均時間が約34分に対して、韓国女性は約68分で倍となっている。年収に対する美容関連出費比率は、日本が1・88%だが、韓国は4・49%で倍以上の開きがある。美容に関心が高い「美容大国」と言われる韓国女性のハイレベルのニーズに応える商品を開発してきたことに、韓国メーカーの強さの秘密が垣間見える。
フランス製から奪取
矢野経済研究所によると、2022年度の国内化粧品市場は、外出機会が増えたことから回復基調にあると分析している。21年度はコロナ禍で緊急事態宣言発出などの行動制限がかかる中でも、店舗での対面営業が継続されたことに加え、前年よりも外出機会が増えたことから、前年比2・5%増の2兆2900億円となった。22年度は同2・8%増の2兆3550億円と予測している。
とくに外国製化粧品に関しては、韓国製の伸びが著しい。日本化粧品輸入協会によると、22年度の国別化粧品輸入実績では、韓国製が775億3000万円(前年比25%増)となり、フランス製の764億4000万円(同20・8%増)を抜いて30年以上にわたって君臨してきた首位の座を奪取した。23年1~3月期も韓国製は217億6000万円(同24・4%増)で、フランス製189億2000万円(同10・7%増)に対し市場で優位に立っている。
巧みなブランド戦略
商品そのものの魅力のほかに、若い女性の心に訴えかけるマーケティング戦略も功を奏している。
これまでに韓国製化粧品の広告モデルには、アイドルグループ・少女時代のユナ、韓国で国民の妹と呼ばれ、『太陽を抱く月』などに出演した俳優のキム・ユジョン、『私の頭の中の消しゴム』などで知られる俳優のソン・イェジン、全米進出も果たしたアイドルグループのBTSなどを起用し、注目を集めてきた。とくにインフルエンサーを活用してのSNSでのアピールについて金取締役は、「韓国メーカーはSNS活用に長けていて、効果的に多額の経費をかけて注力している。日本メーカーは保守的で、SNSについては韓国に後れをとっている」と述べている。
商品の高品質化と広報戦略の浸透によって、シンビジャパンの顧客の過半数を占める20~30代の若い女性の間では、韓国製化粧品は、ブランドとしての地位を確立している。
今後の商品展開について金取締役は「韓方をベースにした化粧品を、独自ブランドとして商品化したい。肌トラブルで既存の商品が合わない人に使ってもらいたい。韓方は人によって反応が違うので、商品開発の難しさがあるが、近いうちに発売する」と明かした。
続々と日本市場参入
韓国でも日本の美容市場への参入に一段と力を入れ始めている。ソウル市傘下の中小企業支援機関、ソウル経済振興院(SBA)とイーベイ・ジャパンは先月、ソウル市内の中小美容関連企業と日本でのオンライン販売を支援する業務提携を締結した。ソウル市の呉世勲市長は「米国、中国に続く世界3位の化粧品市場の日本でKビューティー(韓国発の美容・化粧品)の影響力が拡大していることに誇りを感じる」と語った。
韓国大手メーカーのアモーレパシフィックは先月末から今月にかけて東京・原宿で2週間、10万個のサンプルを配布して商品をアピールした。同社は「日本の流通会社との連携を強化し、日本市場攻略に拍車をかける」と意気込んでいる。
シンビジャパンが銀座三越で運営する直営店
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