長らく執筆から遠ざかっている著名な作家キム・ジュニ(イ・ヘヨン)が、ソウルから少し離れた閑静な町にやってきた。目的は創作仲間だった後輩(ソ・ヨンファ)を訪ねること。小さな書店を営む彼女は、突然の先輩の来訪に驚きながらも店内に招き入れる。
書店を後にしたジュニは、近くの公園に足を向けた。そこに散歩中の女優ギルス(キム・ミニ)が通りかかる。ギルスは映画界で成功を収めたが、このところ出演作が途絶えていた。
初対面だったが打ち解けて互いに親しみを感じ、ジュニは思いがけないことを提案する。ギルスと陶芸家である彼女の夫に出演してもらい、初めての映画作りに挑戦したいという。
「どうして映画を作りたいのですか」。尋ねられたジュニは、しばらくスランプに陥っていた自分の内なる葛藤を打ち明ける。ギルスは、「とにかく休んでください。私も同じ考えです」と慰めの言葉をかけた。
ギルスから飲み会に誘われ、ジュニが案内されたのは、この日最初に訪れた書店だった。しかもゲストは、かつて一緒に飲み歩いた詩人(キ・ジュボン)だった。マッコリをたらふく飲んで愉快なひとときを過ごす。
ジュニが初めて取り組んだ映画が完成した。主演のギルスが上映会場のミニシアターに到着し、誰もいない客席で47分の作品を鑑賞する。
劇的なストーリー展開も、派手な視覚効果もない。だが人生の不思議なめぐり合わせや人間の深遠な本質を覗かせる映像世界は、唯一無二の魅惑に満ちあふれている。
今作はホン・サンス監督の長編27作目で、2022年の第72回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品され、銀熊賞(審査員大賞)を受賞。3年連続4度目の快挙となった。
公開=6月30日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか順次全国公開。
公式HP=http://mimosafilms.com/hongsangsoo/
偶然出会った2人の女性 ©2022 JEONWONSA FILM CO. ALL RIGHTS RESERVED
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